“Webとクルマのハッカソン 2017”

コネクテッド・カー時代におけるWebと車の連携アプリ/サービスを創発しよう!

今世界中でインターネットとつながるクルマが増えつつあります。W3CでもVehicle APIの標準化が進められ、クルマにもWeb技術を利用する取組みに期待が高まっています。

そこで、本ハッカソンでは、自動車の走行状態に関するデータ(車速、アクセル、ブレーキ、エンジン回転数、オドメータ、ハンドル角度、燃費、車両位置、ドア状態、加速度、など)を利用したWebアプリの開発を競っていただきます。

また、今回は、協賛社の協力を得て、新たに運転中のドライバーの生体情報(脈拍数、頭部の動き、視線の動き、まばたき等)を取得した走行データも拡張APIとして準備しました。

クルマの情報とWeb技術の融合から生まれる新しいサービスやアプリを考えることを通じて、クルマを取り巻く素晴らしい未来を共に創りましょう!

Webとクルマのハッカソン実施結果

2017年1月28~29日、36名のエンジニア・デザイナーが集まり、 「Webとクルマのハッカソン2017」が開催されました。今回は、総務省、経済産業省、W3C、情報通信技術委員会(TTC)、日本自動車研究所(JARI)の後援、日産自動車、本田技術研究所、トヨタIT開発センターなど、自動車関連、情報関連、計28の企業・団体からの協賛を受けて行われました。

初日は、今回のハッカソンで提供されるW3C Vehicle APIの説明に引き続き、開発環境のチュートリアルが行われた後、8チームに分かれて開発作業を開始しました。Vehicle APIや協賛社のAPIについての具体的な質問や、走行シーンについての質問が、SlackやGitHubを通じてリアルタイムに全参加者と共有されました。2日目午後のチーム発表では、工夫を凝らしたWebアプリのデモが行われ、審査委員を大いに悩ませた結果、次のアプリが表彰されました。

開催当日の様子①(チュートリアル)

イメージ図
※実験車両により紹介した技術は、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)・自動走行システムに係る研究開発の一部である総務省の『ICTを活用した次世代ITS の確立』による委託を受けて実施した研究開発による成果です。

開催当日の様子②(開発作業、成果発表等の様子)

チーム名 発表アプリのタイトル 表彰
A やさしい運転してますか 最優秀賞
B D-Live
C 今日から君がドライバー 特別賞
D ねむいんです
E なかよしトラベル
F safe motion Go
G ひやりん 優秀賞
H ゲームで運転を楽しくしよう

最優秀賞

Aチーム

優しい運転してますか

【サービス概要】

車椅子ごと乗車する福祉車両の場合、運転によっては車内での転倒などの危険があるため、優しい運転かどうかを監視するためのサービス。

運転の振動によって、遠隔地の運行管理センターに置いたお茶のグラスが振動。どの位こぼしたかによって、優しい運転かどうかを評価する仕組み。

振動の値については、Vehicle APIから受け取った加速度X、Y、Zの値から計算しレベル分けをしており、下図の写真の右上にあるハートの値が振動レベルを表している。実際にはクルマの絵はレベルに応じて振動している。


【審査員コメント】

  • 収集情報をアクチュエーターを介して表現した点、リアル➡サイバー➡リアルに戻す点が評価された。
  • 「運転を指標化するメータ類は幾つもあるが、これは分かり易い。」と好評であった。

優秀賞

Gチーム

ひやりん

【サービス概要】

認知力が低下した高齢者の事故防止を目指したサービス。

理想ヒヤリ度との差分によって、画面に表示された赤ちゃんが怖がったり泣いたりする。

運転データ(速度・加速度・ハンドル角等)と心拍数の関係を機械学習によって分析し、理想ヒヤリ度(正常な注意力での心拍数)を算出している。


【審査員コメント】

  • 「今、注意深さが不足していますよ。」と知らせる表現に「赤ちゃん」を活用したことが素晴らしい。
  • 理想的な注意深さに達していないときにアラートするという発想が驚き。
  • カーブ手前なのにブレーキを踏むのが遅すぎるというように、適切なタイミングで適切なアクションをとらないときのヒヤリにも対応できるといいな。
  • どうして赤ちゃんが泣いたのかが分かるようにしないと困惑する。

特別賞

Cチーム

今日から君がドライバー

【サービス概要】

子供と一緒に運転を楽しむというコンセプト。

スマホをハンドル代わりにして助手席の子供に持たせ、実際の運転と同じように上手くハンドルを切ると褒められ、得点をゲットするというもの。

VehicleAPIから急ブレーキとか大きく振れた時(車側のジャイロが一定以上に振れたとき)等を取得し、ロボホンが「うわー、こわーい」と喋る。デモでは山古志村のコースを用いて、加速度X軸の閾値以上(急ハンドル)、加速度Y軸の閾値以上(急ブレーキ)の際にロボホンが喋るデモを行った。

