1.電気通信事業の規制動向

◆ICT国際競争力強化・国際展開に関する懇談会

 総務省は2013年12月2日、「ICT国際競争力強化・国際展開に関する懇談会」を発足させた。
 日本は光ファイバーの契約割合、単位速度当たり料金、超高速ブロードバンド利用可能世帯の比率、第3世代携帯電話比率などの通信インフラ面では世界最高水準である。 これまで培ってきたICTの強みを活用し、国際展開を推進することで、日本経済の成長と国際社会への貢献を同時に達成することが可能であるが、相対的な国際競争力はここ10年、低下の一途をたどっている。例えば、産業の国際競争力は2013年度時点で24位、世界経済フォーラムが毎年公表しているICT国際競争力ランキングにおいては、 ここ数年20位前後に低迷し、2013年度時点では21位である。また、Google、Amazon、Facebook 等の米国企業が主導するICT関連サービスのグローバル市場環境は大きく変化し、 近年では中国や韓国企業の台頭も著しい。このような状況に陥った背景として、以下の点が挙げられている。
 ①トータルな戦略性が欠如していること、②国内市場偏重の市場構造であること、③ビジネスモデルの創造とエコシステム作りが下手であること、④意思決定のスピードが遅いこと、⑤マーケティング戦略が欠如していること、⑥技術の出口戦略がないために、世界的に技術のプレゼンスが低下し、標準化にもコミットできていないこと、⑦起業環境整備が遅れていること、 などである。
 こうした状況を打開するため、 日本のICT国際競争力の強化および国際展開に関する方策等の検討が行われ、 2014年5月13日に中間とりまとめ「ICT国際競争力強化・国際展開イニシアティブ」が公表された。中間とりまとめでは、以下の施策を推進し、2020年までに情報通信分野において現在の売上高の5倍となる17.5兆円を目指すことが提言された。

  • ビジネス環境整備(日本発グローバル展開モデルの構築、「ジャパンブランド」の確立、ICTビジネス基盤の整理)
  • ICT人材育成・活用(日本人材の育成・活用、外国人材の育成・活用)
  • 技術外交の強化・展開(技術外交戦略の推進、国際的に調和した環境整備、 トップセールス連動型の展開や政府間対話の強化)
  • 「官民オールジャパン体制」の構築(「官民ミッション」の派遣(トップセールス)、「官民ローカル・タスクフォース」の形成、ICT国際競争力強化・国際展開に資する資金供給等の仕組みの整備)

 今後、本懇談会およびその下に設置されたワーキンググループで検討が行われ、最終報告が2014年6月に取りまとめられる予定である。

◆「2020年代に向けた情報通信政策の在り方」の検討

 総務省は、「グローバル時代におけるI CT政策に関するタスクフォース」合同部会の最終とりまとめを踏まえ、「2015年頃を目途に全世帯でのブロードバンド利用の実現」を目指して取り組むべき施策を“「光の道」構想に関する基本方針”として発表した(2012年12月)。これに則り、NTT東西に係る「機能分離」の実施や、子会社等との一体経営への対応、業務範囲の弾力化に係る制度整備を行った。
 「基本方針」においては、NTT東西における規制の遵守状況、 料金の低廉化や市場シェア等の動向、「光の道」構想に関する取り組み状況等について、毎年度、継続的なチェックを行い、制度整備の実施後3年を目途に、その有効性および適正性について包括的な検証を行うことが盛り込まれた。そして、検証の結果、仮に既存の市場構造や考え方を前提とした競争ルールに制度的課題が生じていると認められるような場合には、競争ルール全体の枠組みの見直し等について検討を行うこととなっていた。
 また、総務省は、電気通信市場における公正競争確保の観点から講じてきた各種の競争セーフガード措置について、その有効性・適正性を検証し、当該措置が市場実態を的確に反映したものとするために行ってきた「競争セーフガード制度」を改め、上述の継続的なチェックを併せて行う「ブロードバンド普及促進のための公正競争レビュー制度」を毎年行ってきた。
 これらに加え、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」においては、「世界最高水準のIT社会の実現」のための世界最高レベルの通信インフラの整備が掲げられ、通信インフラを利用するあらゆる産業の競争力強化を図るため、 料金低廉化、サービス多様化のための競争政策の見直しを行い、具体的な制度見直し等の方向性について、2014年中に結論を得ることとされた。
 以上を踏まえ、2020年代に向けた情報通信の発展の動向を見据えた上で、経済活性化の観点から、情報通信基盤を利用する産業の競争力強化のための電気通信事業の在り方について検討するとともに、国民生活の向上の観点から、 情報通信基盤の利用機会の確保や安心・安全の確保のための電気通信事業の在り方について検討するため、総務省は、情報通信審議会に「2020年代に向けた情報通信政策の在り方─世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて─」について諮問した。これにより「2020-ICT基盤政策特別部会」が2014年2月に同審議会に設置され、同年11月中に答申をまとめることとなった。

