4.海外の動向

◆中国における通信業界再編

2008年5月24日、工業和信息化部(工業・情報化省)、国家発展和改革委員会、財政部が連名で発した「関於電信体制改革深化的通告」(電気通信体制の改革を深化するための通告)により、3G免許発給(3件)と絡んだ懸案であった通信事業者再編が実現する運びとなった。再編の内容は、 ①中国電信による中国聯通のCDMA事業と中国衛通の基礎電信業務の買収 ②中国聯通による中国網通の吸収合併 ③中国移動による中国鉄通の完全子会社化である。 総合的事業者である新生の中国電信、中国聯通、中国移動の設立により、携帯電話ユーザーの全国レベルでの本格的争奪がベースとなり、固定系での競争も活性化すること、固定系・移動系のバンドル型、融合型サービスが生まれることが期待される。 なお、同通告は事業者再編完了後に3G免許を正式発給すると謳っており、工業和信息化部は2009年1月7日、中国移動、中国聯通、中国電信に、それぞれTDSCDMA 方式、WCDMA方式、CDMA2000方式の免許を交付した。  

◆韓国におけるIPTV法の制定とサービス開始

韓国では、通信と放送、それぞれの主管庁がIPTV (Internet Protocol Television)の位置付けを巡って 4年近く対立し、IPTVサービス開始の遅延をもたらしていた。しかし、通信分野の主管庁である旧情報通信部(現放送通信委員会)は、2007年12月、韓国におけるIPTVの普及促進を目的に「インターネットマルチメディア放送事業法」(以下、「IPTV法」)を制定。2008年6月にはIPTV法施行令が制定され、これにより地上波再送信を含むIPTVサービスの提供が可能となった。 IPTV法は、ハード(IPTV提供事業者)・ソフト(IPTVコンテンツ事業者)別に規律する法律で、IPTV 提供事業者には、①外国資本、新聞社・ニュース通信社による参入規制(各49%以下)、②70チャンネル以上の提供義務付け、③ネットワーク未保有者等へのボトルネック設備の提供義務付け等が課されている。 地上波再送信を含むIPTVサービス提供の根拠法は整備されたものの、地上波再送信対価を巡って、IPTV 提供事業者(通信事業者のKT、SK Broadband、LG Dacom)と地上波放送事業者の契約締結が難航し、サービス提供は予定より遅れていた。しかし、2008 年11月、KTは地上波放送事業者各社との契約を完了し、地上波再送信を含むIPTVサービスを開始した。 2009年1月には、SK Broadband、LG Dacomによる IPTVサービスも開始され、これによりIPTV提供事業者3社によるサービスが出揃うこととなった。  

◆主要携帯通信事業者の新興国市場進出

2007年後半から2008年、アジアやアフリカの新興国携帯市場で、主要携帯通信事業者の参入の動きが顕著であった。 毎月の携帯加入者増加数が800万を超えるインド携帯市場へは、2008年9月にUAE(アラブ首長国連邦)のEtisalatがSwan Telecomの株式45%を、2008年10 月にノルウェーのTelenorがUnitech Wirelessの株式 60%を、2008年11月にNTTドコモがTata Teleservices の株式26%の取得に、それぞれ合意した。インド政府は、新規の外資参入も認める3Gオークションを 2008年後半に予定していたが、金融危機の影響で2009 年4月以降に延期される見込みである。3Gオークションには米AT&Tも参加するのではとの観測も流れている。 アジアの携帯市場では、NTTドコモが、2008年2月、韓国KTFと共同で、マレーシアU Mobileの株式33%の取得を完了。2008年6月にはバングラデッシュTM International (Bangladesh) Limitedの株式30%の取得に合意、2008年11月にはベトナムVinaPhoneと3G協力の覚書を締結している。このほか、UAEのEtisalat は、2007年12月、インドネシアExcelcomindoの株式 15.87%を取得している。 アフリカの携帯市場では、Orange、ボーダフォン、MTN(南ア)、Zain(クウェート)およびEtisalatによる覇権争いが繰り広げられている。Orange(フランステレコム)は、2007年11月、Telkom Kenyaの株式 51%を取得し、ケニアでの携帯市場参入の布石を打った。ボーダフォンは、2008年8月、Ghana Telecom の株式70%を取得、同年11月、Vodacom(南ア)の株式15%を取得し、その株式比率を65%まで引き上げることで合意した。なお、2008年5月~7月には、インドのBharti AirtelとRelianceがMTN(南ア)の合併・買収に名乗りを上げ、世界から注目されたが、このMTN合併・買収話は最終的には成立しなかった。  

