230条免責の修正法案上程


ソーシャルメディアの「230条」免責を修正する法案が上院に提出された。

ワーナー上院議員がソーシャルメディアを訴えやすくする230条関連法案を提出した、とCNBCが報じた。

現状ではソーシャルメディアやISPは「230条」のおかげでコンテンツに対して責任を負わないことになっているが、一定の場合には責任を負わせられるように修正しようというもの。法案の名称は「SAFE TECH Act」。

有害なコンテンツによって損害を被った人がソーシャルメディアを訴えようとすると、現状では「230条」免責が壁となり裁判所で門前払いされる。この法案が通れば、必ずソーシャルメディアに責任を負わせられるとは限らないが、少なくとも門前払いはされなくなる可能性がある。

法案の提出はバージニア州選出のマーク・ワーナー上院議員が中心となり、ハワイ州選出のメイジー・ヒロノ上院議員とミネソタ州選出のエイミー・クロブシャー上院議員が共同提出者となった。いずれも民主党の議員たちだ。

共和党のリンゼー・グラム上院議員が昨年12月に提出した法案は「230条」を修正するというよりは完全に撤廃するものだったので、それに比べたらまだまだ甘いのかもしれない。

ただ、もし「230条」がなくなったら、それはそれで問題が出る可能性がある。そもそもなぜ「230条」が制定されたのかと言えば、「善きサマリア人」を保護するためだ。

聖書に出てくるたとえで、強盗に遭って身ぐるみ剥がされて重傷を負い、瀕死状態で道に倒れている人がいるのに、見て見ぬ振りをして通り過ぎた司祭とレビ人に対し、サマリア人は介抱して宿屋に連れていき、後の面倒を宿の主人に託し、世話をする手間賃まで置いて立ち去るという、誠に「善き」人だ。

ジョージ・フレデリック・ワッツ《良きサマリア人の寓話》

もしそのサマリア人がけが人を介抱している間に何か失敗をして傷を悪化させたり死なせてしまっりしたら、そのサマリア人は罪に問われるのか。見て見ぬ振りをして通り過ぎた司祭やレビ人は罪に問われず、無償で一生懸命に助けようとしたサマリア人が罪に問われるとすれば、こんな不条理なことはない。

そんなことになれば失敗を恐れて人助けをしない人がたくさん出てくる可能性がある。このようなサマリア人を保護する仕組みが必要だ。

ソーシャルメディアについても同様に、もしプラットフォーム上に有害なコンテンツがあったとすると、それを放置したら大変なことになるかもしれない。とは言え、それを削除するなどすれば別の損害が出てしまうかもしれない。

賠償責任の可能性などを考えて、有害なコンテンツに対して適切な対応ができないかもしれない。そこで、ソーシャルメディアが自らの判断で適切な措置が取れるよう、230条を制定してコンテンツに対しては責任を負わないこととしたものだ。

ただ、昨今のTwitter、Facebook、Google/YouTubeなどのソーシャルメディアによる過度な検閲は、この免責を盾にして特定の言論を封殺しようとする暴挙と言えなくもない。

230条免責には存在意義はあるだろうが悪用は許すべきではない。「善きサマリア人」だけが免責されるような仕組みが必要だ。