2.ICT市場の動向

◆モバイル決済の進展(+NFC)

 モバイル決済とは、モバイル端末を活用した決済サービスの総称である。スマートフォン等の端末にクレジットカード等の情報をあらかじめ登録しておくことで、決済時にはカードの読み取りや番号入力を行うことなく、モバイル端末のみで処理を完了できることが利点となっている。
 従来の電子マネーや「GMO Pallet」などに続き、2014年10月に「Apple Pay」(米国)、同年12月には「LINE Pay」が開始されたほか、2015年3月には「Samsung Pay」(米国、韓国)が発表され、注目を集めている。
 また、非接触ICカードの規格の一種であるNFC(Near Field Communication)も、「Apple Pay」等の一部のモバイル決済に取り入れられている。対応端末も、スマートフォンだけでなく、2015年4月発売のApple Watch等のウエアラブルデバイスにも搭載されており、今後の期待が高まっている。
 一方、店舗を対象としたクレジットカード活用型のモバイル決済サービスとして、「PayPal Here」「Coiney(コイニー)」「楽天スマートペイ」「Square」なども広がっている。スマートフォンに小型の専用リーダーを接続することで、クレジットカード決済を実現するもので、従来のクレジットカード決済の設備を導入することが難しかった小規模店舗や移動型店舗、個人を中心に利用が進んでいる。

◆スマートフォン市場の動向

 2013年9月からNTTドコモがiPhoneの販売を開始し、2014年は国内主要3キャリアが年間を通してiPhoneを発売した初めての年となった。
 年間の国内スマートフォン出荷台数は2,770万台で、前年比5.3%の減少となる中、アップルは1,648万台(前年比29.3%増)、シェア59.5%(同15.9ポイント増)を占め、2012年以降3年連続での1位となった。iPhone5、6シリーズを投入して販売の好調を維持したことや、下取りのインセンティブが作用したことが主な要因とみられている(2015年2月MM総研調べ)。
 OS別にみても、2014年はiOSが59.5%を占め、Androidを逆転することとなった。
 一方、2014年の世界のスマートフォンの出荷台数は12.8億台となり、初めて10億台を超えた。Android OSを搭載したスマートフォンは10億台に載せ、シェアは81%となった(2015年1月Strategy Analytics調べ)。
 AndroidとiOSが圧倒的に優位の中、マイクロソフトは2014年4月にノキアの携帯電話事業を買収した。2015年3月にスペイン・バルセロナで開催された展示会「Mobile World Congress」ではWindows Phoneの出展が見られ、次期Windows Phoneの動向も注目されている。その他、Mozillaの「Firefox OS」、Canonicalの「Ubuntu」、Jollaの「Sailfish OS」、TizenAssociationの「Tizen」などのモバイルOS搭載端末も販売が始まり、日本国内では、KDDIがFirefox OS搭載スマートフォン「Fx0」を販売開始している。
 米調査会社IDCが発表した2014年第3四半期のスマートフォン出荷台数では、1位のサムスンがマーケットシェア1位を保持したものの、大幅にシェアを落とす一方で、中国の小米(3位)が急伸した。アジア市場などで廉価なモデルの販売が伸びていることが背景となっている。
 また、2015年5月のSIMロック解除の義務化を見据え、ソニー(VAIO)、富士通、京セラといった国内メーカーがSIMフリーの「格安スマホ」を投入している。今後、シニア層を中心にMVNO事業者によるフィーチャーフォンのスマートフォンへの移行も進むと考えられる。

