2.移動通信事業の動向

◆新しい端末販売方法導入に伴う携帯電話市場の変化

  従来、携帯電話事業者は、販売店に対し新規契約数や端末販売台数に応じて販売奨励金を出し、販売店はこれを原資として端末の値引きを行うという方法が一般的であった。しかし、この方法では、端末を頻繁に買い換える人とそうでない人とのコスト負担の公平性確保が担保できないという批判が起こってきた。この問題を検討するため、総務省は、2007年1月から「モバイルビジネス研究会」を開催し、オープン型モバイルビジネス環境の実現に向けた議論を重ねた結果、 2007年9月に「モバイルビジネス活性化プラン」を取りまとめた。その中で、携帯電話端末の販売モデルについて、2008年度を目途に、端末価格と通信料金が区分された分離プランおよび利用期間付き契約を部分導入する方向で検討することとした。  NTTドコモは、携帯電話の新たな販売方法として「バリューコース」と「ベーシックコース」を2007年 11月に導入した。バリューコースは分離プランと割賦販売を取り入れた販売方法で、ベーシックコースは 2年間の利用を条件に、購入価格の一部をドコモが負担する販売方法となる。  KDDIは、携帯電話端末の購入方法が選べる料金プラン「au買い方セレクト」として、「シンプルコース」と「フルサポートコース」を2007年11月に導入し、さらに2008年6月、「シンプルコース」向けに、分離プランと割賦販売を取り入れた新シンプルプランを開始した。  なお、ソフトバンクモバイルは、携帯電話を割賦形式で販売する割引サービス「新スーパーボーナス」を 2006年10月に導入している。購入時の頭金はなしで、新規契約から24カ月間は、月々の端末分割代金と割引額が相殺される。  販売奨励金をなくし、通信料金を安くする販売方式に変更したことにより、従来、最新機種の店頭価格が 1~2万円程度だったものが、5~6万円程度に上がったため、買い替え需要が落ち込んでおり、日本の携帯電話メーカーの業界再編が進んでいる。三洋電機は京セラに携帯電話事業を2008年4月に売却しており、三菱電機は携帯電話事業からの撤退を2008年3月に表明している。一方、シャープが2008年6月から中国で販売を展開している。また、パナソニックは2010年に海外市場へ再参入すると発表し、富士通も台湾市場への参入を検討中であることなど、市場が飽和状態の日本国内から、再度、海外市場を目指す動きが出ている。

 

