カリフォルニア州のネット中立性ルールは健在


カリフォルニア州のネット中立性ルールは無効だとして裁判で争っていたブロードバンド事業者が戦いを断念した。

インターネット上を流れるトラフィックを差別してはいけないという、いわゆる「ネット中立性ルール」は、オバマ政権下のFCCが2015年に導入したが、トランプ政権下のFCCが2018年に撤廃した。

これによりインターネット上でトラフィックを差別することが可能になり、ブロードバンド事業者は特定のトラフィックを優遇して高速回線を通したり、データ使用量をカウントしない「ゼロ・レーティング」や、スポンサー企業がユーザのデータ使用料を負担する「スポンサード・データ」など、多彩な施策を行うことが可能な状態になった。

ただし、カリフォルニアなどいくつかの州では独自に法律を定めてネット中立性ルールを復活させたため、他の州では許される施策がカリフォルニア州など一定の州では許されないという、ちぐはぐな状況となった。

そこでAT&T、Verizon、Comcastなどのブロードバンドサービスを提供する事業者のグループは、カリフォルニア州のネット中立性ルールを定めた法律の施行の差し止めを求めて裁判を起こした。

連邦政府がいいと言っているのに州がダメだと言うのはいかがなものかというわけだ。ここでの主要な問題は2つ。(1) 連邦のネット中立性ルールを撤廃した2018年のFCCの決定は有効なのかどうか、(2) FCCの決定は州の決定に優先するのか否か。

これに対するカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所の第一審判決は、(1) 連邦のネット中立性ルールを撤廃したFCCの決定は有効、(2) FCCの決定は州の決定に優先しない、というもの。

一般的には連邦の法律と州の法律が矛盾するときは連邦の法律が優先するというルールがある。これが本件の裁判においてもブロードバンド事業者側の主張の1つにもなっていたのだが、第一審ではこれが否定されたことになる。

(2)の問題の重要な争点は、FCCは2018年の決定においてブロードバンドサービスを通信法第I編の「情報サービス」に分類したが、それでもブロードバンドサービスを規制する権限があるのかどうかということで、第一審ではFCCにはその権限はないと判断した。

通信法第I編の「情報サービス」に分類されると、FCCの規制の対象外となるので、もはやFCCにはこれを規制する権限がなくなるという判断が下されたもの。通信法第II編の「電気通信サービス」に分類されていれば結果は違っていたのだろう。

ブロードバンド事業者は第一審の決定を不服として控訴していたが、2022年1月に連邦第9巡回区控訴裁判所が第一審の決定を支持する判断を下した。

これを受けて、ブロードバンド事業者は5月4日、本件に関する上訴を断念した、とReutersが報じた。

かくしてカリフォルニア州のネット中立性ルールは引き続き健在、ということになった。