1.電気通信事業の規制動向

◆「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」検討状況

 「光の道」構想に関する基本方針として、総務省は政策決定プラットフォーム(2010年12月14日開催)において以下のように進めることを決定した。これは、「過去の競争政策のレビュー部会」、「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」の合同部会(2010年月30日開催)の最終取りまとめで指摘された事項に対応したものである。

① 「NTT東・西」の光ファイバーやメタル回線などの加入系設備を保有するアクセス部門の機能分離の実施、子会社等との一体経営への対応、業務範囲の弾力化について、具体的内容を早急に確定し、関係法律の改正案を通常国会に提出する。

② 「NTT東・西」の加入光ファイバー接続料について、その低廉化に向けて、総務省およびNTTは、2011年度以降の接続料算定方法の見直しに向けた具体的な検討を早急に開始し、2010年度内に成案を得る。

③ 次世代ネットワーク(NGN)で実現すべきアンバンドル(細分化)機能・サービスや、IP網への移行(マイグレーション)に伴う課題について、実現方法やコスト負担の在り方を含め、総務省および関係する通信事業者・インターネット接続事業者(ISP)などは速やかに検討の場を設け、2011年中を目途に成案を得る。

④ ワイヤレスブロードバンド事業者による既存の周波数(700/900MHz帯)利用者の移行コストの負担に関し、オークションの考え方を取り入れた制度を創設するため、関係法律の改正案を通常国会に提出する。

⑤ 第4世代移動通信システムなど新たな無線システムに関して、諸外国で実施されているオークションの導入についても早急に検討の場を設けて議論を進める(新無線システム移行までに関係法律の改正が間に合うように結論を得る)。

 今後、NTT東・西における規制の遵守状況等を、毎年度、継続的にチェックすることに加え、制度整備の実施後3年を目途に各施策の有効性・適正性について包括的な検証を行うこととなった。その結果、「光の道」実現への進展が十分でない場合には、ボトルネック設備のさらなるオープン化や、加入系設備を保有するアクセス部門の構造分離・資本分離を含めたファイアウォール規制の強化など、公正競争を整備するためのさらなる措置について検討することとなる。
また、合同部会の最終取りまとめでは、「光の道」への移行期のユニバーサルサービスについては従来と同様、いわゆる「電話」が適当との考えの下、現行の住宅用加入電話基本料額を大きく上回らない光IP電話が追加される方向が示された。これにより、メタルと光の二重投資の回避が可能となり、「光の道」構想推進への寄与が見込まれている。

 

◆携帯電話網との接続

 総務省は、2009年10月16日付情報通信審議会答申「電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの在り方について」を受けて、「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」を策定し、2010年3月29日に公表した。
本ガイドラインでは、携帯電話網に関して、音声・データネットワークへの接続機能など、「アンバンドルすることが望ましい機能」および当該機能の接続料算定方法や、コンテンツ情報料回収代行機能、SMS(Short Message Service)接続機能などの「注視すべき機能」が示されている。
また、本ガイドラインの対象は第二種指定電気通信事業者であるが、それ以外の携帯電話事業者についても、検証可能性に留意した上で、ガイドラインを踏まえた積極的な対応を行うことが求められている。

 

◆通信・放送融合法制――電波法、事業法、放送法の改正

 近年、デジタル化、ブロードバンド化によって、通信と放送の融合・連携型の新たなサービスが登場している。このような状況に対応できるよう、60年ぶりに通信・放送に関連する法体系の抜本的な見直しが行われ、現行の8本の法律を4本に再編するために、放送法等の一部を改正する法律が2010年11月に成立した。本法は、同年12月に公布され、順次、3カ月以内から9カ月以内に施行される。
これまでの4年間にわたる議論の過程では、通信・放送関連法を「情報通信法」として一本化する案が提起されたこともあったが、2009年8月の情報通信審議会答申により、8本ある通信・放送関連の法律を、「コンテンツ規律」「伝送サービス規律」「伝送設備規律」の3つのレイヤー型規律に再整理し、各レイヤーの中で制度の集約化を図ることとなった。
結果的に、コンテンツ規律は放送法に一本化(有線テレビジョン放送法、有線ラジオ放送法、電気通信役務利用放送法は廃止)され、伝送サービス規律は電気通信事業法に一本化(有線放送電話法は廃止)される。伝送設備規律については統廃合されず、電波法、有線電気通信法はそのまま並存することになった。
主な改正事項は以下のとおり。

(1)放送法関係
① 現行の地上テレビジョン放送やBS放送等を「基幹放送」、それ以外の放送を「一般放送」へと区分する。基幹放送について、設備の設置(ハード)と放送の業務(ソフト)を、新電波法上の無線局の「免許」と新放送法上の「認定」に、手続きを分離する制度を設ける。ただし、ハード・ソフト一致を希望する地上放送事業者については、従前どおり「免許」のみの手続きも可とする。一般放送は許可・登録等から、登録・届け出へと緩和する。
② 2以上の基幹放送事業者を支配することの禁止や、支配の定義等、マスメディア集中排除原則の基本的な部分を法定化する。
③ 放送中止事故の再発防止等のため、放送における安全・信頼性を確保する規定を整備する。
④ 放送番組の種別(教養番組、教育番組、娯楽番組等の区分)の公表に係る規定を整備する。
⑤ 有料放送における契約者への提供条件の説明等に係る規定を整備する。
⑥ 地上テレビジョン放送の再放送同意に係る紛争処理に関する斡旋・仲裁制度を整備する。

