クラウドの威力


クラウドコンピューティングが注目されている。さまざまな雑誌の記事、解説書、広告などが多数出ている。ただ、実際に身近なものとしての体験がないので、何がいいのか今ひとつピンとこない。まさに雲をつかむような話だ。

そんな中、テキサスでコンサルティング会社を営む友人が、「クラウドってすごい」と興奮気味に話をしてくれた。先日、某法律事務所の社内ITシステムをクラウドに移行する仕事を請け負ったのだという。

その法律事務所は弁護士3人とアシスタント8人、計11人の小規模なオフィス。移民関係などの案件が多く、経済的に裕福でない顧客を多数抱えている。この不景気にも関わらず(不景気のおかげでというべきか)業務量が増えているという。

アメリカの不景気は法律事務所をも襲っていることは確かだ。大手の法律事務所でさえもばたばたと倒産している。ただそのおかげで、大手が抱えていた仕事が回ってきて、忙しくなっているところもあるのだという。

そんなわけでこの法律事務所も業務量がどんどん増えていた。常時600件程度の案件を抱え、1週間に100件増えたこともあるという。しかし中小の法律事務所が持っている社内ITシステムは、通常はそれに耐えられるほど堅固なものではない。

その法律事務所には電話回線が2回線、ファックス1回線、PCは古いWindows XPのものが数台でOffice 2007を使用。サーバーがあるにはあるが容量は3GBで机の下に置いているという状態。データベースソフトはMicrosoftのAccesssを使用。これで契約書などの業務上の資料も保存すれば、顧客データや経理データもすべて管理している。データベースはコピーがいくつもできていて、統合されていない。

一番の問題点は、サーバーがバックアップされていないこと。もしサーバーがダウンすると業務が止まってしまう。さらにもしサーバー内のデータが消失してしまったら倒産してしまうことは間違いないという。

友人はクラウドに移行することをしきりに勧めたが、法律事務所の担当者は最初、半信半疑でなかなか受け入れようとしない。だが最後は、もし今サーバーがダウンしたらどうする、という質問で移行を決意したという。

実際にやってみたら顧客も驚くほど、いとも簡単に移行できてしまったという。Google Appsをベースに、さまざまな「部品」を組み合わせて顧客の要求を満たすシステムに作り上げた。パズルを組み立てるようなもの。

移行作業は48時間で完了。移行に伴う費用はPCを新品に買い替える費用(3000ドル)を含めて、わずか5000ドル。クラウドサービス利用に伴う月々の経費は50ドル。これでデータベースも統合され、今までよりも大容量のサーバーが使え、バックアップ体制も万全の状態になった。PCに不具合があっても遠隔で診断して修理もできるようになった。電話回線もファックスも不要になり廃止した。Office 2007も不要になった。

友人はクラウドの良さをわかってはいたが、この仕事を通じてその威力を再確認できたという。中小企業も大企業と同じテクノロジーが使える。テクノロジーをうまく使えないと生き残れない。それは顧客側の企業もそうだが、サービス提供側の事業者にも当てはまる。

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