「FUTURE GATEWAY」

KDD research atelier がこれまで培ってきた技術を生かしながら、新しいライフスタイルを実践する人々とともに、これからのスタンダードを作っていくための共創イニシアチブです。
このイニシアチブをゼロから企画し、立ち上げた外部メンバーによる推進チームと、木村寛明KDDI research atelier センター長による座談会から抜粋して紹介します。

「FUTURE GATEWAY」とはどのような思想で生まれ、何を目指しているのか。イニシアチブの根幹となるその思いをお伝えします。

FUTURE GATEWAYが生まれた経緯

澤村:まずは「FUTURE GATEWAY」が立ち上がった経緯を振り返りたいのですが、きっかけは「こんなことできないかな?」という木村さんからのラフなご相談でしたね。

木村:今までわれわれは研究開発に取り組んできましたが、その技術がなかなか広がらないという課題を抱えていました。いろんな方と話をしていると、世の中にはライフスタイルのあらゆるハードルを頑張って越えようとしている人たちが存在しているということに気がつきました。そのハードルをわれわれの技術によって下げることができるんじゃないかと。ハードルを下げることで、そのライフスタイルを広げることができる。

澤村:もともとKDDIには、研究開発のための研究所とライフスタイルへの実装を目指すシンクタンクの両方が存在していましたよね。

木村:もともと研究開発を進めるKDDI研究所が埼玉県のふじみ野市に、飯田橋にKDDI総研というシンクタンクがあった。2016年に合併しKDDI総合研究所となり、シンクタンク部門と応用研究部門が2020年12月にこの場所に移り「KDDI research atelier」という名前に変わりました。同じタイミングで、ふじみ野の部隊も「先端技術研究所」という名称に変更し、こちらは研究開発を専門にやっていくことにしたんです。その技術を使ってライフスタイルを変えていくというのが「KDDI research atelier」の役割になったわけです。

澤村:その新たなライフスタイルの実践者として、アドレスホッパーという名称を生み出した第一人者でもある(市橋)正太郎さんに声をかけ、幅広い分野でプロジェクトを回せる人材として(加藤)翼さんに、僕からチームに加わっていただけるようにお願いをしました。それからコンセプトを考え、どんなプロジェクトをやるべきかたくさんのアイデアを出しました。その資料を翼さんがまとめてくれて、KDDIのみなさんとも合意が取れて、「FUTURE GATEWAY」が生まれました。その後、具体的なプロジェクトが始まったのが2021年に入ってからでしたね。

木村寛明:株式会社KDDI総合研究所取締役執行役員副所長、KDDI research atelier センター長。

市橋:声をかけてもらって最初は研究所と聞いて「これは技術の話をされるのかな」と思ったら、最初からライフスタイルの話だったので、ちょっと意外な印象を受けました。思ったよりも寄り添ってくれるんだと。

加藤:僕も、最初から役員の方に会うということで身構えていたら、すごい面白がってもらえて。コンセプトの提案にしても数字のフィードバックをされるかと思っていたら「いいね、やろう」って(笑)。

木村:シンクタンクはビジネスなので、技術だけがあっても意味がなくて、きちんと経済につながっていく必要があるということはメンバー全員が理解していました。だから技術を打ち出していくだけでは意味がないということは最初から話していたんです。

動物園にとどまらず、サバンナに出るべき

市橋正太郎:Address Hopper Inc.代表、WOTA株式会社執行役員、アドレスホッパー。1987年兵庫県小野市出身。京都大学を卒業後、2010年サイバーエージェント入社。ABEMAなどのマーケ責任者を経て、2019年Address Hopper Inc.を創業。定住に代わるライフスタイルとして「アドレスホッピング」を提唱し、3年前から自らも実践。多数のメディア出演やカルチャー誌「Hopping Magazine」を発行するなど新たな文化醸成に尽力する。アフリカ原住民宅への滞在をきっかけに「世界中どこでも気持ちよく暮らすためには自律分散型の水インフラが必要」と感じ、2019年6月よりWOTA株式会社に参画。コミュニティマネージャーとして社内外とのコミュニケーションを担う。また、サウナシュラン2020に選出された奈良県山添村「ume,sauna」や、サステナブルな食のあり方を体験するスクール「Healathy(ヘラシー)」をプロデュースするなど、新しい暮らしに関わる活動を幅広く行う。

