Sprintが「偽5G」でAT&Tを訴えた


SprintがAT&Tの「偽5G」に対して提訴するという大胆な動きに出た。

AT&TはLTEを高速化する技術を使ったネットワークを「5G Evolution」というブランドで2017年4月から運用しているが、これに対しては業界関係者からは、高速化したとしてもLTEの一種なので4Gの範囲内であり、これを5Gであるかのように表示するのは虚偽であり不当だとの批判が出ていた。

AT&Tはそれに臆することなく、2019年1月からはマーケティング上の表示や口上だけでなく、対応端末がこのネットワークのカバレッジに入ったときにはスマホの画面上部のネットワークの種類を示す表示も「5G E」と表示することにした。

AT&Tのホームページより

これで関係者の批判が激化した。VerizonT-Mobileが即座に反応して、ブログやTwitterなどで批判していた。T-MobileはAT&Tのマネをすれば「9G」だって簡単にできる、とスマホの画面に「9G」と手書きしたシールを貼った動画を流した。

Sprintは今まで沈黙していたが、このほどAT&Tを連邦地裁に提訴するという大胆な動きに出た。いきなり裁判所に駆け込むとはアメリカらしい。

Engadgetが紹介している訴状によれば、Sprintの主張は、AT&Tの虚偽表示により本来Sprintに来るはずだった顧客がAT&Tに行ってしまい、Sprintが多大な損害を受けているというもの。

Sprintが独自に調査したところ、「5G E」は5Gと同等かそれより優れていると思っている人が消費者の54%を占め、また今AT&Tのスマホを買えば5Gが使えると思っている人が43%を占めたそうだ。

これに対して、AT&Tは、競争相手が嫌悪感を持つのはわかるが、顧客は好意的だと述べ、「5G Evolution」とは標準ベースの5Gに至るまでの進化のステップであると明確に説明しているので問題はないとし、訴えに対しては徹底的に争う姿勢を示している。

SprintはAT&Tの不当行為によって被った損害額について訴訟の中で明らかにすることとしているが、「本来Sprintに来るはずだった顧客」をどうやって見極めるかを含め、直接・間接的に被った損害の具体的な金額を見積もるのは難しいのではないかと思われる。

とは言え、単に批判するだけではAT&Tが行動を改めることはないだろうから、「訴えてやる」という思い切った措置に出たものだ。

Sprintを応援する声も寄せられており、世論は概ね反AT&Tに傾いているのではないかと思われるが、3Gから4Gへの過渡期にはAT&TとT-Mobileが3Gの進化形である「HSPA+」を「4G」と称したのに対し、真の4Gではないとの批判はあったものの、結局ITUが「4G」と称することを認めたという経緯もあることから、予断は許さない。