◆音楽配信サービスにおけるDRMフリー化

音楽配信におけるデジタル著作権管理(DRM)技術は、違法コピーを防ぐ目的で、レコード会社が義務付けてきたものである。しかし、欧米で著作権物の公正使用の議論が活発になり、2007年から2008年初めにかけて、4大レーベル(Sony BMG Music Entertainment、 EMI、Universal Music Group、Warner Music Group)は、DRMフリー化へと方針を転換した。DRMフリーの音楽配信サービスは、米国を中心に広がっている。 米アマゾンは、2007年9月、DRMフリーの「AmazonMP3」サービス(1曲0.89ドルから)を米国で開始し、2008年1月までに4大レーベルをすべて取り揃えた。MP3形式による楽曲は、iPodや携帯電話など各種MP3プレーヤーで再生できる。当初約200万であったタイトル数は600万を超え、2008年12月には英国に進出した。 会員制サービスの米ナップスターも、2008年5月、 MP3形式の楽曲約600万タイトルを、DRMフリーで提供し始めた。 米ベライゾンワイヤレスは、2008年6月、「VCAST Music with Rhapsody」サービスを立ち上げた。携帯電話用とパソコン用(DRMフリーのMP3形式)の 2ファイルを1曲1.99ドルから購入できる。また、月額14.99ドルの定額サービスに登録すると、パソコンから600万を超える全タイトルに無制限にアクセスできる。 音楽配信事業で最大手の米アップルは、2007年5月から、一部の楽曲でDRMフリーでの販売を開始していたが、2009年1月に、米国で配信する全楽曲(約1千万タイトル)を同年4月からDRMフリーとすることを発表した。   

◆欧州委員会、NGA(次世代アクセス網)に関する規制勧告案を発表

欧州委員会は、2008年9月、NGA(Next Generation Access Network)に関する規制勧告案を発表し、意見を募集した。NGAとは、本勧告案では、既存のメタル回線、または新設される光ファイバーにより、現在提供されているブロードバンドアクセスサービスをはるかに上回る帯域によるサービス提供が可能なアクセスネットワークと規定されている。本勧告案では、 EU加盟各国の通信担当規制機関に対し、以下の措置を実施することを求めている。 ①NGAのSMP(Significant Market Power:重大な市場支配力)を有する 事業者に対し、競争事業者への既存、新設の管路の提供義務を課すこと ②SMP事業者は、その指定を受けた日から6カ月以内に管路の提供に関する 約款を制定すること ③SMP事業者が、管路を提供する際には、SMP事業者の子会社・関連会社を 含め、すべての事業者を同等に扱うよう担保すること(同等性の原則の適用) ④SMP事業者と競争事業者による屋内回線の敷設と共用に関する協力を推進 すること 欧州委員会は、2009年中に本勧告を最終化したいとしている。欧州では、英BTが、2008年7月に、2012 年までに15億ポンドを投資し、1000万世帯に光ファイバーを敷設する計画を発表、フランステレコムも、 2009年から一般家庭向けの光ファイバーの本格的導入に向け、準備を進めるなど、NGA構築に向けた動きが加速し始めている。  

◆フランスにおける建物内光ファイバー共用ルール化の動き

フランスのブロードバンド加入者数は、前年までと比べ、やや鈍化したものの、年率20%近い成長を示し、2008年6月末時点で約1670万(世界第6位)となった。一方、ブロードバンド世帯普及率は62.7%で、香港(93.5%)や韓国(91%)に比べると低く、世界第22位にとどまっている(出典:Telecom Markets誌)。その主流は、依然としてメタル回線であり、ブロードバンド加入者の約95%がADSL(5%弱がケーブルモデム)を利用している。FTTHに関しては、ほとんど普及していないのが現状である。 仏政府はブロードバンドの一層の発展を目指し、 2012年までにFTTH加入者数を400万にするという目標を掲げ、政府とARCEP(通信分野の独立規制機関)が中心となってFTTHの普及促進策を検討してきた。 ARCEPは、FTTHの競争環境を整備するため、フランステレコムの管路の開放と光ファイバー網終端部分の共用について議論を進めてきた。そのうち光ファイバーの共用に関して、2008年10月に勧告を発出した。この勧告では、建物内の屋内回線が競争上のボトルネックになっていると見なし、 ①最初に建物に光ファイバーを敷設する事業者が共用を希望する他事業者の 光ファイバーも合わせて敷設すること ②全事業者が光ファイバー共用に関する協定を締結すること が奨励されている。 また、懸案であった共用アクセスポイントの設置場所に関しては、人口密度や建物の種類に依存するとした。具体的には、人口密度が高い都市では建物の付近に(建物内部への設置は大規模な建物に限定)、人口密度が低くなるに従って建物から離れた場所(大通り等)に設置することが適当とされた。 一方、上記勧告と並行して、建物内光ファイバー共用に関する原則が盛り込まれた「経済近代化法」の制定手続きが行われ、2008年8月に公布された。  