市橋:KDDI research atelier に来てみると、面白い技術や要素はあるのですが、ある意味「動物園」のようだと思ったんです。研究成果の展示・観察の場所としては良いのですが、実際に生活者のリアルを感じるためのフィールドワークするための場所は別で必要だと感じたんです。それで「動物園だけでなくサバンナに出ないといけない」「彼らと一緒にやりたいならまず“ペイフォワード”しなければ」みたいに率直な意見を伝えることができました。

木村:最初の頃に市橋さんから「この場所は動物園みたいだ」という言葉を聞いて、すごいしっくりきたんです。これまでどうしてもビジネスライクな視点でこの場所を見ていたので、今まで思っていても言語化できていなかったんですが、「動物園にとどまらず、サバンナに出るべき」と言われて、サバンナのような雑多感というか化学反応がわれわれの強みになるんじゃないかと思いました。

澤村:越境走者の人たちって、ここに関わることでいかに自分の関心ごとに紐づけられるのかを重要視します。だから、KDDIとして「これはできない」みたいな態度をとってしまうとアイデアが希薄化してしまうと思いました。だけど、なんでも許してもらえる環境だったので、すごく人を巻き込みやすかったんです。

加藤:僕は勝手にいろいろと妄想するタイプなので、アイデアを考えてるんですけど、この場所はマグネットの力が強くて、すぐに人を集められる。しかも技術を持ってアイデアを形にするのがすごい早いという感覚値があって、それがこの場所の一番の強みなんじゃないかと思っています。

澤村:越境走者ってアイデアを考えるのは得意でも、新しい価値観を持つ人は母数が少なくて、理解してもらおうにもなかなか数が集まらなかったりする。そうなると、新しいライフスタイルを社会に実装させるためには、やっぱりリソースも技術も信用も必要になるんですよね。だからこそ、この場所と越境走者はwin-winな関係が築けるはずだと思うんです。

メンバーそれぞれの役割と強み

澤村俊剛:株式会社METRIKA,Inc. 取締役 COO。1989年奈良県香芝市出身。同志社大学でサスティナブル経済学を学んだのち、2013年パーソルキャリア株式会社 (旧インテリジェンス) 入社。戦略人事部 新卒採用部において、西日本採用拠点の立ち上げを行う。その後、企業OBの豊富な知見を社会に還元する社内ベンチャー「i-common」に異動し、西日本拠点を立ち上げる。事業企画として東京に赴任後、新規事業開発担当としてテック・クリエイター領域へのサービス拡大を行う。2021年に誰もがデータを使いこなせる社会作りを目指し、株式会社METRIKAを創業。

市橋:自分で言うのもなんですが、僕はわりと越境走者の代弁者のような感覚なので、さっきも言ったように、暮らしの主体としての感覚をそのまま伝えることが役目だと思ってます。あとは、KDDI総合研究所側と越境走者側のコミュニケーションのハブとして、全体のコンセプトやプロジェクトが大きく乖離しないように進めていくことも意識しています。個別のプロジェクトの座組みや進行は加藤くんが得意だから、能力的にもうまく分担できているんじゃないかな。

澤村:僕にも越境走者の要素はある気がしますが、まだまだ中途だと思っていて、だからこそできるのは「通訳」なんですよね。僕がいた会社では、スーツ組・パーカー組なんて表現をしていましたが、会社組織としての言葉と越境走者の言葉って全然違うわけです。「動物園だ」なんていきなり言われてもKDDI総合研究所の方々も困っちゃいますよね。それぞれがわかりやすい言葉を選ぶこと、それが僕の役割なんじゃないかと思っています。

加藤:僕からすると市橋さんはご意見番で、澤村さんがファシリテーター役をしてくださっている。僕は議論で生まれたたくさんのインプットを解釈してまとめて構造化する。僕自身のやりたいことというよりは、みなさんがやりたいことを形にするのが好きなんです。

未来が待てない越境走者たちへ

加藤翼:株式会社qutori CEO、株式会社ロフトワークコミュニティデザイナー。1990年千葉県柏市出身。「共創」をテーマに他分野のコミュニティを横断する事業を多数手がけ、100BANCH, SHIBUYA QWSのコミュニティマネージャーを務める。早稲田大学で哲学を専攻、ボストン大学への留学後に外資系コンサル企業に勤務。デザインスクールを経て株式会社qutoriを創業する。BUFFコミュニティマネージャーの学校、ポップアップ情報メディアPOPAPを立ち上げる他、様々なクライアントをコミュニティ視点でディレクションする。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)の配下にある、Global Shapers Communintyに所属し、地域課題の解決や次世代教育等にも幅広く取り組む。