◆マルチデバイスの動向

 マルチデバイスは、複数の端末(デバイス)によって、ネット上のサービスやコンテンツを共有することをいい、ネット上のサーバー(クラウド)を利用して、複数のデバイス間でコンテンツを同期し、ユーザーが使いたい時や場所に応じてデバイスを変えて利用できるようにすることをいう。
 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクとも、携帯電話のメールをPCやタブレットから利用するサービスや、映像・音楽・電子書籍コンテンツを複数端末間で共有するサービスを既に提供している。
 また、アップルは、2015年4月に腕時計型のApple Watchを発売し、マイクロソフトも2015年後半に発売予定のOSでマルチデバイス対応をするなど、通信事業者、ベンダー、プロバイダーがこぞってマルチデバイス対応を進めている。
 2014年の世界のタブレット端末の出荷台数は2億2,960万台で、前年比4.4%の増加となった。メーカー別ではアップルが最も多く、27.6%のシェアを占める(出展:IDC Worldwide)。
 今後、IoT(Internet of Things)やビッグデータの活用など、ICTの利便性の向上に伴い、情報端末のウエアラブル化やBeaconなどの端末の多様化も一層進むと見込まれている。

◆Eコマース(O2O)の動向 / オムニチャネル

 日本国内の2013年の個人向けEC(電子商取引)の市場規模は11.2兆円(前年比17.4%増)、EC化率(全商取引における電子商取引の割合)は3.7%(前年比0.6ポイント増)と成長を続けている(経済産業省 調査報告より)。
 スマートフォンの普及により、商品に関する情報収集や購入が、時間や場所を問わず容易になったことで、個人の購買プロセスも変化している。事前にインターネットで評価などを確認した後に店頭で購入する割合が増加しており、企業側もインターネットサービスを通じて店頭へ誘導するO2O(Online to Offline)を展開している。
 一方、店頭で商品を調べて、実際の購入はインターネット上で行う「ショールーミング」と呼ばれる行動も増加している。実店舗にとっては販売減少につながるリスクがあるため、前述のO2Oに加え、顧客が好きなときに好きなところで商品を購入できる「オムニチャネル」が重要視されるようになってきている。セブン&アイ・ホールディングスやイオンをはじめ、さまざまな事業者が、リアル店舗、インターネット、イベント等、あらゆる販路(チャネル)を統合し、顧客接点の強化を図っている。
 また、Amazonは2015年2月、米国に実店舗をオープンした。商取引におけるオンライン・オフラインの融合はますます進み、競争激化が続くとみられている。

◆4G、LTEの動向

 LTE(Long Term Evolution)は、3G(第3世代移動通信システム)を発展させた規格として“3.9G”と位置付けられていたが、国際電気通信連合(ITU)が4Gと呼称することを認めており、各国の通信事業者は、LTEを4Gのサービス名称で提供している。
 LTEの理論上の最大受信速度は326Mbps、最大送信速度は86Mbpsとなっており、家庭向けブロードバンド回線に匹敵する通信速度を確保している。2014年11月発行の『エリクソン・モビリティレポート』によると、全世界でのLTEモバイル契約数は、2013年に2億、2014年に4億となっており、2020年には35億の加入が予測されている。
 このLTEを活用したVoLTE(Voice over Long Term Evolution)は、LTE回線でIPデータ通信による音声通話を実現する技術である。コンテンツプロバイダーが提供するVoIPサービスとの違いとしては、通信事業者が一定の通話品質を確保し、緊急通報などにも対応できることが挙げられる。通信事業者は音声通話を回線交換網で提供してきたが、VoLTEは従来の音声通話に比べ、発着信の接続時間や通話の遅延時間が短縮され、高音質の音声通話が特徴だ。2012年8月に米国MetroPCS、韓国SK TelecomとLG U+がVoLTEの商用サービスを開始し、日本国内ではNTTドコモが2014年6月に、KDDIとソフトバンクモバイルが2014年12月にサービスを開始した。
 4Gとして正式にITUが定めるIMT-Advancedの規格に準拠するのは、LTE-AdvancedとWirelessMAN-Advanced(WiMAX2)である。LTE-Advancedでは特定の周波数を組み合わせるキャリアアグリゲーション(CA)という技術が用いられ、広帯域化により高速な通信を実現する。例えば、FDD-LTEの周波数帯域幅は最大20MHzであるが、最大100MHzまでの周波数の組み合わせが可能であり、同技術を用いて、1Gbpsを超える通信速度も実現できる。2013年6月には、韓国SK Telecomが初めてLTE-Advanced(最大150Mbps)の商用サービスを開始した。
 日本国内の通信事業者の動きとしては、KDDIが2014年夏モデルからLTE-Advancedを導入した。NTTドコモも2015年3月からLTE-Advancedを提供開始しており、ソフトバンクモバイルも実証実験を行っている。

