『風と共に去りぬ』が去ったり戻ったり


HBO Maxで『風と共に去りぬ』が一時去ったが、また戻って来た。

HBO MaxのiPhone用アプリ(App Storeより)

AT&T傘下のWarnerMediaのビデオストリーミングサービス「HBO Max」が、映画『風と共に去りぬ』を一時的に配信停止した。

ミネアポリスで起こった白人警官による黒人男性暴行死事件を機に、人種差別に反対する抗議デモが全米に広がっていることに配慮したもの。

HBO Maxによれば、この映画の舞台となった南北戦争当時の米国には、残念ながら人種差別が当たり前のように存在しており、それは過去においても現在においても不当なものであるが、そのような人種差別の描写を解説と非難なしに配信し続けることは無責任だと考えた、とのことだ。

HBO Maxはその後、歴史的背景に関する解説を付加した上でこの作品の配信を再開した。

いわば、この作品はHBO Maxにおいて、文字どおり「風(世相)と共に去りぬ」となったが、「解説と共に戻りぬ」ということになった。

ところで、このようなHBO Maxの措置は、最近のTwitterなどのSNSによる「検閲」の問題と共通するところがある。

人種差別問題に配慮することは悪いことではないが、配信する作品に関してこのような措置をやり始めると、問題のありそうな作品は他にも多数あることと思われるので、キリがないのではないか。

また、解説を加えることで一定の見方・価値観を押し付けることになりはしないか。

作品を観て何を思うかは、本来(従来的な考え方)なら、視聴者の判断に委ねるべきというのが一般的だったように思われるが、最近の「検閲」の強化傾向からすると、視聴者に判断を委ねるのは不十分または不適切との考えが広まっているのではないかと思えてくる。視聴者に判断を委ねることは危険だとの考えさえあるのではないか。

それほど社会が脆弱、繊細、敏感、過激になっているということかもしれない。