1.電気通信事業の規制動向

◆知識情報社会の実現に向けた情報通信政策の在り方

 情報通信審議会は、「知識情報社会の実現に向けた情報通信政策の在り方~Active Japan ICT戦略~」について、2012年7月25日に答申した。
 答申では、日本のICTをめぐる環境変化として、「下げ止まらないICT国際競争力」、「解決されないまま山積していく課題」、「激変するICTのトレンドといった環境変化」が指摘された。例えば、「下げ止まらないICT国際競争力」としては、ITUや世界国際フォーラムなどの各種ICT関連指標における日本のランキングの低下、世界市場における日本のICT端末・機器のシェア低下などのICT国際競争力の低下。
 また、「解決されないまま山積していく課題」としては、少子高齢化、財政再建、電力不足、サイバー攻撃や不正アクセスによる個人情報流出等のセキュリティ上の脅威の増大などのさまざまな課題。「激変するICTのトレンドといった環境変化」としては、ICTによって生み出されるトラフィックの急増、ソーシャルメディアの普及によるユーザーのコンテンツ発信力の向上、地上デジタル放送への移行完了による放送・通信が連携した新たなサービス進展への期待などのトレンドや環境変化が指摘されている。
 さらに答申では、これらの指摘を踏まえ、日本が、再生および経済成長を実現し、国際競争力を高めるべく、早急に解決すべき課題として、「少子高齢化対策、全ての世代が元気に社会参画できる環境」、「新産業創出による社会・経済成長」、「ユーザに支持されるアプリケーションやコンテンツの創発」、「非常時でも誰もがつながるディバイドフリーのインフラの強化」、「セキュリティ対策による安全な経済活動の確保」を挙げ、以下の5つの具体的な戦略が発表された。

  • 「アクティブライフ戦略」
    すべての世代の人々がアクティブに社会参画できるICT利活用環境の整備
  • 「アクティブデータ戦略」
    数十兆円規模のデータ利活用市場の創出
  • 「リッチコンテンツ戦略」
    誰もがリッチコンテンツを製作・利活用できるグローバルプラットフォームの実現
  • 「アクティブコミュニケーション戦略」
    堅牢・高性能な重層的ブロードバンドネットワークの展開
  • 「安心・安全/高信頼ICT 戦略」
    世界最高水準のサイバーセキュリティ環境の実現

今後、日本の総力を結集して新たなICT総合戦略を推進することにより、情報通信分野における新事業の創出、日本の経済成長および国際競争力の向上に資することが期待される。

◆オープンデータ流通の促進

 近年、行政や企業が保有しているデータを外部に開示し、誰もが自由に再利用や再配布ができる「オープンデータ」に関する取り組みが活発になってきている。オープンデータの促進により、行政が持つ各種統計データを組み合わせたり、企業など民間が保有しているデータと組み合わせることにより、新しいビジ ネスが生まれることが期待できる。
 日本政府は、積極的にオープンデータを推進する姿勢を示しており、民主党が中心の前政権では、2012年7月に「電子行政オープンデータ戦略」を策定、自民党も引き続き推進していくことに変わりはない。しかし、オープンデータの取り組みは始まったばかりで、課題も多い。例えば、行政機関では、必ずしも各種情報を電子フォーマットで管理しているわけではなく、また、電子フォーマットの場合であっても形式が異なるなど、活用にあたってはさまざまな障壁も存在している。
 それらの課題を解消するため、行政も動き出しており、総務省と経済産業省は、行政情報を「オープンデータ」として公開し、本格的な活用に乗り出し始めている。これらの取り組みでは、ホームページでデータを公開するだけでなく、システムから利用しやすいように共通のAPI(Application Programming Inter face)の策定も行われている。総務省では、分野を超えたデータの流通・連携・利活用を効果的に行うために必要となる(1)情報流通連携基盤共通APIの確立・国際標準化、(2)データの2次利用に関するルール(データガバナンス方式)の策定、(3)オープンデータ化のメリットの可視化等のための実証事業を推進。2012年度は、公共交通、地盤、災害、青果物、水産物の各分野のデータについて、実証事業を行った。また、経済産業省では、オープンデータを提供するサイト「Open Data METI」を開設し、「白書等」「報告書」「統計」等の各種情報を公開している。
 当初は、データの活用に関心がある事業者、団体、個人等に限定して公開していたが、2013年1月から一般向けの公開試験を開始している。さらに、産官学の共同での取り組みとしては、技術面や制度面などさまざまな側面からオープンデータの流通促進の実現に向けた基盤整理の推進を目的として、「オープンデータ流通推進コンソーシアム」が2012年7月に設立されている。
 今後、オープンデータにより、民間において新たなサービスやビジネスの創出が促進され、公共機関では 公共サービスが効率的に提供されるなど、経済の活性化や行政サービスの業務効率化が期待される。

