DirecTVとDishの合併案が浮上


AT&T傘下の「DirecTV」と、競合の衛星TVサービス「Dish Network」が合併する案が浮上している。

まだ両社が協議に入ったわけではないが、両社とも前向きで、「これは行ける」との感触を持っているようだと、Bloombergが「両社の考えに詳しい人々」からの情報として伝えた。

17年前に両社が合併しようとしたときは、消費者の不利益になるとしてFCCと司法省の承認が得られなかったという経緯がある。2社しかない衛星TVサービスが合併して1社になることは、競争上よくないとの反論は相当強そうだ。

しかし今回は事情が違う。ケーブルTVや同種の競合サービスが多数あり、Netflix、Amazon Prime Videoなどのビデオストリーミングサービスも勢いよく伸びていて、従来型の有料TVサービスの顧客がどんどん減っている。

2018年にはDirecTVとDishを合わせて275万件の顧客を失っている。これは通常は統合に向かうケースだ、とUBSのアナリストのJohn Hudulik氏は述べている。

同様の状況における合併が衛星ラジオで認められている。2008年に衛星ラジオのXMとSiriusが、地上波ラジオに加えてPandraなどのオンラインサービスとの競争により苦境に陥った。両社の合併が認められてSirius XMになった。今の衛星TVとまったく同じような状況だ、と同氏は述べる。

ただ、それとまったく同じだとすると、Sirius XMは合併後も財務の悪化は収まらず、破綻寸前にまで至ったのだから、同じような経路を辿る可能性がある。Sirius XMは結局、Liberty Mediaの出資を受けて救済された。

DirecTVの場合はすでにAT&Tという巨大なコングロマリットの傘下に入っているというところが違う。救済を必要としているのはDishの方だ。Dishとしてはどこか大きな企業の傘下に入るか支援を受けるかしないと、破綻しかねない状況だ。

AT&TとしてもDishが持っている顧客や周波数は魅力的だ。両社にとってハッピーな解決策だと関係者は考えているようだ。ただし、必ずしも顧客にとってハッピーな解決策になるとは限らない。

私事で恐縮だが、先日、DirecTV Nowが値上げするというので解約して、DishのSling TVに乗り換えたばかりだ。おかげでチャンネル数は少し減ったが大きな不便はなく、DirecTV Nowの半額程度の料金で利用できている。

個人的には合併してほしくない。