◆ウエアラブルデバイスの可能性

 近年、ヘルスケア分野やスマートフォンの機能を拡張・補完する分野で、さまざまなウエアラブルデバイスが製品化されている。ヘルスケア分野では、リストバンド型デバイスに加速度センサーや赤外線センサーを内蔵し、歩数、活動量、睡眠時間や脈拍等を測定するとともに、BluetoothやWi-Fiを介して、スマートフォンやPCに、さらにはクラウド上に蓄積し、運動不足や睡眠不足、ストレス度合などを自ら把握し、健康管理に役立てるもので、世界的な健康志向の高まりから成長が期待されている。
 スマートフォンを機能拡張・補完する分野では、腕時計型やメガネ型などがあり、腕時計型では、スマートフォンが受信したメールやSNS等の通知を、デバイス上で即座に確認することができたり、NFC(近距離無線通信)と連携して、電子マネーやスマートキー、電子チケットのための個人認証ができるツールとしての活用が進められている。
 Google Glassに代表されるメガネ型では、目を向けた対象を自動認識して視野の一部に情報を重ねて表示したり、写真や動画を撮ってすぐにネットに送ることができるツールとして展開されたが、顔を向けただけでSNS上の情報と照合されて即座に個人が特定されてしまうことから、着用者の入店を禁止するレストランも現れるなど、プライバシー問題が懸念されている。そのため、当面は、航空会社の客室乗務員が着用して乗客を迎えるサービスや、ハンズフリーによる効率的な設備運用・保守に利用するなど、利用範囲が限定される業務用を中心に普及が進むと考えられている。

◆復興支援とICT

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は、太平洋岸を中心とする東日本全体に甚大な被害をもたらした。被災地域の復旧、復興のための取り組みは官民を挙げて進められているが、震災発生から4年が経過するも、いまだに避難者数は約22万9千人(2015年2月現在)に上り、復旧、復興への道のりはまだ遠い状況にある。
 こうした中で、総務省や電気通信事業者等を中心に、ICTを活用した復興支援が継続的に進められている。総務省は2011年度から毎年、補助金交付を通じて、被災自治体が抱える課題解決のための被災地域情報化推進事業を支援している。2015年度の同推進事業には次の3つが挙げられている。

① 東北地域医療情報連携基盤構築事業
② 復興街づくりICT基盤整備事業
③ 被災地域テレワーク推進事業

 KDDIにおいては、被災者の通信環境を確保するために、仮設住宅近くに新たなau携帯電話基地局を建設し、通信エリアの拡充を図っている。加えて、東日本大震災の教訓を生かした災害対策の一環として、「基地局バッテリーの24時間化」および通常の商用電力、太陽光発電、蓄電池の3つの電力を使い分ける「トライブリッド基地局」を導入している。
 その他、基幹ネットワークの増強(4ルート化)やau災害復旧支援システムの導入、総務省および海上保安庁との協力による船舶に設置した携帯電話基地局の実証実験、被災地の人々の情報不足の解消や住民間のコミュニケーション支援のためのタブレット端末の提供などの多様な取り組みを行っている。また、2014年4月以降、福島第一原発事故に伴う原発周辺11市町村への避難指示が徐々に解除されてきているため、それに併せて同解除区域内の携帯電話エリア環境およびブロードバンド利用環境等の整備も進めている。
 2012年7月、復興支援活動強化のためKDDI社内に設立された「復興支援室」では、被災地の市役所や行政機関等への出向活動を通じて、同社が持つ豊富なICT利活用の経験・ノウハウを提供しながら、地域住民と協力して被災地の復興に取り組んでいる。