◆携帯電話OSのオープン化

 携帯電話の高機能化に伴い、携帯電話用OSをめぐる動きも活発化している。携帯電話OSには、iPhone 用OSやBlackBerry用OSなどの専用OSと、Symbian、Windows Mobile、Linux、Androidなどの汎用OSがあり、各陣営ともシェア拡大にしのぎを削っている。  ソフトバンクモバイルは、「iPhone™(アイフォーン)3G」(アップル社製)を、2008年7月11日より販売開始した。iPhone3Gは、iPhonSDK(ソフトウェア開発キット)により制作された外部制作会社のアプリケーションが動作するiPhone 2.0ソフトウェアなどを特徴としている。   KDDIは、法人ユーザー向けにKDDI初となるスマートフォンである台湾HTC製「E30HT」の2009年春の発売を進めている。「E30HT」は、SaaS型(Software as a Service)ソリューションである「Business Port」との連携や、Microsoft® System Center Mobile Device Manager 2008によるデバイス管理ソリューションと組み合せることによって、PCからもau携帯電話からも必要な時に必要なアプリケーションを利用することができる。  また台湾HTCは、イー・モバイルから2008年10月にスマートフォン「Touch Diamond」を発売しており、類似機種の「Touch Pro」をNTTドコモとソフトバンクモバイルにも供給している。さらに、カナダ Research In Motionは、FOMA®ハイスピード(HSDPA)対応のスマートフォンBlackBerry Boldを、NTTドコモを通じて2009年2月20日に日本市場に投入した。  一方、米T-Mobileは、米Googleが開発した携帯電話ソフト「Android」を搭載した初の携帯電話「G1」を2008年10月22日から発売した。台湾HTC製のG1は、スライド式QWERTYキーボードとフルタッチスクリーンを搭載し、GoogleストリートビューやGmail、YouTubeなどのGoogleサービスにアクセスするためのアプリケーションがプリセットされている。価格は2年間の通話・データサービス契約を結んだ場合、179 ドルで、当初の発売は米国と欧州のT-Mobileのみである。英国では2008年11月から、ドイツ、オランダなどでは2009年第1四半期に発売の予定である。  またGoogleは、携帯電話会社やメーカーなど数十社と共同で、Open Handset Alliance(OHA)を設立し、Android関連技術の開発や普及を推進している。同団体には、KDDIやNTTドコモの他、中国China Mobile、米Intel、韓国LG Electronics、米Motorola、米Qualcomm、韓国Samsung Electronics、米Sprint Nextel、伊Telecom Italia、スペインTelefonica、米 Texas Instruments(TI)、独T-Mobileなどが参加している。  一方、携帯電話向けLinux推進団体のLiMo Foundationは、NTTドコモ、NEC、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、米Motorola、韓国 Samsung Electronics、英Vodafoneの6社が2007年に設立した非営利組織で、Linuxベースのオープンな携帯向けプラットフォームの開発を目的として活動している。  さらに、フィンランドNokiaは2008年12月、英 Symbianの買収を行った。それに伴い、オープンな携帯電話プラットフォームSymbian OSの開発を目指す Symbian Foundationが2009年上半期に立ち上がる予定で、NTTドコモ、韓国Samsung Electronics、英 Sony Ericsson、米AT& T、米Motorola、韓国LG Electronics、米Texas Instruments、英Vodafoneなどが参加を表明している。

◆携帯電話通信規格の動向

 第3世代携帯電話(以下3G)通信規格である cdma2000方式およびW-CDMA方式は、それぞれKDDI、 NTTドコモ等により導入され、数100kbps程度のデータ通信速度が提供されてきた。  近年、携帯電話キャリア間のサービス競争下で、データトラフィックの需要増大とコンテンツの大容量化が急速に進み、これに対応できるよう、3G用として認められた周波数帯において通信規格の高度化が進められ、W-CDMA方式の高度化を進める標準化団体 3GPP(Third Generation Partnership Project)による HSDPAや、cdma2000方式の高度化を進める3GPP2 (Third Generation Partnership Project 2)によるEVDO 、いわゆる3.5G通信規格により、下り数Mbps程度の高速データ通信サービスの提供が実現した。  現在、さらなる高度化として、下り100Mbps超を目指す、いわゆる3.9G通信規格が検討されており、3GPPが進めるLTE(Long Term Evolution)、および 3GPP2が進めるUMB(Ultra Mobile Broadband)が候補に挙がっている。NTTドコモは、LTEをスーパー 3Gと呼び、2009年の商用システム完了を目指し、2008年2月末から開始している屋外の実証実験で、最大250Mbpsのパケット信号伝送を達成したことを公表した。  一方、KDDIも、2008年11月、総務省主催の「3.9世代移動通信システム等の導入に関わる公開ヒヤリング」の場で、LTEの採用を正式に発表した。今後、総務省を中心に、3.9Gの国内導入に向けて、免許方針等が検討されていく予定である。

 

