Walmartが食料品を家の中の冷蔵庫まで配達するサービスを実験中だが、消費者にウケるかどうかは疑問だ。

WalmartがスマートロックのAugustと提携して実験中のサービスは、オンラインで注文した食料品を配達した際に、受取人が不在の場合は家の中の冷蔵庫に入れてくれるというもの。
Augustでワンタイムパスコードを発行して玄関のドアを解錠して中に入れるようにする。
もちろん、受取人が事前に承諾している場合に限られる。通常は配達先が不在の場合は荷物は玄関前に置き去りにされる。誰かが持って行ってしまうこともあり、食料品だと傷むものもあるので、冷蔵庫に入れてもらえれば助かる。
これにより消費者は、買い物にかかる時間が節約できるだけでなく、買った物を買い物袋から出して冷蔵庫に入れる時間までも節約することができる。
他人が家の中に入り込むのは何かと心配だが、配達人が家の中に入って冷蔵庫に食料品を入れて立ち去るまでの様子は、室内に設置された監視カメラによりスマホでリアルタイムに確認することができる。
配達人も監視されていることを知っているので、ヘタなまねはできないだろうという読みだ。
スマートホームとデリバリーを合体させたアイデアサービスと言えるが、果たして消費者の反応はどうか。
Mother Nature Networkが「不気味な利便性を提供する」と伝えている。冷蔵庫という極めて私的な家電の中を覗かれることになるという問題がある。冷蔵庫の中を覗かれるということは、食生活だけでなく、健康、収入、私生活、精神状態までわかってしまう可能性がある。
さらに冷蔵庫というのは人によっては極めて体系化された家電だ。中の品物にはそれぞれの居場所がある。他人が置くとその体系がくずれてしまう可能性がある。
その体系を維持するためには、「これはどこに置いて」という詳細な指示書を冷蔵庫のドアに貼っておくという手もあるだろうが、そんな指示書を書く暇があったら、自分で買い物に行った方がいい。
さらに、配達人はWalmartの従業員ではなく、配達専門のスタートアップ「Deliv」が担当するというところも消費者に不安を与えている。Walmartの従業員なら安心というわけでもないが、どんな人が来るのかわからないという不安が増幅する。
そういうわけで、この実験に関しては、ネットで多くの人から否定的なコメントが寄せられているそうだ。
専門家の危惧する声もある。「この手の新しいアイデアには常に予期しない結末がつきまとう」との専門家の見解をWashington Postが紹介している。
たとえば盗難、破損、飼い犬が噛んだなどの損害に対して、誰が補償するのか、住宅保険でカバーされるのかなど、問題は多い。
もっとも、「予期しない結末」は必ずしも悪いことだけとは限らない。「こんな便利な使い方もあるのか」という発見もあるかもしれない。
実験を暖かく見守ることにしたい。