5.ワンポイント解説

◆アンビエント社会

 「ユビキタス社会」の先を見据えたICT社会のビジョンとして、「アンビエント社会」が注目されている。「アンビエント(Ambient)」とは、「周辺の」、「環境の」という意味である。「ユビキタス社会」が「いつでも、どこでも、誰でも」というコンセプトを掲げているのに対して、「アンビエント社会」は、「今だけ、ここだけ、あなただけ」をコンセプトとして掲げ、利用者側に立った情報社会の構築を目指している。  「アンビエント社会」の特徴は、ユーザーを取り巻く情報通信機器がセンサー技術を利用して、ユーザーの状況を把握・処理し、「今、ここで、私が」必要とする情報をPUSH型で提供するところにある。今後、「アンビエント社会」の実現により、個々人の生活環境がより快適になり、「安全・安心・快適」な社会が構築されることが期待されている。  

◆クラウドコンピューティング

 クラウドコンピューティングとは、インターネット上に存在するサーバが提供するサービスを、それらのサーバ群の所在や内部構造を意識せずに利用できるシステム形態をいう。ネットワークを図示するのに雲(cloud)の絵を使うことが多く、雲の中にはハードウェアやソフトウェアの実体があるが、その中身は見えない(気にしなくてよい)というイメージから名付けられた表現である。  クラウドコンピューティングでは、一般的に、専用のクライアント・ソフトは使わず、Webブラウザ上から操作する。ユーザーが操作する端末側で必要となるのは、インターネットと通信して結果を表示する機能だけであり、パソコンやノートパソコンはもちろん、PDA(携帯情報端末)や携帯電話からでも同じように利用できる。  最近では、これにより、企業の顧客管理アプリケーション、ファイルを保存するストレージサービス、 GoogleのGmailに代表されるWebメールサービスや、ワープロ、表計算ソフトまで利用可能となっている。

 

◆データセントリック

 データセントリック(情報資産集中化)とは、サーバやデータを一カ所に統合して一元管理するICT環境を意味する。ユーザーは、ネットワークを通じて、世界中どこにいてもシステムやデータが利用できる利点がある。最近ではこのデータセントリックモデルの導入に伴い、データセンターの需要が急増している。  例えば、セキュリティの観点からPCの社外持ち出しを禁止している企業も、データセントリック化とシンクライアント※端末を導入することで安全なICT環境を得られる。そのため、ユーザーの外出先や自宅での利用もできるようになり、グローバルネットワークを通じて、日本のICT環境が海外の進出先からも手軽に、しかも安全に利用できる。

※シンクライアント:社員が使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、サーバ側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理するシステムの総称。また、そのようなシステムを実現するための、機能を絞った低価格のクライアント用コンピュータ。

 

◆グリーンIT/カーボントレース

 「グリーンIT」とは、環境に配慮してIT(Information Technology:情報技術)を活用すること全般をいう。その具体的な中身は、①ITを活用して産業、社会全般のCO2排出量を削減する「ITによるグリーン化」と、 ②携帯電話、インターネット等の急速な普及により拡大するIT自身のCO2排出量を削減する「ITのグリーン化」の二つ。英語で「グリーン」は環境に配慮することを指す言葉である。  環境問題への解決策として「グリーンIT」に注目が集まる中で、携帯電話を利用して環境負荷を軽減しようとのさまざまな取り組みが始まっている。その一つに、株式会社ウェイストボックスが提供する「カーボントレース」サービスがある。このサービスは、利用者が携帯電話を用いて同社のサイトにアクセスすることで、商品のCO2排出量を確認したり、自らの携帯電話端末が使用時に排出するCO2をオフセット(CO2の吸収源となる森林等へ投資してその排出量を埋め合わせすること)できるなど、温暖化対策にかかわるさまざまな機能を提供するものである。

 

◆次世代ユーザーインターフェース

 情報機器の主流が、パソコンから次世代ケータイのようなモバイル端末に移行するにつれ、そのユーザー・インタフェース(UI)も過渡期に突入した。マウスとキーボードだけが頼りの従来方式から、タッチパネル、音声認識、ペン入力、さらに各種センサーなど、多様な手段を組み合わせた「マルチ・モーダル」へと進化しつつある。  UIとは、コンピュータなど情報機器とその利用者の間で、各種情報をやり取りする方法を指す。60~80年代にかけては、キーボードから文字の命令を打ち込む入力方式が普及。これが90年代以降は、マウスとデスクトップ環境を中心とする、グラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)へと変化した。これによって、実世界における机上の対象物(文書、ファイル、プリンタ等々)を、パソコン画面上でアイコン化して視覚的に操作できるようになった。  このようなUIが、今、再び大きな転換期に差し掛かっている。なぜなら、静的な室内を想定して開発された従来のGUIは、動的な屋外で使われるモバイル端末にそぐわないからだ。例えば、自動車を運転中には音声入力、ふと立ち寄ったカフェでメールを打つときにはキーボード、会議の最中に素早くウエブを閲覧するときにはタッチパネルなど、状況に応じて最適なUI は異なる。これらの変化を各種センサーで検知し、異なる方式を自動的に切り替えて提供する技術(マルチ・モーダル)が、次世代UIの要になると見られている。

 

◆UMPC(Ultra-Mobile PC)

