T-MobileのTVサービスは非破壊的

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T-MobileのTVサービスは、少なくとも今のところは、事前の宣伝文句に反して非破壊的だ。

T-Mobileのホームページより

T-Mobileの待望のTVサービス「TVision Home」が4月14日にスタートした。

T-Mobileが2018年1月に買収を完了したTVサービス会社「Layer3 TV」のサービスを刷新したものだ。

月額90ドルで150チャンネル以上が含まれており、追加の有料チャンネルを含めると275チャンネル以上が視聴可能。ブロードバンド回線を使って配信する一種のビデオストリーミングサービスであるが、料金やチャンネル数からすると最近流行りの「スキニーバンドル」ではない。

専用のセットトップボックス(STB)を設置する必要もあるので、むしろ従来型の有料TVサービスに近い。

GoogleやAmazonの音声アシスト製品で操作できるところがやや先進的だ。それと、AIを活用してユーザインターフェイス(すなわち画面)をパーソナライズできるところがやや新しい。すなわち、家族の一人一人を登録すると、お父さん用の画面、お母さん用の画面、娘用の画面、息子用の画面を別々に表示させることができる。

当初の提供地域は、シカゴ、ダラス・フォートワース、ロサンゼルス、ニューヨーク、フィラデルフィア、サンフランシスコ、ワシントンDC、コロラド州ロングモントの8都市圏。

主要な大都市圏に混じってコロラド州のロングモントという小さな都市が含まれているのは、ここの市営ブロードバンドサービスの事業者「NextLight」とLayer3 TVがTVサービスの提供で販売・技術提携をしている関係だろう。

ところで、ワイヤレスサービスで市場破壊的な「アンキャリア」施策を展開しているT-Mobileは、TVサービスでも「アンキャリア」を目指して、2017年12月に大々的な発表をして「市場破壊的なTVサービスを提供する」と宣言した。

いざ蓋を開けてみたら、その宣伝文句に反して、サービス内容はとても市場破壊的とは言えない。

特に、この料金レベルは全然破壊的ではない。本来の月額料金は99.99ドルで、T-Mobileのワイヤレスサービスの顧客は9.99ドルが割引されて90ドルになるが、サービス開始のプロモーションとしてT-Mobileの顧客でなくても誰でも90ドルになるというもの。

T-Mobileによれば、従来型のケーブルTVや衛星TVサービスのために消費者が支払っている平均的な金額は月107.30ドルだから、月90ドルなら安くてお得ということなのだろう。

しかし、T-MobileのTVサービスはSTBが必要で、その使用料が別途で月10ドルかかる。さらにコネクテッドTVで視聴する場合にはテレビ1台につき10ドルの月額料金がかかる。

さらに、ワイヤレスサービスでは税金・サーチャージを込み込みにするのが「アンキャリア」のやり方だと宣伝しているが、TVサービスは税金等が別途かかるところも破壊的でない。

それを全部足し合わせると、平均的な金額を優に超えてしまう。

さらにT-Mobileは比較する相手を間違えている。T-MobileはAT&TのDirecTVを引き合いに出して、それに比べるとこんなに安くて便利だと宣伝しているが、競争相手として意識すべきは最近流行りのストリーミングサービスで、その相場は月40ドル程度。しかも専用のSTBが不要で、他に追加でかかる料金はないというもの。

T-MobileもそのようなサービスでTVサービス市場に参入するものとばかり思っていたが、そうではなかったようだ。

もっとも、T-Mobileは、「顧客の声を聞いて、2019年中に市場破壊的な全国的TVサービスを開始する」とも言っている。

次に発表されるTVサービスこそ「破壊的」であることを期待したい。