◆次世代高速無線通信技術の動向

  UQコミュニケーションズは、2008年12月19日に総務省関東総合通信局から、「2.5GHz帯を用いる広帯域移動無線アクセスシステム(モバイルWiMAX)に係る特定無線局(端末)の包括免許」を取得した。同社は、2009年2月26日から東京23区、横浜市、川崎市の一部でサービスを開始し、7月から東名阪にサービスエリアを拡大する予定である。  同社は、当初、ノートパソコンの利用を前提とした USB、PCカード、ExpressCard型のデータ通信端末の提供を予定しているが、近い将来は、ノートパソコンにWiMAX機能が内蔵されることを想定している。  一方、ウィルコムも、2008年12月19日に総務省関東総合通信局から、「2.5GHz帯を使用する広帯域移動無線アクセスシステム(次世代PHS「WILLCOM CORE」)に係る特定無線局および端末の包括免許」を取得した。同社は、2009年4月中に次世代PHS 「WILLCOM CORE」のサービスを開始する予定である。なお同社は、「WILLCOM CORE」ネットワークを活用し、さまざまな企業・自治体と協調した、新たなビジネス展開を検討する「BWAユビキタスネットワーク研究会」(座長:美濃導彦京都大学教授)を 2008年7月28日に設立している。

◆スポーツ・健康管理支援サービスの動向

  KDDIは、au携帯電話利用者の、スポーツを通じた自分磨きを支援する総合サービス「au Smart Sports」を、2008年1月31日に開始した。サービス第1弾の「Run&Walk」は、ランニングやウォーキング時のコースや消費カロリーなどが確認でき、トレーニング結果をEZwebサイトとPCサイトで管理できる仕組みで、サービス累計加入者数は、2009年2月7日時点で70万人を突破した。また、サービス第2弾として、スポーツや食事のアドバイスなどで目標達成をサポートするサービス「Karada Manager」を、2008年11月13日から開始している。  一方、NTTドコモとオムロンヘルスケアは、健康支援サービスの推進に携帯電話を利用したウェルネスプラットフォームを開発し、対応製品を2008年9月30日に発売した。また、ソフトバンクグループのソフトバンクリブラは、携帯電話を使った健康管理支援サービス「ライフキャリア」の販売を2007年10月から開始している。  2008年4月、政府がメタボリックシンドローム対策として特定健康診査・特定保健指導を開始したのを契機に、関連ビジネスが活発化している。

 

◆イー・モバイル、音声通話サービスの開始

 イー・モバイルは、2008年3月28日、携帯電話音声通話サービスの提供および携帯電話番号ポータビリティ(MNP)の申請受付を開始した。  音声サービス開始に先立ち、2007年12月17日、同社は新規事業者としては初めて、NTTドコモと第三世代移動通信サービスのローミング協定を締結した。この合意により、音声サービス開始当初から、日本全国エリアに対応したかたちとなった。なお、このローミング協定の期限は2010年10月までである。  サービス開始時の2008年3月の自社網による人口カバー率は約65%で、4月末のサービスエリア拡大実績では、全国人口カバー率81%を達成している。また、10月から「イー・モバイル国際電話」の提供エリアを162カ国・地域へ拡大している。

 

◆業界初のケータイ専用銀行「じぶん銀行」が営業開始

 KDDIと三菱東京UFJ銀行が共同で設立したモバイルネット銀行「じぶん銀行」は、2008年7月17日から口座開設申し込み受け付けを開始し、モバイル(au、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル)、インターネット(パソコン)、テレホン(無人音声・有人対応)による本格的なバンキングサービスを始めた。  じぶん銀行では、円預金(普通預金、定期預金)、振込(ケータイ番号振込、口座番号振込)、ATM取引(入出金、残高照会)、電子マネー「Edy」チャージのサービスを提供している。口座開設は、モバイルサイト、パソコンサイト、郵便書式のいずれからでも可能で、印鑑やサインの登録は不要である。セキュリティ機能として、ATMロック、パソコンロック、携帯メールによる取引通知をはじめとする機能を用意している。  また、利用者から同意を得た上で、au契約者情報と銀行取引を連携させることにより、ケータイバンキングの利便性と安全性を高める「au情報リンクサービス」を提供し、同サービスの利用者は、auの携帯電話番号で受取人を指定し、振込ができる「ケータイ番号振込」が利用できる。さらに、auショッピング、auオークションなど、EZwebでのショッピングやオークションの決済取引が簡単にできる「じぶん銀行決済」サービスも提供している。

 