 UMPCとは、Ultra-Mobile PC(ウルトラ・モバイルPC)の略で、本来は、マイクロソフトやインテルが2006年3月に詳細を発表した超小型PCの規格のことを指す。  しかし、UMPCの概念が一般的となった現在においては、携帯電話やPDAなどのモバイル機器とノートパソコンの中間に位置する「超小型ノートパソコン」を指す言葉としてのイメージが定着している。例えば、ウィルコムが2008年7月に発売した「WILLCOM D4」はその代表例といっていいだろう。  超小型ノートパソコンといっても、CPUの処理機能やHDDの容量などのパソコンとしての基本機能は本格的なノートパソコンに引けを取らず、Webブラウジングやメールの送受信、簡単なOfficeの操作であれば、十分なスペックを有している。  UMPCは、ビジネスパーソンの2台目用パソコンとしての需要が高く、携帯電話のデータ通信カードとのセット販売により、ノートパソコン市場活性化の起爆剤としての期待が高まっている。

 

◆PND(Personal Navigation Device)

 PNDとは、「Personal Navigation Device」の略で、簡易型のポータブルカーナビゲーションシステムのことを指す。これまでPNDは、カーナビの普及率が高い日本よりも、欧米や新興国(BRICsなど)といった、車に備え付ける本格的なタイプのカーナビがあまり普及していない国々での人気が高かった。  しかし近年、端末の小型化、低価格化、高性能化が進むことで、これらを訴求ポイントとして、日本でも人気が高まってきている。また「簡易型」であるがゆえ、自動車への取り付け・取り外しが容易で、複数の自動車で使い回すことができる点も、PNDに人気が集まる理由の一つであろう。  調査会社シード・プランニングの調査(2008年9月)では、日本のPND市場は、2008年に約109万台に達し、2015年には、2008年の3.3倍に当たる357万台に達する見込みである。

 

◆アクトビラ

 アクトビラ(acTVila)は、ブロードバンド回線を利用した映像配信サービスであり、サービス名と同じ社名の「株式会社アクトビラ」(東京・港区:パナソニック、ソニー等が出資)が2007年2月から提供している。  従来のPC向けやセット・トップ・ボックス(STB)経由のサービスとは異なり、専用のTVに直接ブロードバンド回線を差し込むだけで、地上デジタル放送並みの高画質な映像コンテンツを楽しめるサービスとして注目されている。  アクトビラで提供されるのは、文字・静止画情報中心の「アクトビラベーシック」、各種映像コンテンツを提供する「アクトビラビデオ」(低解像度)、高解像度映像の各種映像コンテンツを提供する「アクトビラビデオフル」の3タイプ。  なお、2008年12月から、過去の人気番組や見逃した番組が視聴可能となる「NHKオンデマンド(NOD)」がアクトビラのメニューに加わっている。  

◆ふるさとケータイ

 「ふるさとケータイ」は、地域の活性化や住民サービスの向上、地域の高齢者や子どもの安心・安全をサポートすることを目的とした携帯電話サービスをいう。総務省は、ふるさとケータイを用いた事業(正式名称:「ふるさとケータイ創出支援事業」)を2009年度より開始する予定。  「ふるさとケータイ創出支援事業」では、携帯電話のMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)により、携帯電話のGPS機能と連動した、高齢者や子どもの見守りサービス、観光情報サービス、災害情報サービスなどの提供が予定されている。総務省は当該事業により、地域の活性化、地域住民の安心・安全の向上、デジタルデバイドの解消を狙っている。  なお、「ふるさとケータイ創出支援事業」の委託先は2009年1月中旬に選定され(委託先は2009年3月までに公表される予定)、事業が具体化される見込みである。

 

◆OpenID

 「OpenID」とは、一つのIDで複数のウェブサイトの利用が可能になる認証技術、およびそのIDのことを指す。ユーザーは、OpenIDに対応するサイトで取得したID/パスワードで、他のOpenID対応サイトにログインすることができるため、サイトごとに複数のIDを使い分ける必要がなくなる。一方、サイト管理者はユーザー情報を管理する負担が軽減されるという利点がある。  OpenIDの技術仕様は、米Google、米ベリサイン、米マイクロソフト等が参加する米OpenID Foundation により公開されており、日本においても、2008年10月に有限責任中間法人OpenIDファウンデーション・ジャパン(OIDF-J)が設立され、普及に向けた活動が本格化している。  OIDF-Jには、ポータルサイト運営企業、電機メーカー、通信キャリア等、さまざまな分野の企業が参加している。 OIDF-Jの発表(2008年10月)では、世界で2万2000 を超えるサイトが既にOpenIDに対応しているという。日本でもヤフージャパン、ミクシィなど、OpenIDに対応するサイトが増加しつつある。

 

◆Google Chrome(グーグル・クローム)

 Google Chromeとは、グーグルが独自開発したオープンソースブラウザのこと。2008年9月2日にβ 版が公開され、その翌日に、ブラウザ市場で1%以上のシェアを獲得し、話題を集めた。同年12月11日には正式版が公開された。  Google Chromeには、主に以下の特徴がある。    ①多機能アドレスバー:URLを直接入力するほか、キーワード入力でGoogle検索     できる機能    ②強力なタブ機能:閲覧頻度の高いページがサムネイルで一覧表示されるほか、     全履歴の検索が可能となる機能    ③アプリケーションショートカット:Gmailなどのショートカットをデスクトップなどに     登録できる機能    ④シークレットウィンドウ:アクセス履歴を一切残さないほか、Cookieもウィンドウ     を閉じる際、すべて消去される機能  この他にも、ページの表示速度を向上させるなど、さまざまな工夫がなされている。現状、Windows Vista/XP版のみが公開されているが、今後、Mac OS版、Linux版が公開される予定である。