◆ビッグデータ

 米調査会社IDCによると、国際的なデジタルデータの量は飛躍的に増大しており、2011年の約1.8ゼタバイト(1ゼタバイトは1兆ギガバイト)から2020年には約44ゼタバイトに達すると予想されている。
 日本国内の2013年末のインターネット利用者数は1億44万人、人口普及率は82.8%に達している(2014年版情報通信白書)ほか、モバイルインターネットの基盤となるスマートフォンの2014年末の国内契約数は6,544万件に拡大している(MM総研報道発表資料)。
 また、データの収集を可能とするセンサーも小型化、低消費電力化、低価格化により普及が進み、2010年代後半には年間1兆個の出荷を目指す企業も登場している。さらに、ハードウエアの性能も、CPUの速度、ストレージの容量、ネットワークの速度は日々進化し、コンピュータの演算速度の向上と相まって、より大容量のデータを伝送・蓄積し、より短時間での分析が可能となっている。
 このように、ICTの進化によってデジタルデータを大量に生成・流通・蓄積する環境が整いつつある中、生成・流通・蓄積された「ビッグデータ」を経営資源として活用し、新産業・サービスの創出やマーケティング活動、社会的課題の解決に役立てようとする動きが活発化している。人・時間・場所に応じた商品の推奨や、気象条件を最適化した農作物の育成、医薬品の開発、建造物の老朽化の検知などが進められている。
 流通するデータの中には、個人の位置情報や健康状態に関するものなどパーソナルデータも含まれている。データ活用に関する社会の認知度が高まってきたことから、相次いでパーソナルデータを活用したサービスの実証または開始に乗り出している状況にある。
 今後、日本でデータ活用を円滑に進めていく上でも、パーソナルデータの活用と保護のバランスをどのようにとっていくかが重要な課題である。2014年6月24日のI T総合戦略本部にて「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」が決定された。今後、制度の改正により、生活者の理解も得られた形でのデータ活用が進むことが期待されている。

◆M2Mの動向

 モノのインターネットとも呼ばれるIoT(Internet of Things)の一形態がM2M(Machine to Machine)である。M2Mは、「機械」と「機械」が人手を介することなく、相互に通信を行うことをいう。情報通信技術の進展や各種デバイスの小型化、省電力化により、従来、スタンドアローンであった「モノ」や「機械」がより多くインターネットにつながるようになってきた。相互に通信することで、離れた「モノ」や「機械」の状態を容易に知ることができたり、遠隔操作できたりするようになってきている。
 M2Mとして、これまで、商用車や自動販売機に組み込まれたデバイスとクラウド上にあるサーバーを、インターネットを介して接続し、運行管理や在庫管理データの収集を行うことなどが実用化されてきたが、昨今では、「ビッグデータ」が価値の源泉となり得るとの考えから、より多くのモノを接続し、より多くのデータを収集することに注目が集まっている。そのために、機器の接続方法を標準化し、より多くの機器を接続させようという動きがある。
 oneM2Mは、世界各国のテレコムSDO(通信業界が中心の標準化機関)が中心となって推進するコンソーシアムで、2014年8月に技術標準の初版が発行された。単に、つながる、使えるというだけでなく、セキュリティー、アクセス制御、課金といったビジネス上必要となる機能も利用できるように考えられている。
 機器同士を直接つなぐための標準化の動きも活発になっている。家電メーカー等が中心となって進めるAllSeen Allianceでは、メーカーを横断して機器同士が接続できるよう、AllJoynというオープンソースの規格を推進している。これにより、テレビでエアコンや電気・ガスのモニターができたり、スマートフォンで家電をコントロールできたりする。すでにスマートフォン用のワイヤレススピーカーに採用された商品も発売されている。
 他にも、OMA(Open Mobile Alliance)やOIC(Open Interconnect Consortium)がM2Mの標準化に向けて作業を進めている。

