音声時代の始まりか


最近は通信・交流手段として音声の役割が大きくなっているが、このまま音声時代に移行するのか。

Clubhouseなどの音声SNSの流行に示されるように、ソーシャルメディアやコミュニケーションにおける音声の役割が大きくなりつつある。昔は「黒電話」に代表されるように音声が主流だったこともあったが、文字や映像の方がもっと便利で有用だということで変遷してきたはずではなかったか。

今後また音声が復活して主流になるのかどうかは今のところはまだわからず、一過性の「ハイプ」に終わるのかもしれないが、少なくとも今はブームになりつつあることは確かだ。

「なぜ今音声なのか」という問題は、それほど単純なものではないかもしれないが、1つは「Zoom疲れ」があるのかもしれない。ビデオ会議は確かに便利で有用ではあるが疲れるという人もいる。参加するのが億劫になりがちだ。その点、音声だけなら比較的気軽に参加できる、という人も多いのではないか。

それなら文字だけの方がもっと気軽だろうが、文字だけでは正しく伝えるのが難しいこともある。伝える方は表現力が問われ、受け取る方は読解力が問われる。どちらかまたは両方にその能力が足りないと、誤解や摩擦が生じることもある。

また、文字だけだと「成りすまし」などの不正行為も起こりやすい。音声でも電話詐欺のように成りすましの可能性がないわけではないが、少なくとも男なのに女だと偽ることは難しい。

しかも、音声では性別だけでなく、性格や嗜好など、結構いろいろなことがわかるらしい。声紋認証という技術があるくらいだから、精度を高めれば本人確認も可能なのだろうが、さらに性格などもわかってしまうとなると、音声の威力はあなどれない。

そこで今見直されているのが「ボイスプロファイリング」だ。これをマーケティングなどに活用しようという動きがある。

たとえば、商品に関する質問や苦情のために販売店に電話で問い合わせたとする。最初に自動音声で「この通話は訓練と品質向上のために録音されています」というようなメッセージが流れることがある。

これは普通は、担当者の電話応対の様子を管理者がモニターして対応の改善につなげるのだなと考えられるが、モニターされるのは担当者だけではなく、「あなたもだ」とPBSが伝えている。

顧客が最初に発した音声をAIが分析して、「この客はこういう性格だ」、「こういうものが好きだ」などの判断を下し、それに応じて適切な担当者を割り当て、そのプロフィールを考慮してなるべく高いものを買うように誘導する、というように活用されることがあるらしい。

音声時代の始まりは、音声による民衆コントロールの始まりかもしれない。