AT&Tがショップ閉鎖と人員削減


AT&Tがコロナ禍で直営ショップの恒久的な閉鎖と人員削減を進めている。減税してくれれば雇用を増やすと約束していたにも関わらずだ。

The Guardianによれば、AT&Tは2020年11月と12月に直営ショップ320店舗の閉鎖を発表し、2020年6月にも250店舗の閉鎖を発表した。これに伴い、技術者、事務員、管理職、役員など3,400人の人員削減も実施している。

しかもこれはトランプ政権下で企業に対する減税が実施されていたときで、この減税の実現にあたっては、AT&Tも雇用を増やすと約束して減税の実現に向けてロビー活動を活発に行っていたという経緯がある。

つまり、減税してくれれば雇用を増やすからと約束して説得し、いざ減税が実現したら、雇用を増やすどころか減らした、ということになる。

これはコロナ禍で事情が変わったからというわけではなさそうだ。

実は、AT&Tはコロナ禍が発生する以前から人員削減を進めていた。しかも減税してくれれば雇用を増やすと約束して、その減税が実施されたにも関わらずだ。

AT&Tは2017年にトランプ政権が打ち出した企業向けの減税策を全面的に支持していた。これが実現すれば雇用を7,000人増やすと約束していた。

そして減税は実現した。2017年12月に法人税率が35%から21%になった。これによりAT&Tは一時的に210億ドルの還付を受けるとともに、その後毎年30億ドルの経費節減ができていた。

しかし減税が実施されてからというもの、AT&Tは雇用を増やすどころか、逆に減らしている。2020年6月に初めての店舗閉鎖を発表するまでに42,000人の人員削減を実施している。

店舗閉鎖は直営店舗による販売から「Authorized Retailer(正規代理店)」による販売に移行する計画によるものだ。この販売モデルは「物言う株主」のElliot Managementがコロナ前から提案していたもの。

この株主は2020年11月に一旦はAT&Tから手を引いたものの、2021年2月に持ち分はわずかだが株主に返り咲いている。AT&Tの株主優先の姿勢は少なくとも当分は変わることはなさそうだ。

ところで、バイデン政権が8年間で2兆ドル規模のインフラ投資をする計画を発表した。その財源は企業の増税で賄うこととしており、法人税率を21%から28%に引き上げようとしている。

AT&Tは減税では雇用を減らしたのだから、増税では雇用を増やすということになってくれればいいが。