日本人記者の英語


トランプ大統領が日本人記者に対して差別的な態度をとったとの批判が出ているようだが。

HuffPostによれば、米中間選挙の結果判明後に開催されたトランプ大統領の記者会見で、日本人記者からの質問に対し、トランプ大統領が「何言ってるのかわからない」と答えたのが差別的な発言だとの批判が出ているそうだ。

ライブで記者会見を見ていた限りでは、特に差別的な感じを受けなかったので、どうしてそんなことになってしまったのかが気になった。

トランプ大統領と日本人記者の問題のやりとりは以下のようなものだ。

記者「Can you tell us how you focus on economic…」(経済についてどのように取り組むのかを聞かせて…)

トランプ「Where are you from, please?」(どこから来たのかをお願いします)

記者「Japan, Abe.」(日本、安倍首相の)

トランプ「Okey. Say hello. Say hello to Shinzo.」(オーケー、安倍首相によろしく)

記者「Yes.」(はい)

トランプ「I’m sure he’s happy about tariffs on his cars. Go ahead.」(安倍首相は日本車への関税については満足しているはず。続けて)

記者「That’s my question, actually. So how you focus on the trade and economic issues with Japan? Will you ask Japan to do more? Will you change your tone?」(実はそれが私の質問です。日本との貿易・経済問題についてどのように取り組みますか。日本にもっと要求しますか。論調を変えますか)

トランプ「I don’t — I really don’t understand you.」(何言っているのかわからない)

その後、トランプ大統領は日本との貿易問題(trade with Japan)だとわかり、今まさに交渉中であることや、日本と安倍首相を褒めながらも貿易の不公平に不満をもらし、日本が悪いのではなくそのような状況を許した米政府の担当者が悪いのだと言い、不公平なのは日本だけではないので気にするなというようなことも述べ、トランプ大統領にしてはめずらしく日本に好意的な発言になった。

このやりとりが、なぜ差別的な態度という批判につながったのだろうか。

おそらく最初に記者が質問しようとしたのを遮って、どこから来たのかと聞いて、日本だとわかったので、何言ってるかわからない、とバカにするような発言をした、と受け止められたのだろう。

実際に見ていた限りではそんなことはなく、「どこから来たのか」というのは、記者が最初に社名を名乗らなかったので聞いたものだろうし、「何言ってるかわからない」というのも、実際に記者の質問内容がわからなかったことによるものだろう。

「That’s my question, actually. 」と受け応えしているところを見ると、この記者は英語はかなりできる方ではないかと思われるが、発音がわかりにくく、「focus」を「ホーカス」、「trade」を「トレード」と発声し、「economic issues」に至っては緊張もあってか舌がもつれてもごもごしてしまったので、肝心の部分がわからなくなってしまった。

日本人英語に慣れている我々でさえもわからなかった。しかも記者会見のざわざわした会場で、記者の声は小さめだったから、トランプ大統領は本当にわからなかったのだろうと思われる。

同記者会見では、他に中東系の記者2人に対しても「何言ってるかわからない」と答えた場面があり、一方、ニューヨーク・ブルックリン出身の記者が「私はブルックリン出身なので、わかるでしょう」と言うと、「とてもよくわかる」と答えた場面もあったことから、トランプ大統領は外国人記者に対して差別的だとの印象が強まったようだ。

ただ、CNNの記者に対しては終始敵対的に対応し、最後は出禁にしてしまったほどだから、必ずしも外国人記者に対してだけ差別的だったというわけでもない。

他の記者に対してはともかく、少なくともこの日本人記者に対しては、トランプ大統領の態度は差別的ではなかったと断言できる。問題は日本人記者の英語にあった。

日本人なのだから日本人英語でかまわない、という考え方もあるだろうが、相手に通じなければ文字通り「話にならない」。キーワードだけでも伝われば、何が言いたいのかわかってもらえることもあるが、記者の英語はキーワードの「trade」が伝わらなかったのが残念だった。

「trade」の「t」は口蓋と舌で勢いよく破裂音を出す、「t」と「d」の後には母音の「o」を入れない。それだけでも通じやすさは随分違っていただろうに。

こんなことで日米関係にひびが入ってしまってはつまらない。