政府閉鎖の言葉遊び

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政府閉鎖は新年になってもまだ続いているが、日常生活で不便が生じているわけではない。

メキシコとの国境の壁を作る予算に関してトランプ大統領と野党(民主党)が真っ向から対立していて予算が成立しないため、連邦政府が12月22日に一部閉鎖(Shutdown)され、新年になってもまだ閉鎖状態が続いている。

これを報じるメディアは、激しい対立の状況などを伝えながらも言葉遊びをすることも忘れない。

閉鎖の直前、FOX Newsなどが「Countdown to Shutdown」(閉鎖への秒読み)と報じていた。カウントダウンとシャットダウンを掛けるというのは年末に相応しい言葉遊びとなった。

さらにFOXやPortland Mercuryなどは「Shutdown Showdown」(閉鎖の対決)とも報じていた。2つの単語は2文字しか違わず、ちょっと見には同じ単語が2つ並んでいるように見える。

「Wall or Nothing」(壁か皆無か)というのもある。これはトランプ大統領が述べたとしてFOXやThe Timesなどが伝えているが、壁の予算が認められなければ予算全体が成立せず、政府は閉鎖せざるをえないという状況が「All or Nothing」にかけて的確に表されている。

FOX Newsより

日本語にするとうまく言葉遊びにならないのがもどかしい。

ところで、政府閉鎖の原因となっている国境の壁作りの予算に関するトランプ大統領と民主党との話し合いは今も平行線をたどっているが、なぜそれほどまでに対立しているのかがちょっとわかりにくい。

メキシコとの国境に壁を作ること自体はトランプ大統領が選挙公約の1つにしていたもので、それを米国民が支持したということだから、それを実行するというのは別に間違ったことではない。国民の安全を守る上で必要なものなら作った方がいいのではないか。現時点で壁がない部分があるということの方が心配だ。

民主党の反対理由はいまいち明確ではないが、トランプ大統領は壁を作るのに50億ドルが必要と主張しているのに対し、民主党は13億ドルでいいではないかと反対している。

民主党は13億ドルで十分な壁が作れると言っているわけではなく、壁を作ってもそれほど効果はないだろうからそんなにお金をかける必要はないとの考えのようだ。

その代わりに警備要員の増強や最新技術を駆使するなど効率的な方法があるとも主張しているようだが、それにはまた別途お金がかかることになり、その方法や全体でいくら費用がかかるかなどの具体的な代案は示していないようだ。

ただ、トランプ大統領は選挙公約で、壁を作るためのお金はメキシコに出させると言っていたので、それを米国民の支払った税金で賄うことについては反対意見が出てもおかしくはない。

これに対しては、トランプ大統領は、メキシコとの間ではNAFTAを廃止して新協定を結んだことで、実質的に壁の費用をメキシコに負担させることができると説明しているようだが、これには賛否両論がありそうだ。

コンクリートで壁を作ってしまうと反対側が見えなくなり、向こう側で何をしているのかわからないので、却って危険性が増すとの反対意見もあるようだ。これに対しては、トランプ大統領は、鉄製のフェンスにして反対側が見えてデザイ的にも優れたものにするという案も出している。

鉄製のフェンスにすることで、コンクリート製よりも強固にはなる。その分コストも高くなるが、その支出が結局は米国の製鉄業や鉄鋼業に回るのなら、関連業界の復活・繁栄につながる可能性があるという利点もある。

双方ともそれぞれ言い分はあるにしても、それで政府が閉鎖された状態が続くともっと深刻な問題が出てくるのではないかと心配になるが、今のところ一般国民の日常生活に支障が出ているわけではない。

というのも、閉鎖されているのは連邦政府の25%程度で、閉鎖しても支障のない部門であり、州政府や地方自治体は通常どおり動いているので、国民生活への影響はほとんどないようになっているのだろう。

実際に困っているのは閉鎖の対象となっている連邦政府の職員くらいのものだろう。閉鎖期間中は給料がもらえない。その期間は職種によって無給で働くか自宅待機となる。正規職員は政府が再開されると遡って給料はもらえるらしいので、大きな問題ではないとの見方もある。

だからメディアも言葉遊びをする余裕があるのだろう。民主党や反トランプ勢力はこれを殊更に大きな問題として取り上げてトランプ政権のイメージ低下に利用しようとしているという面もあるので気をつける必要がある。

民主党幹部との新年最初の会合を終えたトランプ大統領がホワイトハウスで記者会見を行った。記者からの「大統領の権限で壁を作ることもできるのでは」との質問に対し、「国家非常事態ということになればそれもできる」とトランプ大統領が答えた。

これを取り上げて、「トランプ大統領は壁を作るために国家非常事態権限を発動することも考えている」といった報道がなされるに至っている。これを受けて、ネットでは「トランプ大統領は独裁者だ、暴君だ」などのコメントが出回っている。

トランプ大統領がメディアを「フェイクニュース」として罵倒するのはこういうところだ。既存のメディアやネットによってさまざまな情報が発信されている中で、何が真実で何がフェイクかの見極めが難しい時代になっている。

それでも、ネットが普及していなかった時代に比べれば、多様な意見があることがわかるだけでもましだ。