◆Web & Automotive

 自動車のナビゲーションシステムがクラウドにある渋滞情報を取得したり、オンラインで最新の地図のダウンロードができたり、また、米国では車内でインターネットラジオが聴けたりと、自動車がネットにつながる、いわゆる「コネクテッド・カー」が増えてきている。米AT&Tは車向けアプリやサービスをまとめる新ブランド「AT&Tドライブ」を2014年1月のCES(Consumer Electronics Show)で新たに発表した。スマートフォンが普及し、いつでもどこでもWebが使えるようになった今、自動車の中でもインターネット=Webを使いたいというニーズが生まれるのも自然な流れだ。
 しかしながら、パソコンにディスプレー、キーボード、マウスというインターフェースを前提にしてきたWebの技術を、そのまま自動車にも適用するのは使い勝手も良くないし、危険極まりない。
 そこで、Webの利便性を自動車でも享受でき、かつ安全性も保てるような仕組みの検討が始まっている。Web技術の標準化を行っているW3C(World Wide Web Consortium)では、2013年2月に、Automotive and Web Platform Business Groupというグループが発足し、自動車メーカーやサプライヤー、IT関連企業などが参加して、自動車の中でWeb技術を使うための標準化などの検討が開始された。また、2015年2月にはAutomotive Working Groupが発足し、具体的な標準化仕様の策定を開始した。具体的には、自動車が持っている車速、トリップメーター、燃費などの走行情報を取得するためのインターフェースや車内のエアコンの調節をスマートフォンから行うためのインターフェース等の標準化が進められる予定である。
 このようなインターフェースが標準化されると、いずれは、デザイン性の優れたダッシュボードのアプリが次々と開発されたり、自宅のパソコンやスマートフォンから自動車の点検を行ったり、今走っている道沿いで一番安いガソリンスタンドを案内してもらったり、といったことができるようになる。
 自動車メーカーは、こうした利便性と同時に、さまざまなインターネットの脅威から安全性を確保したサービスを提供するために研究を進めている段階であり、一部の高級車から順次搭載されていくものと考えられる。

◆MVNOの動向

 MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)は、無線通信ネットワークを自ら保有せず、MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)から借りて移動通信サービスを提供する電気通信事業者を指す。
 また、そのノウハウを基に、MVNE(Mobile Virtual Network Enabler:仮想移動体サービス提供者)として、他のMVNOを支援する事業者もいる。サービスの提供方法はSIM型、モジュール型、MNO再販型の3つに分けられ、個人市場向けにはSIMカードの提供が一般的なサービスとなる。
 2001年10月に、日本通信㈱がPHS回線でMVNOを初めて開始し、以降10年間は法人市場を中心としたデータ通信用途で発展した。また、主に自動車向けテレマティクスや物流管理といった通信モジュールとしても回線数を伸ばしてきた。2011年4月からは、スマートフォンにBWA(広帯域移動無線アクセスシステム)など複数回線への接続機能が標準搭載され、MNOによるMVNO回線が急増した。
 一方、2013年11月頃より音声機能付きSIMカードの提供が増え、同時に廉価端末をセットにした「格安スマホ」として注目を集め、MVNOの認知度は急速に上昇している。
 総務省によると、MNOを除くMVNOの契約者数は2014年12月末時点で892万件に達し、前年同期比で33.2%増加している。同省では販売奨励金抑制やSIMロック解除義務化などをモバイル通信市場の適正化・活性化策として進めており、MVNO契約数を、2016年中にモバイル通信市場全体の10%程度に当たる1,500万契約という目標を掲げている。

◆サイバーセキュリティ

 2000年代に入り、政府機関や自治体、大手企業などのホームページが改ざんされるなどの攻撃が多発している。こうした攻撃は巧妙化しており、対応策を検討するため、2005年4月には内閣官房情報セキュリティセンター(現NISC:内閣サイバーセキュリティセンター)が、2005年5月には情報セキュリティ政策会議が内閣に設置され、2006年には第1次情報セキュリティ基本計画が、2009年には第二次セキュリティ基本計画が策定された。
 その後も、企業や政府への標的型攻撃によるウィルス感染が発覚し、電力、ガスなどの重要インフラへの攻撃が増加するなど、増大するセキュリティ上の脅威に鑑み、政府のサイバーセキュリティに関する役割や責任を明確にし、体制や機能を強化することを目的に、2014年11月に、サイバーセキュリティ基本法が衆議院本会議において可決、成立した。
 同法は、国に対し「サイバーセキュリティに関する総合的な施策を策定し、および実施する責務を有する」と規定しており、官房長官をトップとした省庁横断の組織としてサイバーセキュリティ戦略本部が設置された。同本部は、セキュリティ戦略の策定や、内閣に対する、行政各部の指揮監督に関する意見具申などを行うこととされている。
 サイバーセキュリティ戦略本部では、2015年2月に初会合を開催し、同年6月には体制強化や国際連携の推進を盛った新戦略をとりまとめる方針である。