◆電波利用料の見直し

 電波利用料制度とは、不法電波の監視や周波数の効率的な利用のための研究開発等、電波の適正な利用の確保に関し、無線局全体の受益を直接の目的として行う事務費用(電波利用共益費用)を、無線局免許人の間で公平に分担する制度で、1993年4月に導入され、3年ごとに見直しが行われている。
 総務省は、2014年度から2016年度に適用する次期電波利用料を検討するため、2013年3月から、「電波利用料の見直しに関する検討会」(座長:多賀谷一照、獨協大学法学部教授)を開催し、同年8月、「電波利用料の見直しに関する検討会 報告書∼電波利用料の見直しに関する基本方針∼」(以下、「基本方針」)を公表した。
 基本方針では、携帯電話は、先の東日本大震災においても、通信基盤の迅速な復旧や、新たな災害対策の取り組みを行うなど、非常時対応に費用負担を負っていることを踏まえ、「国民の生命・財産の保護に著しく寄与」に係る特性係数(注)を携帯電話にも適用すべきであるとされた。また、携帯電話システム等を利用するスマートメーターやM2M(Machine to Machine)システム等は、ICTインフラとして普及促進する観点から、戦略的に電波利用料の負担を大幅に引き下げることが適当とされた。
 2014年1月、総務省は、基本方針に基づき、次期電波利用料額を算定する基本的な手順等を取りまとめた「電波利用料の見直しに係る料額算定の具体化方針」(以下、「具体化方針」)を公表した。2014年2月14日、具体化方針に基づいた電波法改正案が2014年通常国会(第186回常会)に提出され、衆参両院での審議を経て、同年4月16日に成立した。

(注)電波利用料額の算定の過程において、各無線システムが使用する帯域幅に応じて負担額を配分する際に、一部の無線システムについては、無線局の特性を考慮して特性係数(軽減係数)を適用する。「国民の生命・財産の保護に著しく寄与」に係る特性係数は1/2、つまり帯域幅に対して1/2を掛けて計算される。

◆ICTサービスの安心・安全に向けた取り組み

 2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」に盛り込まれた「世界最高水準のI T社会の実現」のためには、「世界最高レベルの通信インフラの整備」が必要である。そのためには、「料金低廉化・サービス多様化のための競争政策の見直し」が必要であるとともに、これと車の両輪をなす消費者行政についても、2020年代を見据えた対応が必要であるとされた。
 このような観点から、総務省は、消費者保護ルールの充実等、直面する課題への対応をはじめ、 トラブル等を未然に防止しつつ、ICTの安心・安全な利用環境の整備を推進するため、2014年2月に、「ICTサービス安心・安全研究会」を設置した。検討事項は以下のとおりで、このうち(1)については、同年6、7月を目途に中間取りまとめを行う予定である。