◆接続料算定方法に関する検討状況

 総務省は、モバイル接続料算定のさらなる適正性向上に向け、算定方法およびその検証の在り方を検討するため、「モバイル接続料算定に係る研究会」を2012年10月に設置した。
 携帯電話事業者の接続料算定に関する枠組みについては、これまで市場シェア10%を超える携帯電話事業者の通信設備を「第二種指定電気通信設備」に指定し、指定設備を設置する事業者(第二種指定電気通信事業者)に接続会計の整理や収支の公表を義務付けてきた。また、「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」を策定し、算定方法に関する基本的な考え方を示すなど適正化が図られてきた。しかし、近年のモバイル市場の環境変化を踏まえ、情報通信審議会は「ブロードバンド普及促進のための環境整備の在り方」において、「ガイドラインに基づく接続料設定についてその適正性と推進状況を検証することが適当」とする答申(2011年12月)を公表した。研究会ではこの指摘を踏まえて、ガイドライン見直しの参考とするべく検討が進められた。
 2013年2月22日に公表された報告書案では、「算定根拠として、新たに、各機能別に、設備区分ごとに費用、利潤、需要を整理した様式を追加することが適当」、「営業コストの接続料原価への算入は、設備の安定的な運用または効率的な展開に必要なコストに限定し、その必要性を総務省に説明、総務省では設備の関連性につき十分に検証を行う」旨など、既存ガイドラインよりも詳細に規定している。
 この他、同研究会では、データ接続料の算定に係る課題についても検討が行われたが、さらなる調査・検討が必要と判断されたため、報告書案では、必要な検討ポイントが指し示されるにとどまっている。

◆周波数再編後の700MHz帯利用促進

 NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話(*)、イー・アクセスの4社は、2012年12月3日、LTE方式の移動通信システム用(特定基地局)に割り当てられた700MHz帯に関し、同帯域を現在利用している事業者の移行を促進することを目的として、「一般社団法人700MHz利用推進協会」を設立したと発表した。
 4社が2012年6月に総務省から割り当てを受けた700MHz帯については、既存免許人である放送事業者がテレビ用の映像中継に使う「FPU(Field Pick up Unit)」や業務用の音声収録に使う「特定ラジオマイク」の2つのシステムで利用している。割り当てられた700MHz帯を新たに携帯電話事業に利用するためには、これら2つのシステムを別の周波帯数へ移行させる必要があるが、従来の方式で周波数帯を移行する場合は、既存無線局がすべて移行した後に、携帯電話事業者が基地局を整備、移行費用は全額、既存免許人の自己負担となるため、移行終了までに 10年程度の期間が必要となる。2011年の電波法一部改正により、周波数移行に要する費用を、新たに電波の割り当てを受ける者が負担する制度が導入され、新スキームでは携帯電話事業者が移行費用を負担し、既存無線局を順次移行させながら基地局を整備、サービスを順次開始する。この新スキーム導入により、従来方式と比べ、移行終了までに必要な期間の短縮が見込まれる。
 協会には携帯電話事業者のほか、FPUや特定ラジオマイク関連メーカー、団体などが賛助会員として参加している。メーカーから既存システムのソフトウェア改修により周波数の移行が可能なのか、機器の買い替えが必要なのかなど、移行のための具体的な実 施手段の聞き取りを行い、移行に要する費用算定を行う。
 また、特定基地局の開設・運用に伴い発生する恐れのある地上デジタルテレビ放送の受信障害の防止や障害発生時の解消対策を講じる必要があり、協会では受信障害の防止対策も進めることになる。

*KDDI株式会社と沖縄セルラー電話は、地域ごとに連携する法人であることから、両社を代表してKDDI株式会社が協会の正会員となっている。

◆スマートフォン時代における安心・安全な利用環境の在り方

 総務省は、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の配下に「スマートフォン時代における安心・安全な利用環境の在り方WG」を、2012年12月に設置した。
 スマートフォンの急速な普及に伴い、利用者に関する情報がインターネットなどを通じてグローバルに流通・蓄積されるケースが増大している。情報の流通・蓄積によりサービスの利便性が高まる一方、サービスプロバイダー等が収集した自身の情報がどのように利用されているのか、利用者自身が把握することが困難となったり、流通・蓄積されている情報の確認や修正、削除などの利用者によるコントロールが不十分であるなど、懸念も高まっている。
 また、スマートフォンの利用者層も広がる中、料金体系やデータ通信速度の表示、端末と通信サービスのセット販売の在り方など、契約時の説明等に関する苦情も増加、さらにはアプリの利用に伴う新たな課題への対応も求められるなど、安心・安全な利用環境整備の必要性が高まっている。WGではこれらの課題に対応するため、以下の事項を中心に議論し、2013年7月を目途に最終取りまとめ予定である。

(1)スマートフォンにおける利用者情報に関する課題への対応

  • 「スマートフォン利用者情報取り扱い指針」に基づく業界団体・事業者による自主的取り組み推進のフォローアップ
  • 第三者によるアプリ評価検証の在り方等、プライバシーに係る課題解決を支援するための仕組み
  • スマートフォンを中心としたオンライン上の行動

 ターゲティング広告、アドネットワーク等の発展を踏まえ、「配慮原則」(*)の見直しの必要性について検討

*主に個人情報保護とプライバシー保護の観点から、事業者に一定の配慮を求める原則

(2)スマートフォンサービス等の適正な提供の在り方

  • スマートフォンを中心に、通信料金、速度表示、セット販売の在り方、電波や端末の品質、契約時の説明等に関する利用者からの相談事例等も参照しつつ、契約前の広告から契約時、契約後の対応の在り方および利用者リテラシー向上策について検討

(3)スマートフォンのアプリ利用における新たな課題への対応

  • 従来のネット利用におけるさまざまな課題(ネット依存、迷惑メール等)のスマートフォン環境下における課題と対応
  • コミュニケーションサービス、ソーシャルサービス(SNS等)における青少年利用に関する課題と対応について検討