リコメンデーションのパラドックス


「予測的TVリコメンデーション・エンジンのパラドックス」という記事がFierceCableに掲載された。それによれば、予測システムに基づいたリコメンデーションには根本的な限界がある。

ユーザが好むであろうと思われるコンテンツを予測してリコメンドする機能は、さまざまなサービスで採用されているが、予測の精度は必ずしも高くなく、いかにして精度を上げるかが目下の課題だ。

アムステルダムで開催されたIBCコンファレンスでは、文脈と時間ベースのデータを使用して予測の精度を上げることがホットな話題となった。

TV番組の録画装置を提供するTiVoの戦略担当副社長は、視聴者が番組表を見なくても済むような精度の高い予測をすることが目標だと述べている。

実際TiVoは、視聴者がどの番組をいつどの端末で視聴したかといったデータに基づく予測機能を搭載した「Suggestions」を提供している。TiVoはこれに基づいて自動的に録画までしてしまう。

TiVoのサポートページより
TiVoのサポートページより

Netflixは10年も前に、レコメンデーションを改善するアルゴリズムの開発に、100万ドルの懸賞金を出した。Comcastなどの大手ケーブルTV事業者なども検索・発見機能の改善に精力を注いでいる。

ところで、視聴者の行動を分析して、観たいであろうと思われるコンテンツを予測するシステムがもし完璧なものであったら、すなわち、視聴者は完全にそのレコメンデーションに従ってコンテンツを視聴するようになったらどうなるだろうか。

視聴者の行動に関する新たなデータは出てこないことになる。そうすると分析の対象となる視聴者の行動のデータをどこから入手すればいいのか、という問題が生じる。つまり、視聴者がレコメンデーションどおりに行動してくれると、逆にシステム側が困ることになる。

結局、予測システムの精度をある程度上げることは可能だろうが、完璧なシステムは不可能だ。仮に完璧な予測システムに基づくリコメンデーションがなされたとしても、システムのためを思えばユーザはそれに完全に従ってはいけない。

ユーザにはなるべくレコメンデーションに従わず、その先を行く行動をすることが求められている。