◆米FCCがホワイトスペースの開放を決定

ホワイトスペースとは、放送事業者等に割り当てられているVHF帯、UHF帯のTV用周波数帯のうち、一部地域で未利用となっている周波数帯のことである。特にアナログTVと米国のデジタルTV方式は、隣接するTV放送エリアに同じチャネルを割り当てられないため、ホワイトスペースが生じる。 米FCC(米国連邦通信委員会)は、デジタルTVへの移行が完了する2009年6月以降、ホワイトスペースを、Wi-Fiのような広帯域無線システムに利用できないか、2004年から検討してきた。こうしたホワイトスペース利用機器(White Space Devices: 以下「WSD」)の実現は、無線インターネットを一層普及させるものとして、MicrosoftやGoogle、PCベンダー等が強く賛同する一方、TV放送への電波干渉を懸念する放送業界等の反対があり、FCCは、ラボやフィールドにおいてWSD試作機を用いて、電波干渉を及ぼさないようにする仕組みや基準値の検証実験を重ねてきた。 その実験結果から、FCCは、2008年11月4日、WSD が自身の地理的位置情報の取得機能と、TV局運用状況等のデータベースへのアクセス機能とにより、その場所で利用可能な周波数帯を認知できる能力に加えて、周辺のTV電波等の検知機能を備えることを条件に、TV放送等に電波干渉を及ぼさない範囲で、電波免許不要な低出力の固定、またはパーソナル、ポータブルタイプのWSD機器の使用を認めるFCC規則の改定を決定した。  

◆米SprintとClearwire、モバイルWiMAX事業の新会社を設立

2008年12月1日、米無線ブロードバンド事業者のClearwireと米携帯電話業界第3位のSprint Nextel (Sprint)は、両社のモバイルWiMAX事業を統合し、新たに合弁会社を設立した。新会社はClearwireの名称を引き継ぎ、2010年までに、1億2000万から1億4000 万人をカバーする全米規模のモバイルWiMAXネットワーク構築を目標としている。 新会社には、インテル、Googleのほか、米CATV事業者のコムキャスト、タイムワーナー、Bright House Networksの5社が総額32億ドル(約2876億円)を出資しており、さらに投資会社のTrilogy Equity Partners が、1000万ドル(約8億9870万円)の追加出資を行うことも決定している。 新生Clearwireは、Googleのモバイル・プラットフォーム「Android」をサポートし、Googleと共にモバイルWiMAXデバイス向けのインターネット・サービス、広告サービス、アプリケーションの開発を進める。また、SprintおよびCATV3社とは、ClearwireのモバイルWiMAXサービスの卸売り契約を結ぶことが予定されている。 Clearwireが提供するWiMAXサービスのブランド名は、すべて「Clear」に統一される。Sprintは、 2008年9月に、メリーランド州ボルチモアでモバイルWiMAXサービス「XOHM(ゾーム)」の提供を開始しているが、このサービスも今後、「Clear」ブランドに統一される。2009年1月7日には、オレゴン州ポートランドで、モバイルWiMAXサービス「Clear」の正式提供を開始した。

*換算レート:1ドル=89.87円(2008年12月19日東京市場TTMレート) 

 

◆米オバマ新政権の情報通信政策

2009年1月20日に就任したバラク・オバマ米大統領は、選挙活動中の2007年11月、「技術・革新に関する綱領」を発表し、最新の技術を活用することによって情報開示、情報共有を進め、国民に対して開かれた21 世紀の政府を目指すとの意向を明らかにしている。 綱領の中で、情報通信分野に関する主な政策としては、「ネットワーク中立性の原則支持」、「国家の最高技術責任者(CTO:Chief Technology Officer)の任命」、「次世代ブロードバンドの普及」等が挙げられており、全米にブロードバンド網を構築するための具体的手段として、ユニバーサルサービス基金による支援、無線周波数の有効利用等が提案されている。 さらに同氏は、2008年11月の大統領選で勝利後の同年12月6日、民主党のラジオ演説で、「米国のブロードバンド普及率が世界第15位に甘んじているのは受け入れ難い」として、経済再生計画の一環として「情報スーパーハイウェイ」を刷新し、すべての子供がインターネットを利用できる機会を確保することによって、米国の国際競争力を強化していくとの考えを表明した。 2009年2月に成立した総額約7900億ドル(約72兆 4114億円)規模の景気対策法(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)では、ルーラル地域のブロードバンドおよび無線インフラの整備のための補助金として、約72億ドル(約6600億円)が割り当てられている。

*換算レート:1ドル=91.66円(2009年2月16日東京市場TTMレート)