AT&TがDirecTVの分離を検討


AT&TはDirecTVを切り離すことを検討している、とThe Wall Street Journalが関係者からの情報として伝えた。

「物言う株主」であるElliot ManagementがAT&Tの経営陣に手紙を送り、DirecTVの買収が業績に悪影響を及ぼしており、株主に損害を与えているなどとして、経営戦略の見直しを求めているからだ。

DirecTVはAT&Tが2015年に485億ドルかけて買収したもの。AT&Tのランドール・スティーブンソンCEOが、AT&Tの将来にとって必要だとして万難を排して実現したものだ。

買収直後にAT&Tの有料TVサービスの顧客数は2,600万件となったが、その後コードカッティングの影響等で顧客は減り続け、第2四半期末で2,300万件となっている。第3四半期もさらに減少が見込まれている。

DirecTVを切り離すとすれば、同業のDish Networkと合併する可能性が考えられる。Dishも厳しい経営環境の中、DirecTVと合併すればメリットは大きい。

これまでにも同様の議論はあり、DirecTVとDishの合併の可能性についても、過去にも何度か浮上したが、規制当局の反対で実現に至らなかったという経緯もある。

AT&TはこれまでスティーブンソンCEOのリーダーシップの下、通信、放送、娯楽の統合を推進して競争優位を確保するとの方針で、メディア事業への比重を高めてきた。

AT&T/Time Warnerの合併で司法省が提訴した際、司法省は和解案としてDirecTVを分離することも提案したが、スティーブンソンCEOは頑として受け入れず、結局司法省が折れた形となった。

スティーブンソンCEOとしても、DirecTVを分離することに同意すれば、そもそも合併したこと自体が間違いだったと認めることになる。意地でもそれはしたくないはずだ。

その状況からすれば、「物言う株主」からの提案といえどもおそらく受け入れることは難しいだろうと考えるのが自然だが、事情が変わりつつあるという側面もある。

9月初めにAT&Tは、10月1日付でWarnerMediaのジョン・スタンキーCEOをAT&Tの社長兼COOに昇格させる人事を発表した。この職位は次期CEOの職とされており、スティーブンソンCEOは早ければ2020年にも退任すると見られている。

また、規制当局も最近は合併に対しては寛容だから、DirecTV/Dishの合併話も以前よりは進めやすいはずだ。

さらに、AT&Tの財務上、DirecTVを買収してから5年以内に手放すと税法上不利になるという事情があったが、2020年半ば以降ならその問題もなくなる。

流れはAT&TがDirecTVを分離する方向に傾いている。