Apple TV+の映画作品がアカデミー賞を受賞したのは、いろいろな意味で映画界の変化を物語る。
Apple TV+の映画作品『CODA』(邦題は『コーダ あいのうた』)が第94回アカデミー賞(オスカー)で作品賞(Best Picture)、助演男優賞(Best Supporting Actor)、脚色賞(Best Adapted Screenplay)の三冠を獲得した。
ストリーミングサービスの作品がアカデミー賞で作品賞を受賞したのは初めて。
栄誉あるアカデミー賞の中でも「最も優れた作品」と評価されたことになる作品賞を、大手映画会社やライバルのNetflixなどの作品を退けて受賞したのは快挙と言える。
Appleのティム・クックCEOもさぞ喜んでいることだろう。
Team CODA created a profoundly beautiful movie, a story of hope and heart that celebrates our differences. Congratulations to the producers, @SianHeder, @TroyKotsur, @MarleeMatlin, @EmiliaJonesy, @DanielNDurant, @EugenioDerbez, and all involved in these historic wins! #CODAfilm pic.twitter.com/s9ebnPaYl1
— Tim Cook (@tim_cook) March 28, 2022
もっとも、Appleがこの映画を制作したわけではなく、制作された映画の配給権をAppleが買い取っただけだが。
Appleは2021年のサンダンス映画祭でこの作品の配給権を2,500万ドルで買い取った。その買い取りというのが少々複雑だ。
The Hollywood Reporterによれば、この作品はすでに外国の配給会社に「前売り」されていたところへ、「強制買い戻し条項」を盾にして権利者が買い戻した作品をAppleが買い取った形だった。
これは、「前売り」で買い取った配給会社にとって、映画がヒットしなかった場合の全リスクを負い、映画がヒットした場合の利益は上限が設定されるという不利なもの。
他のストリーミング事業者や大手映画会社もこの方法でヒット作品を買い取るケースが増えており、インディーズ映画の「前売り」型ビジネスモデルが崩れつつあるとしている。
映画界におけるストリーミング事業者の存在感が増すとともに、映画界も変革を迫られている。