Galaxy Nexus販売差止の破棄が意味するもの


Apple対Samsungの特許訴訟に関連して、10月11日に連邦巡回区控訴裁判所がGalaxy Nexusの販売差止を破棄して地裁に差し戻す決定を行った。

Galaxy Nexus(Googleのホームページより)

Galaxy Nexusを販売してもよいことになったのだから、一応Samsungに有利な決定だが、これはSamsungがAppleの特許を侵害していないと控訴裁が判断したという意味ではない。一部の報道が「特許侵害せず」と報じているのは間違いだ。

Apple対Samsungの一連の特許訴訟のうち、今回の決定は今年2月にAppleがGalaxy Nexusの販売差止を求めて提訴した裁判に関するもの。カリフォルニア州北部連邦地裁は6月にAppleの主張を認めてGalaxy Nexusの販売についての差止命令を出した。それに対してSamsungが控訴していたものだ。8月にSamsungが敗訴して約10億ドルの賠償を命じる評決が出た裁判とは直接の関係はない。

販売差止が破棄された理由は、要するに、Galaxy NexusにAppleの特許を侵害する機能(統合検索)が付いていたとしても、それによって直接的にAppleが回復不能な損害を受けそうだという立証が十分にできていないということだ。

その因果関係を立証するのは難しいだろうし、回復できないほどの損害を受けそうだということを立証することも、iPhoneの売れ行きやAppleの利益などを見れば、非常に難しそうだ。

さらに、Appleが特許侵害と主張した統合検索の機能はGalaxy NexusだけでなくAndroidスマホであればどれにでも搭載されうる機能だ。それが特許侵害かどうかを争うとすれば、相手方はGoogleであってSamsungではない。Googleは今回の裁判の被告に名を連ねてはいない。というわけで、控訴裁は特許侵害かどうかの判断はしていない。

それにしても、既に型落ちしかけているGalaxy Nexusの販売が今頃になって解禁されても、SamsungにとってもAppleにとってもユーザーにとってもあまり意味はない。今後の特許訴訟がSamsungに有利になるという保証もない。

今回の決定は、販売差止をしてほしいなら因果関係を含めてもっとしっかり立証しなさい、とAppleを戒め、十分な立証がないのに差止命令を出してはいけません、と地裁のルーシー・コー判事を戒めたもののように見える。

ところで、因果関係のことを英語で「Causal Nexus」という。販売差止になっていたのは「Galaxy Nexus」。偶然にしてはできすぎだ。

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