◆EZwebにおけるデータ通信速度の制御

 インターネットはオープンなネットワークであり、すべてのユーザーが公平に利用できることが望まれている。しかし、近年、一部のヘビーユーザーの利用によって多数のユーザーの利用に影響が出るケースが増加している。  KDDIは、2008年5月から6月にかけて、連続的かつ大量の通信を利用する一部のユーザーの通信速度を制御する試験を実施した結果、他のユーザーの通信品質の向上が確認できたとし、au携帯電話のインターネット接続サービス「EZweb」を、より快適な状態・環境で利用できるように、連続的かつ大量の通信を利用する一部の利用者について、ネットワーク資源の公平性確保を目的とした通信速度の制御を、2008年10月1日から実施している。  具体的には、前々月の利用月間パケット数が300万パケット以上(EZ「着うたフル®」の約250~300曲をダウンロードした場合のデータ量に相当)の利用者については、EZwebの通信速度を制御し、同じ時間帯に EZwebを利用する他の利用者の通信速度を確保する。なお、通信の切断は行わず、対象時間は21時~翌日1 時までである。

 

◆KDDI、ケータイ専用アミューズメント・ボックス「au BOX」の提供開始

  KDDIは、固定通信と移動通信および放送を融合させた通信サービス「FMBC(Fixed Mobile and Broadcasting Convergence)の一環として、PCを持たないユーザーにも、簡単に音楽や映像を視聴できるケータイ専用アミューズメント・ボックス「au BOX」を、2008年11月1日から、月額315円(税込)でレンタル提供を開始した。  「au BOX」は、CD/DVDプレイヤー機能を搭載しており、CDやau携帯電話でダウンロードしたEZ「着うたフル®」を「au BOX」内蔵スピーカーで視聴できる。「au BOX」は最新の音響技術「EUPHONY™」を搭載し、サラウンド再生が可能で、CDの楽曲を簡単にau携帯電話やウォークマン®に転送したり、DVD プレーヤーとしても使用できる。  さらに、ブロードバンドのインターネット環境に接続すれば、ソフトウエアのインストールや難しい設定をすることなく、PCなしで音楽配信サービス「mora for LISMO」の約130万曲の楽曲ラインナップから、好みの楽曲を購入できる。また、ハリウッドの大作映画や話題の海外ドラマなど、約5000本を「LISMO Video Store」で購入できる。購入した楽曲やビデオは、テレビやau携帯電話に転送することができ、自宅でも外出先でも、LISMOを視聴できる。また、 KDDIの「ひかりone TVサービス」を利用した場合、多チャンネル放送など、さまざまな映像コンテンツも併せて利用できる。

 

◆パーソナルエージェント型サービス

 パーソナルエージェント型サービスとは、ユーザーの状態や環境、過去の行動履歴などに応じて、機能・情報・サービスを最適な形で提供することで、ユーザー一人ひとりの要望に応えるサービスである。このようなサービスは、携帯電話の世界で徐々に広がりつつある。  NTTドコモは、ケータイが“執事”や“コンシェルジュ”のように、ユーザー一人ひとりの生活をサポートするサービス「iコンシェル®」を、2008年11月19日に開始した。  住まいのエリア情報、スケジュール、トルカ®、電話帳などの、ユーザーのさまざまなデータを預かり、これにより、自分の生活エリアや趣味嗜好に合わせた情報を、適切なタイミング、方法で届けたり、携帯電話に保存されているスケジュールやトルカを自動で最新情報に更新するなどのサービスである。  一方、KDDIは、au携帯電話において、待受画面上のキャラクターを通じて、ユーザーの趣味嗜好や行動履歴に合った情報を提供する「感性型」エージェントインターフェースを開発し、2009年1月から、β版サービスとして提供を開始した。  「感性型」エージェントインターフェースは、待受画面に設定されたキャラクターとユーザーの対話型コミュニケーションを提供する。設定したキャラクターが、ユーザーのau携帯電話に登録しているアドレス帳や着信履歴などの情報、季節・時間などの時節に基づき、ユーザーに合わせた個別の情報を発信する。