◆ロボティクスの進展

 ロボティクスとは、ロボット工学とも呼ばれ、センサー、メカトロニクス、知能処理などの技術要素を総合してロボットの設計等を行う技術である。従来、工場等の特定環境で同じ作業を繰り返す産業用ロボットが広く商用化されてきたが、近年、コンピューターの急速な小型化・高性能化やクラウドの活用により、知能処理技術の応用が進み、人と同じ環境で、さまざまに変化する周囲状況を把握し、自ら判断して動作する自律型ロボットの開発や商用化が進んでいる。
 代表的な商用化例では、米iRobot社の家庭用掃除ロボットRoomba(ルンバ)が、2013年に日本国内で出荷累計台数100万台を超えた。これには、同社が開発した、地雷を探査・除去するための人工知能「AWARE」が採用されている。
 自動車の分野では、米Googleが、米国国防高等研究計画局(DARPA)主催のロボットカーレースに優勝したスタンフォード大学と共同で、2009年から自律走行車の開発、公道での走行実験に取り組んでおり、ドライバー不要の完全自律走行車を2020年頃に販売する見込みである。ここでは、レーダー、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、GPS、カメラからのデータを解析し、周囲環境を即時自動認識することで実現を図る。
 人型ロボット分野では、ソフトバンクモバイルが仏Aldebaran Robotics社と共同開発した「Pepper」を2014年6月に発表。2015年2月27日から開発者向けに販売を開始した。「Pepper」は、クラウドをベースとして、最新の音声認識技術や人の表情や声のトーンから人の感情を推定する感情認識機能を搭載している。人との自然なコミュニケーションを可能とするよう設計されており、同社店頭の接客等にも利用されている。
 また、2015年6月には、タカラトミーとNTTドコモが共同開発した、自然な会話が楽しめるコミュニケーションロボット「OHaNAS」(オハナス)を発表(発売は10月)。NTTドコモの「しゃべってコンシェル」技術を応用した対話機能を有している。知能処理技術の進展に伴い、さまざまな自律型ロボットと人との共存が今後も進んでいくものと予想される。

◆AI(人工知能)の活用

 AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間の思考に類する機能を再現したソフトウエアである。AI研究の目的は2つあり、脳全体をコンピューター上に再現しようとするものと、人間の特定の知的活動をコンピューターに代替させようとするものである。前者は「強いAI」と呼ばれるもので、脳の解明と並行して1960年代から研究が進められている。後者はサービスとして既に活用されており、学習や推論、音や画像の認識といった処理により、利用者の利便性を高めている。
 近年、AIが再び注目を集め出したのは、2006年に脳科学に基づくニューラル・ネットワークを応用したディープ・ラーニングという手法が提案され、成果を挙げるようになったことが一つの要因と考えられる。この手法は、多層構造のニューラル・ネットワークを用いて、データ全体を定義できるような特徴を効率良く探し出すことができる。
 AIのサービスへの活用方法は3つある。1つは、複数種類かつ多量のビッグデータを人間の手をかけずに解析する用途である。2つ目は、スマートフォンの急激な増加も伴って、音声認識や画像認識、エージェント・サービスによってインターフェースを変革している。3つ目はロボットへの応用であり、自発的に家事を行う家電製品や無人航空機(ドローン)などが開発され、物理的にも人間の作業を代替することが期待されている。