Nuroの新アプローチとは


配達ロボットのNuroが「新アプローチ」と称する事業方針変更を発表した。

創業者からのメッセージによれば、Nuroのミッションを実現するために資金を効率的に使うための道筋を示すものとしている。そのNuroのミッションとは、ロボット工学を通じて日常生活を改善すること。その最初の製品となるのが配達ロボット、すなわち無人の配達車両だった。

無人車両としてはこれまでにR1(2020年に引退済み)、R2、Nuroの3世代を開発し(その他に保安ドライバーが乗車可能なプリウスベースのP1、P2がある)、3世代目のNuroは今年中に量産・商用化を計画していた。

Nuroのブログより

これまでは車両や自動運転運用システムの開発や商用化に向けた大手ブランドとの提携・実験運用等を並行して進めてきた。それが可能だったのは、投資家からの潤沢な資金が使用可能な環境にあったからだ。

ところが、ここ1年半で環境が大きく変わり、投資家からの資金供給が大きく後退した。銀行の倒産が相次ぎ、差し迫った景気後退の兆候も顕著になった。しかもこの傾向は短期間に反転しそうもない。少なくとも今後数年間は厳しい資金環境が続くと予想される。

この新たな現実に直面し、資源配分の見直しを迫られることとなり、優先すべき分野を限定せざるを得なくなった。新たなアプローチで優先されることになったのは、自動運転システムの研究開発の分野。AIやML(機械学習)により広範囲に適用可能な自動運転システムを開発することに集中する。

逆に新たなアプローチで後回しされることになったのは車両の開発や商用化の展開。特に商用化の展開は非常にコストがかかるため、厳しい資金環境では困難と判断したようだ。さらに今年中に予定していた第3世代Nuroの量産・商用化も延期されることとなった。

またTechCrunchによれば、この方針変更に伴い、従業員の30%にあたる340人を削減するとも発表した。このようなコスト削減策により、ランウェイ(現状の資金が底を突くまでの残り時間)は1年半から3年半に伸びるとのことだ。同社は昨年11月にも従業員の20%にあたる300人の削減を実施している。

2016年の創業以来、同社がこれまでに調達した資金の合計額は21.3億ドル。その資金がもうじき枯渇する危機に瀕していたとは。

配達ロボットの事業環境の厳しさを物語る。