AT&TがSpaceX/T-Mobileの衛星電話に反対


SpaceXとT-Mobileが共同で計画している衛星電話サービスに対してAT&Tが反対している。

SpaceXとT-Mobileは2022年8月に提携し、衛星直接通信サービス、すなわち、T-MobileのワイヤレスサービスのカバレッジをStarlink衛星で補完する「Supplemental Coverage from Space(SCS)」サービスを計画している。

T-MobileとSpaceXの提携発表映像より

使用する周波数はT-Mobileが保有するPCS Gブロックで、1910-1915 MHz帯を「上り(地上から衛星へ)」に、1990-1995 MHz帯を「下り(衛星から地上へ)」に使用する計画。

これに関しFCCは4月18日から関係者からのコメントを求めていたが、コメント提出の締切日である5月18日、AT&Tは、この計画が既存の地上系ワイヤレスサービスに悪影響を与える可能性があるとして、許可しないよう求める意見書をFCCに提出した。

もっとも、AT&T自身もASTと提携して同様のSCSサービスを計画しており、既にFCCに申請しているところであることから、SCSサービス自体を否定したり貶したりするようなコメントをするわけにはいかないところだ。

AT&Tのとった論法は大要以下のようなもの。

SCSサービスは地上系ワイヤレスサービスを危険に晒したり阻害したりしてはならない。FCCはSCSサービスの可否を審査するにあたっては、基礎的な地上系サービスを保護することを最優先すべき。地上系ワイヤレスサービスの周波数を使用するSCSサービスの許認可手続きはFCCの無線通信局(WTA)を一元的な窓口として、適用除外を申請・取得することで進めるべき。これによりFCCは申請者に高い技術基準を満たすよう確保することができ、地上系のすべてのワイヤレスサービスの運用にリスクを与えないことを確実にすることができる。

これを前提にして、AT&T/ASTは既に申請済みのSCSサービスについて、地上系システムに干渉を与えないことを証明すべく試験も実施中で、重要な部分は既に完了(初めてのテキサス発衛星経由日本の一般スマホ着の音声通話の試験を完了)している。

それに引き換え、SpaceX/T-Mobileは今のところそのような試験を開始したようには見えない、とAT&Tはコメント。さらに、FCCの規則ではT-Mobileの地上系周波数をこの計画のように使用することは認められていないので、規則の適用除外を申請する必要があるが、SpaceX/T-Mobileはそのような申請をしておらず、ましてその正当性を示すことなど到底できていないと攻撃している。

したがって、FCCに対しては、SpaceX/T-Mobileに詳細な技術的情報を求めるべきであり、それが提出されてすべての疑問点が解消されるまでは許可すべきではないとAT&Tは主張した。

自らのサービスは擁護しながら競合サービスを攻撃するときの論法として参考になる。

それに対してSpaceX/T-Mobileがどう反論するかにも注目したい。