TVストリーミングの顧客獲得は難しい


TVストリーミングサービスは最近動きが活発だが、顧客の獲得には苦労しているようだ。

TV番組などのコンテンツを供給しているメディア会社が、ケーブルTVやアグリゲータなどを介さずに顧客に直接ストリーミングサービスを提供する動きが最近活発化している。

例えば映画チャンネルのHBOはストリーミングサービス「HBO Now」を2015年3月にスタート。CBSの「Showtime」も同7月にストリーミングサービスを開始した。

Disneyはストリーミング技術で定評のあるBAM Techに10億ドルを出資し、系列のスポーツチャンネル「ESPN」のストリーミングサービスの開始に向けて準備をしていると伝えられている。

他にも多数のサービスが続々と登場して活況を見せている。ところが加入者数はあまり多くないようだ。

The InformationがTVストリーミングサービスの加入者数を伝えている。

The Informationより
The Informationより

一番多いのはプロレス専門チャンネル「WWE」で、加入者数は6月末時点で150万件程度。次がShowtimeの100万件、CrunchyRollの85万件と続く。HBO Nowは最新の数字は発表されていないが昨年12月末時点で80万件だった。

マーケットの規模からすると、ストリーミングサービスの加入者はほんのわずかな割合だ。何をもってマーケット規模とするかという問題もあるが、例えば、ブロードバンドサービスに加入していてケーブルTVに加入していない世帯は、TDG Researchの調査によると1,730万件。また、HBOの通常の有料TVサービス加入者は3,000万件もある。

コードカッターがどんどん増えてストリーミングサービスに移っているという状況ではなさそうだ。

ストリーミングサービスの顧客獲得の難しさについて、同記事では、マーケティング力の問題もあるが、顧客にとって、一つ一つのサービスに個別に加入するのは面倒だという問題が大きいのではないかと指摘している。

NetflixやAmazon Primeなどのアグリゲータにアドオンとして組み込む方が顧客獲得には有効との声もある。

料金的には、例えばWWEは月9.99ドル、HBO Nowは月14.99ドルに対し、加入者数が少ないAcornTVは月4.99ドルという格安サービスなので、料金が安ければ加入者数が多くなるというものではないことは明らかだ。

収入的にも、ケーブルTVのパッケージの一つになっていた方がよっぽど稼げるというのが実情のようだ。

ストリーミングサービスの市場はまだ草創期ということもあり、今後時間が経てばユーザの視聴スタイルが変わり、事情が違ってくる可能性もあるので、もう少し見極めが必要だが、今のところ顧客獲得は難しそうな雰囲気が漂っている。