【審査員コメント】

  • 子供にゲーム感覚でクルマへの興味を持たせるとともに、交通ルールを学ばせる点で評価された。
  • ドライバー自身ではなく、同乗者に注目した点が評価された。

開催当日の様子③(最後に記念撮影)

開催概要

日時
2017年1月28日(土)~ 1月29日(日)
場所
住友不動産飯田橋駅前ビル
テーマ
“Webとクルマのハッカソン”
  ~コネクテッド・カー時代におけるWebと車の連携アプリ/サービスを創発しよう! ~
参加者人数
36名
審査委員長
中村 修(慶應義塾大学 環境情報学部 教授・ W3C/Keio サイトマネージャ)
審査委員
村松 寿郎(日産自動車株式会社 電子技術・システム技術開発本部
      コネクティドカー&サービス開発部 テレマティクス開発グループ 主管)
小松 康幸(株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター 主任研究員)
野辺 継男(インテル株式会社 戦略企画室 ダイレクタ (兼) 名古屋大学 客員准教授)
羽田野 太巳(株式会社ニューフォリア 取締役 最高技術責任者)
主催
Webとクルマのハッカソン2017実行委員会
協賛
日産自動車株式会社、株式会社本田技術研究所、株式会社トヨタIT開発センター、株式会社ACCESS、株式会社ニューフォリア、パイオニア株式会社、アルパイン株式会社、富士通テン株式会社、アイシン精機株式会社、キャンバスマップル株式会社、Automotive Grade Linux、ルネサスエレクトロニクス、株式会社自動車新聞社、株式会社イード、FOX HOUND株式会社、SMK株式会社、インテル株式会社
API協賛
エスディーテック株式会社、株式会社昭文社、ユメイク合同会社、インクリメントP株式会社、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ、株式会社ジェイアイエヌ
後援
総務省、経済産業省、W3C、一般社団法人情報通信技術委員会、一般財団法人日本自動車研究所
事務局
株式会社KDDI総合研究所

参加者の声

  • 満足度の理由(自由記述)
    • 大変参加者のレベルが高く楽しかったです
    • VehicleAPIを実際に試せるプラットフォームが整っていたこと
    • 今まで関わりのなかった職種の方と意見を交換する経験がとても貴重でした
    • 事前準備がしっかりしており、参照できる情報が多彩である。進行が各チームに委ねられすぎていたきらいがある
    • 各チームの発表を聞いてとても良い意味でインスパイア受けました。
    • お菓子や飲み物があり、開発する環境が良かったです。ただ、少し寒かったです
    • 終始、温かい雰囲気だったから
    • 会場の環境がとても素晴らしく、作業に集中できました。特にコーヒーが美味しかったです
    • もう少し作り込みたかった。全体的には満足
    • 自分の力量不足で、APIを活用して仕組みを作るところや、サーバーを構築する、コードを組むなど、手を動かしてつくるところに参加できなかった反省から。チームメンバーに恵まれ見識も広がったので満足しています
    • スムーズな運営と当イベントに対する審査員からの熱量
    • おおむねやりたいことができたため
    • 考えたものを作り切れた満足感はあります。自分としてはもう少し独創性のあるアイデアを出したかった部分があります
    • スクリプトでどれだけアイデアが実現するか可能性と問題点が見えてきた
    • 生体情報のセンシングなど興味深いAPI参加者のレベルが高い
    • 利用するAPI環境やデータの準備が十分整っており、サポートも手厚くしていただきよかったです。協賛社さんからのAPI提供もいろいろありアイディアが広がりました
  • 走行パターンとして提供して欲しかったもの(自由記述)
    • 搭乗者の生体情報
    • 同じコースの別ドライバーデータ
    • 同じコースの別の車種のデータ
    • J!NS MEME装着の走行シーン数をもっと増やして欲しい
    • 心拍数が意図的に上がるようなデータ、眠気が上がるようなデータ
    • ロングドライブとその眠気試行錯誤など
    • ペルソナ的に設定があるとサービスに反映しやすいと思います。彼女とドライブ中、友達と旅行、上司と出張など。
    • 車両、生体情報を取得している車が複数存在する場面
    • サーキットなどで飛ばした走行パターン
    • もう少し同一ファイルにイベントが多く含まれる動画
    • ヒヤリハット、異常値を含む走行シーン
  • 提供して欲しかった協賛API(自由記述)・搭乗者の生体情報
    • 自前のIoT機器と連携させるためのAPI
    • 音声認識API、音声操作API
    • 解析、機械学習API
    • ユーザーの属性データ
    • 前後の車間など外部環境のAPI
    • 画像認識のAPI(黄色信号の認識 等)
    • 地理空間情報系API
    • 公共交通オープンデータAPI
    • 周囲の道幅、前方以外の映像
    • 天気APIの、過去(事前走行時)の天気情報の取得、リアルタイムの情報
    • 提供されていたが、オドメータの精度をkmではなく、m精度で頂きたい
  • W3C Vehicle API仕様についての要望(自由記述)
    • 車内ネットワーク内の機器連携をやり易くする為Openhabの様なものを用意して欲しい
    • 車をWeb側から能動的に操作できる仕組みができると可能性が大きく広がると思います
    • 非常に手軽に使えたので、この方針で標準化を進めていただけたらと思います
    • ブレーキのスープ踏み込み量、ウィンカー、電気自動車関係のパラメータなどデータの種類を増やして欲しい
    • VIAS車載器を自作しています。Vehicle DataのJSONにOBD2PIDを一緒に入れてほしい
  • 自動車におけるブラウザ技術への期待など(自由記述)
    • なるべくWeb標準技術を使ってオープンにしてほしいです!
    • サードパーティや日曜開発者の参加しやすさ
    • ブラウザベースではなく、音声などのインタラクティブなインターフェースが中心となって発展してほしいです
    • セキュアかつオープンなプラットフォーム
    • スムーズな操作感、レイテンシの向上
  • その他の意見・感想など(自由記述)
    • ローカルサーバではなく、開発アプリを動作させるクラウド環境があると良かった
    • 実車で試せる環境があると良かった。後日、実車デモの機会があれば盛り上がるのでは
    • 映像解析にもトライしたかったが、時間が足りず断念した
    • 場所や時間を指定して、イベント前後のシーンを呼び出しできるようにしてほしい
    • データが変化するシーンを切り貼りしたり、異常値を作ったりする仕組みが欲しい
    • 他の車種(他のメーカー、電気自動車など)でも走行してほしい
    • 他グループ間もハッカソン中に交流できるようなシカケが欲しい
    • デザイナーの参加者がいるとよかった
    • 車のデータがオープンになることへの期待ももちろんありますが、データはあくまでデータで、その車に乗る人間がどういう状態があるかなど、車を使うのは人間であり、人間を中心に考えるのが重要なのではないか、と今回参加して感じました

