AT&TはHBOに「産みの苦しみ」を求める


AT&Tの傘下に入ったHBOは「産みの苦しみ」を求められるそうだ。

Warner Mediaのホームページより

Time WarnerがAT&Tと合併してWarnerMediaとなり、そのCEOにAT&Tの幹部のJohn Stankey氏が就任した。同氏がAT&Tのメディア事業を統括する。

これにより、もともとTime Warnerの子会社だったHBOは、AT&Tのグループ会社となった。

Stankey氏は早速、ニューヨーク・マンハッタンにあるHBO本社の全社会議に出席して所信を表明。その会議の録音データを入手したThe New York Timesが、その様子を伝えている。

同氏はHBOの150名の社員に対し、これまで以上に一生懸命働いて利益を上げるようにと言い渡し、特にこの1年は「産みの苦しみ」を感じるくらい頑張ってほしいと決起を促した。「AT&Tの傘下に入れて君たちはラッキーだね」とも語った。

これにはHBOの社員たちはさぞかしカチンときたことだろう。(みんな今まで頑張ってきたんだよ。その証拠にHBOは毎年エミー賞をたくさん取ってるし、現に多額の利益も上げている)という社員の心の声が聞こえそうだ。

全社員の気持ちを汲んでAT&Tに釘を刺すべく、HBOのCEOのRichard Plepler氏が質問した。「AT&TはHBOに資金をいくら出してくれるつもりですか」

Stankey氏は、具体的な金額は示さず、「段階的なものにならざるをえないだろう」と答えた。

「簡潔な名回答に、みなさん拍手を!」とPlepler氏。

「それと、早急に利益を上げないといけない。そうでしょ」とStankey氏が同意を求めると、「我が社は利益を上げていますよ」とPlepler氏が反論。パラパラと会場から拍手。

Stankey氏は、「それはわかっているが、まだ十分ではないということだ」と答えた。

「持てる力を最大限に発揮してこれまでやってきたつもりですが、これからはそれではやっていけないということですね」とPlepler氏がまとめた。

Stankeyの思い描くHBOの将来像は、Netflixと互角に渡り合えるビデオストリーミング会社。それには加入者数も視聴時間もまだまだ足りない。

世帯普及率が35-40%ではまだ不十分だし、視聴者が1か月に数時間とか1週間に数時間視聴するのではなく、1日に数時間視聴するようなサービスにならなければ。「君たちの競争相手はユーザが15分ごとに目を留めるスマホだ」とStankey氏。

「産みの苦しみ」に関しては、その真っ最中は苦しいが後で良かったと思えることだと説明。この話をするとワイフからは「あなたに何がわかるの」と言われるが、「子どもが可愛いってこと」と答えているとも補足。

もともとAT&TとHBOでは企業文化がまったく違い、合併後に関して業界ではAT&TがうまくHBOを扱い切れるのかについて疑問の声が上がっていた。AT&TとしてはHBOに大変革を強いるか、放任主義で行くかの選択がある。

AT&Tはどうやら前者を選択したようだ。