(1)消費者保護ルールの見直し・充実
   (説明義務等・クーリングオフ・販売勧誘活動の在り方)
(2)ICTによる2020年代創造のための青少年保護・育成の在り方
(3)その他の事項
 ①ICTサービスに係る利用者情報の適正な取り扱いの在り方と普及促進
 ②ICTサービスの進展に応じた新たな課題(違法・有害情報対策の在り方等)

 また、わが国で提供されているインターネット接続サービスは、電気通信技術の進展に伴い通信速度が高速化し、利用者にとって通信速度等のサービス品質がその選択の重要な要因となっている一方、広告や販売勧誘の際に示される最大通信速度(ベス トエフォート)の表示は、必ずしも利用者が実際に期待し得る通信速度を踏まえている状況ではない。また、事業者やメディア等により独自の調査結果が公表されているものの、基準にばらつきがあり、比較が困難な状況となっている。そのため、利用者が適切にサービスを選択しづらく、利用者の利便を損なう恐れが高まっている。
 こうした状況を踏まえ、利用者が適切な情報に基づき契約を行うことが可能な環境を整備するため、実効速度(利用者が実際に利用できる通信速度)等のサービス品質計測等の在り方や必要な方策について検討することを目的とし、総務省は2013年11月、「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」を設置した。
 2014年4月に公表された第一次報告書では、品質計測の実証実験の在り方や、計測結果を利用者に情報提供するための具体的手法等が盛り込まれた。

◆多様化・複雑化する電気通信事故の防止の在り方

 総務省は、2013年11月15日、「多様化・複雑化する電気通信事故の防止の在り方に関する検討会」(以下、「検討会」)が取りまとめた報告書を公開した。
 IP化・モバイル化等により、サービスは多様化・高度化を遂げたが、これに伴い、事業者のネッ トワーク・通信設備の管理は複雑化し、「継続時間数2時間以上」かつ「影響利用者数3万人以上」とされている「重大事故」が、 2012年度に17件、最近5年間では毎年15件以上発生している。 また、影響利用者数では、2011年度において100万人以上の事故が約半数を占め、継続時間数別では10時間以上の事故が5割超となる等、事故自体も大規模化・長時間化している。
 2013年4月から開催された検討会では、事故発生の各段階で必要な措置が適切に確保される環境を整備し、電気通信事故の防止を図ることを目的に、「事故の事前防止」「事故発生時の対応」「事故報告制度」「事故報告後のフォローアップ」の在り方が検討された。提言では、ネットワークを熟知している各事業者の自主的な取り組み(自律的・継続的なPDCAサイクル)を基本とし、国は事業者の取り組みが適切に確保・促進されるための環境整備を行うとしている。

<提言の主なポイント>

  • 事業者の自主基準である「管理規定」等に、設備の「設置・設計」「工事」「維持・運用」のライフサイクルごとに、事故防止に必要な具体的な取り組みを取り入れる。
  • 現場レベルの「電気通信主任技術者」に加え、経営レベルの「安全管理責任者(電気通信安全統括管理者)」の選任を義務化する。
  •   「電気通信主任技術者」については、技術変化の著しいI CT分野で担うべき役割を適切に図れるよう「業務範囲」を明確にし、「講習制度」を創設する。
  • 「管理規定」に基づく、 事業者の自主的な取り組みが有効に機能しない場合、 国が安全・信頼性の「事後的な改善措置」を担保する。
  • 各サービスとも基準が一律(「継続時間数2時間以上」かつ「影響利用者数3万人以上」)となっている「重大事故」について、サービス区分を設け、区分ごとに基準を定める等、サービスの多様化に応じた「事故報告制度」の見直しを行う。
  • 事故報告内容について、検証の透明化や専門的知見を活用することが、再発防止の観点で有効との考えから、第三者検証を行う。
  • 社会的影響力の大きいサービスを提供する回線非設置事業者について、事故発生時の影響度に鑑み、回線設置事業者と同様の規律(「技術基準」「管理規程」「電気通信安全統括管理者」「電気通信主任技術者」)を適用する。

 今後、本報告書を受けて、総務省では関係規定の整備等を進めていく予定である。