最高裁が大企業のワクチン義務化を阻止


米最高裁は大企業の従業員にワクチン接種を義務付けるバイデン政権の施策を阻止する決定を下した。

米連邦最高裁は1月13日、大企業の従業員に対してワクチン接種または週1回の検査を義務づけるOSHA(労働安全衛生局)の規則を差し止める決定を下した。

ただし、連邦の高齢者・低所得者向け医療保険(Medicare、Madicaid)に参加する(すなわち連邦の補助金を得ている)医療機関の職員への接種義務化は認める決定を行った。

これに対し、政権側からは、大企業の従業員の人命を救う施策が差し止められたことには失望したとか、これで患者や医者や看護師の命を救うことができる、などのコメントがあったことが報道されている。

しかし、よく考えるとこれはおかしな話だ。

人命を救うのが目的ならば、なぜ100人以上の企業の従業員に限定するのか、なぜ連邦の補助金を得ている医療従事者のみが対象なのか。

100人未満の企業の従業員の命は救わなくていいのか、連邦の補助金を得ていない病院の患者や医療従事者の命はどうなってもいいのか。

もし本当に命に関わる問題なのであれば、企業の規模や職業にかかわらず、全国民に直ちに接種を強制してしかるべきところだ。悠長に「推奨」している場合ではない。まして打つも打たないも自由などと言う余地はない。

そしてもし本当に命に関わる問題なのであれば、最高裁も、医療従事者には接種を義務付けてもいいが、大企業の従業員には義務付けてはいけないなどという、ちぐはぐな決定をするはずがない。

ちなみに、最高裁の決定の理由は、OSHAには接種を義務付ける権限がない、連邦の医療保険を運営する機関(CMS)が義務付けるのは権限の範囲内だというもの。権限があるかないかの話だけで、人命が考慮された形跡はない。

もし本当に命に関わる問題なのであれば、そもそも裁判所に訴えている場合ではない。

つまり、ワクチン接種を義務化するのは人命を守るためではない、ということを気付かせてくれようとしているような話だ。