Netflixがダウンロード機能を導入


Netflixでビデオがダウンロードできるようになった。これは不可避な機能だと、Engadgetが伝えている。

Netflixアプリより
Netflixアプリより

Netflixは2年前には「オフラインサポートは絶対に提供しない」と言い切っていたのだが、最近になって考えを改めたようだ。

全部のビデオがダウンロードできるわけではないが、できるものにはダウンロードマークが表示されるようになった。

Netflixアプリより
Netflixアプリより

Engadgetがこの機能は不可避としている理由は、以下のようなものだ。

1. ユーザが心から熱望している。

Netflixでオンデマンドビデオを観るのが中毒のようになってしまったユーザ(これはNetflixに責任の大半がある)は、Netflixが片時も離せない。いつでもどこでもビデオが観られなければ困る。地下鉄や飛行機の中でも。モバイルのデータプランの容量が限られているので、外出先などではビデオのためにデータを使いたくないというユーザも多い。

Netflixが「Black Mirror」のエピソードの宣伝のためにパロディーCMを流しているが、それにこの機能がぴったり収まる。「Netflix Vista」というコタンクトレンズのような(架空の)装置を目に装着すると、いつでもどこでもビデオが観られる。これがあれば、通勤電車の中でも、エクササイズ中でも、海辺の美しい景色の前でも、入院中の祖父を見舞っている最中でも、会議中でも、食事中でも、いつでもどこでも何をしているときでも好きなビデオが楽しめる。それにはオフラインサポートが役に立つ。

2. 競合のAmazonがこの機能を数年前から提供している。

Amazonはダウンロード機能を数年前から提供している。Amazon自身はこの機能をあまり宣伝していないので知らない人も多いはずだ。最初はFireタブレットだけの機能だったが、iOSやAndroid端末にも昨年導入した。

AmazonはPrimeの加入者数を正式に発表していないが、アナリストの見積もりでは米国だけで5,400万件から6,400万件の間。そのうち60%が週1回以上Primeビデオを視聴している。

これに対し、Netflixの加入者数は米国で4,700万件、全世界では8,600万件。Amazonはオリジナルコンテンツも増やし、好条件のライセンスで新しいコンテンツもどんどん増やしている。Netflixとしては機能面で負けている状態を放置するわけにはいかない。

3. 顧客にアピールしやすい。

この機能は手っ取り早く新規顧客を引きつけて視聴者を増やすのに役に立つ。Netflixはこれまでの努力の甲斐あって、米国のゴールデンアワーにはインターネットトラフィックの3分の1以上を占めるまでになったが、これ以上加入者をどうやって増やすかが問題。料金値上げの影響は今のところ出ていないが、今後出ないとは限らない。オリジナルコンテンツへの予算を増やしてはいるが、コンテンツが充実していないとのユーザの声が絶えず寄せられている。

こんな状況で顧客を増やすには、ダウンロード機能を無料で提供するのが一番。それに既存の顧客をつなぎとめるのにも役に立つ。

4. 国際進出には必要。

世界にはインターネットが不十分な地域がいくらでもある。そんなところにもNetflixを売り込んで安定的に使ってもらうためには、オフラインサポートが欠かせない。地元の競争相手はダウンロード機能を提供しているかもしれない。海賊版との戦いもある。この機能を提供しなければ海賊版がはびこるのを助長することになる。

以上のとおり、ビデオストリーミングサービスでダウンロードができることは競争上避けて通ることのできない機能だというわけだ。

もっともダウンロード機能を実際に使うとなると、端末の容量は食われるし、ネットが遅ければダウンロードに時間がかかるしで、使いにくい場合があることも考えられる。

ユーザが実際に使うかどうかは別として、この機能があるかないかが競争上重要なポイントになる。すなわち、あまり使わないかもしれないけれど、なくてはならないもの。

そういうものは身の回りにいろいろありそうだ。