開発環境

・開発環境の構成
◇W3C Vehicle API(*) Polyfill
W3Cでは自動車の各種走行情報をWebアプリケーションから利用するためのインターフェース仕様である W3C Vehicle API を策定中です。
当ハッカソンではW3C Vehicle APIを利用するためのPolyfill(JavaScriptライブラリ)を提供します。

(*) W3C Vehicle Information Access API および W3C Vehicle Data。詳細は以下URL参照。
*1)https://www.w3.org/TR/vehicle-information-api/
*2)https://www.w3.org/TR/vehicle-data/
◇車両エミューレション環境(クラウド)
W3C Vehicle API Polifillは本来、自動車からの情報入力なしには動作しませんが、
サーバーに蓄積した走行データを利用することで、自動車との接続を代替する車両エミューレション環境を提供します。
本エミューレション環境では、走行時の映像再生と同期して走行データが供給されます。
・利用可能な車両情報
 車速、アクセル、ブレーキ、エンジン回転数、オドメータ、ハンドル角度、燃費、車両位置、ドア状態、加速度(x,y,z)、回転(roll,pitch,yaw)など
 ※主催者側で各種走行データをあらかじめ準備します。
・一部の走行データで利用可能な生体情報(2016/12現在検討中)
 心拍数、頭部の加速度(x,y,z)、頭部の回転(roll,pitch,yaw)、まばたき(強さ、閉眼時間)、視線移動(上下左右を3段階)、覚醒度(100点満点、連続値)、注意力(100点満点、連続値)、視線位置(右、中央、左の3段階)など。
・実行ブラウザ環境:
 Windows(Windows7以降), Linux(Ubuntu12.04以降), OS X 各OS環境上のGoogle Chromeを想定します。
・その他サードパーティのAPI
 以下の協賛社さまより、APIをご提供いただきます。
エスディーテック社
  • ドライバーの心拍数、盛り上がり度
JINS-meme
  • 頭部の加速度(x,y,z)、頭部の回転(roll,pitch,yaw)
  • まばたき(強さ、閉眼時間)、視線移動(上下左右を3段階)
  • 覚醒度(100点満点、連続値)、注意力(100点満点、連続値)
  • 視線位置(右、中央、左の3段階)
昭文社
  • MappleAPI(地図情報、観光情報)
YuMake
  • 天気情報API(今日明日天気予報、週間天気予報、時系列天気予報、日の出日の入り、注意報警報、地震情報)
Increment P
  • MapFanAPI
KDDIウェブコミュニケーションズ
  • Twilio API

走行データ(一部)

市街地、高速道路など70シーン以上の走行データを準備しました。