(2)電波法関係
① 一の無線局を通信および放送の双方の目的に利用することを可能とする等の制度を整備する。
② 免許不要局の空中線電力の上限を0.01ワットから1ワットに変更する。
③ 携帯電話基地局のうち、屋内に設置される小規模局等について、包括免許を受けた場合には、基地局ごとの個別免許を不要とし、事後届け出で足りることとする。

(3)電気通信事業法関係
① 電気通信事業者間だけでなく、コンテンツ配信事業者と電気通信事業者との間の紛争を、電気通信紛争処理委員会(電気通信事業紛争処理委員会から改称)の斡旋および仲裁の対象とする等、紛争処理機能を拡充する。
② 二種指定事業者(現在はNTTドコモ、KDDI、沖縄セルラーが対象)に係る接続会計制度を創設する。

 

◆ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数再編動向

 総務省の「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」は、2010年11月30日、最終取りまとめを公表した。

① 700/900MHz帯の再編
諸外国との整合を図る観点から、700MHz帯、900MHz帯それぞれでペアバンドを作る。
<700MHz帯>
2015年からの携帯電話での利用を目指し、既存システムの移行先システムの研究開発・実証実験・システム検証等を行い、その結果を踏まえ、2012年度を目途に周波数移行プランを策定する。
<900MHz帯>
2012年から5MHz×2の利用を開始し、2015年からはさらに10MHz×2の利用を図る。RFIDについては915~928MHz帯、MCA無線は930~940MHz帯へ移行。パーソナル無線については2015年を目途に廃止する。

② 再編のための費用負担
移行後の周波数の利用を希望する事業者が、移行に要する費用の負担可能額を申し出るという市場原理を活用した方策を取り入れることが適当とされた。
負担可能額の多寡やサービス開始時期等を踏まえて事業者を決定するオークションの考え方の導入について、より詳細な制度設計が総務省に求められている。

 

◆携帯端末向けマルチメディア放送の受託放送事業者の決定

 207.5MHz~222MHz帯を利用する全国向け「携帯端末向けマルチメディア放送」の受託放送事業者について、総務省から諮問を受けた電波監理審議会は、2010年9月8日、申請のあった株式会社マルチメディア放送とメディアフロージャパン企画株式会社の開発計画の比較審査の結果、前者が開設指針への適合度合いが高いと答申。翌9日、総務大臣は携帯端末向けマルチメディア放送の特定基地局開設計画の認定書を株式会社マルチメディア放送に交付した。
携帯端末向けマルチメディア放送は、2011年に停波するアナログTVのVHF帯を用いた新サービスで、2012年4月に提供開始が予定されている。映像のストリーミング配信だけでなく、放送波を用いたデータ配信サービスなども提供が予定されている。
本件に関して総務省が定めた開設指針では、携帯端末向けマルチメディア放送に利用する電波を1事業者に割り当てるとしていたが、NTTドコモや在京キー局などを株主とする株式会社マルチメディア放送が日本の「ISDB-Tmm方式」、KDDIとクアルコムジャパンを株主とするメディアフロージャパン企画株式会社が米国の「MediaFLO方式」で、特定基地局開設計画の認定申請をしていた。
競争促進の観点から2社に免許を付与すべきとの意見もあったが、最終的には総務省の開設指針で示されたとおり、 社に交付された。
申請した両社とも認定要件を満たしていると認められたが、比較審査を行い、メディアフロージャパン企画株式会社は「技術的能力」で「やや優位」とされたものの、「計画内容」「基地局の整備能力」「財務的基盤」において株式会社マルチメディア放送の方が「優位」もしくは「やや優位」と判断された。
委託放送業務に関しては、総務省が当該業務の認定に係る制度整備に関する総務省の考え方や政策の選択肢に関する意見募集および参入希望調査を実施(2010年10月29日~11月22日)。提出された意見などを踏まえて、今後、委託放送業務の認定に係る制度整備、委託放送事業者の認定手続きを進めていくこととなる。

 

◆ICT利活用と安全・安心への取り組み

 日本はブロードバンドインフラ整備において世界最高レベルにあるが、その利活用については遅れを取っていると指摘されている。2010年5月の「新たな情報通信技術戦略」、6月の「新成長戦略」により、ICTの利活用を阻む制度・規制などの洗い出しと見直しの検討が始まった。総務省のパブリックコメントでは、特に医療、教育および行政において阻害項目が数々指摘され、IT戦略本部などに提示されている。
一方、ブロードバンドの普及に伴い、ネットワークを介して各種の有害情報が流通するリスクも高まっているため、安全や安心への取り組みも進められている。有害情報やインターネットを介したトラブル・犯罪から青少年を守るための対策、迷惑メールに対するコントロールなどについて、一定範囲で電気通信事業者、プロバイダーの協力が政府や警察機関などから要請されている。通信の秘密や表現の自由を守る視点からの調整が必要であり、プロバイダーの義務や免責を定めるプロバイダー責任制限法の見直しも進められている。
また、新たな課題として、通信環境や機器の発達により、さまざまな事業者がライフログといわれる利用者の行動履歴に係るデジタルデータ(ウェブ閲覧情報、購買情報、位置情報など)を集積して事業展開を図っているが、ライフログは顧客の趣味・嗜好に合う新しいサービスの開発などに役立てられる一方、情報の内容や取り扱い方によっては個人を特定することもできるため、プライバシー保護との調整の必要性も認識されている。ライフログの収集や利用に関して、各事業者による自主的なガイドラインなどの策定が期待されている。