澤村:この場所で扱うテーマに関していうと、お題が難しすぎたり研究っぽすぎると実装が難しいけれど、あまりにも一般化しすぎたテーマだと研究の必要がない。そのバランスが難しいですよね。

木村:私たちだけだと「こういう技術あるよ」というところで止まってしまうけれど、「こうすれば何かが変わるよ」というワクワクする話に転換をしてくださるので、いつもそのやりとりがありがたいですね。われわれはいつも手段の話になって、それをどう使ってもらうのかの議論が希薄になってしまう。

市橋:越境走者って自分の欲求に対して素直なんですよね。未来が待てない、というか。

澤村:技術を知らないからこそ、思ったことをピュアに言えるのかもしれないですけれど。

市橋:だからこそ、自分は素直な意見を言おうと心がけているのですが、実体験に基づく感覚をフィードバックできるというのは越境走者の価値ですよね。

澤村:明確なニーズがあるからこそ、プロジェクトにおいてもペルソナになる具体的な友達が浮かぶことが多くて、それはすごくいいことだと思うんです。

市橋:プロジェクトの進め方としても面白いですよね。ペルソナが実在するならその人を連れてきて話を聞けばいいし、お客さんが目の前にいる状態でプロジェクトを進めることができる。僕らからすれば、めちゃくちゃありがたい話ですけどね。今後参加してくれる方々にとってもそうですけど、「あなたがいいと思う世界観をここで実現してください」と言われて、そのための技術とお金を用意してくれるようなものですから。

いい土を作り、幹を育てていく

木村:みなさんには「好きにしてください」と言いつつ、その裏にあるスキルというか可能性を広げていくのがわれわれの仕事だと思っています。だけど、こうしたプロジェクトってサイクルとしてつながっていくと思っていて。一つのプロジェクトをやって終わりではなくて、そこからフィードバックを踏まえて企画がどんどん回っていく。事業的にはそれが一番重要です。

市橋:種ではなくて、土壌を作っている感じがしますね。種があっても、どの土が一番育つのに適しているのかまだわからないじゃないですか。そういうことをやっているような気がします。

加藤:ふかふかの土って大事なんですよね。だいたいどんなプロジェクトも上がっていくことを計画しすぎて、墜落した時のことを考えていない。だけど、ふかふかの土があれば、墜落したとしてもそれが養分となって、次のプロジェクトへとつながっていく。

木村:土がいいとみんなわかるんですよね。だから、いろんな人たちが自然と寄ってくる。それはすごく期待しています。あとは太い幹のようなこのプロジェクトの根底にある概念を作っていきたいなと思います。太い幹は目立ちますし、誰にでもわかりやすいので、そこからさらに人を集めることができて、行動や文化を変容させていく力を持っているんだと思います。

では、これから何をやっていくのか?

澤村:では、最後にこれからどんなことをやっていきたいのかという話ですが、越境走者がプロジェクトを勝手に持ち込んで組成できるような場所。自由に立ち入っては出ていけるようなサバンナの中のオアシスみたいな場所になれたらいいなと。そのためには、ルールも必要で、僕たちが大事にする世界観を作っていきたいと思います。

市橋:ルールというと堅苦しくて、僕としては「温度と湿度」みたいな感覚ですね。みんなが活動しやすい温度や湿度を用意していく。

澤村:そう、それです。すごいしっくりくる言葉。

加藤:僕は、500年後くらいにちゃんと歴史になる仕事がしたいと思っています。今考えていることが何かの転換点として500年後の歴史になってほしい。ここでしか生まれ得なかった思想が言語化されて残ってほしいと思うんです。近年、SDGsとかデザインシンキングとか、わりと欧米的なデザインプロセスが主流になっていますが、自分たちの世代で日本から生まれる新しい文明を創出できたら面白いなと思います。

市橋:僕の目標は純粋に自分がイメージしている未来のライフスタイルやカルチャーをちゃんと実現すること。そうやって事例を作って、理想の暮らしをどんどん作っていきたいですね。あと、越境走者と行動をともにすることで、KDDI総合研究所の人たちがどんどん越境走者になってほしいですね(笑)。

木村:私も新しい文化の創出にはとても期待しています。とくに、日本発のカルチャースタイルを発信できるといいなと思っています。この場所からか新しい文化、スタイルがたくさん生まれることで、いろんな人たちが「一緒にやろう」と寄り添ってきてくれるような位置付けにしたいと思っています。

※この記事は抜粋版です。全文はFUTURE GATEWAYサイトでお読み頂けます。