住宅は価格上昇でも買いやすくなっている?


米国の異常な住宅市場では、売却物件の価格が上昇しているが、それにもかかわらず買いやすくなっているとの調査レポートが発表された。RealtyTracとClear Capitalが共同で作成したもの。

住宅の買いやすさのグラフ()
住宅の買いやすさ(RealtyTracレポートより)

折れ線グラフが住宅ローン(30年固定金利)の利率を、棒グラフが買いやすさ(Affordability)を示している。2015年第1四半期の買いやすさが2年ぶりに下がっている。

買いやすさはほぼ住宅ローンの利率に連動しているように見えるが、よく見ると利率が上がっているのに買いやすさが上昇していたり、その逆の場合も見受けられる。

そもそも「買いやすさ」とは何かと言うと、同レポートでは、「月収に占める住宅ローン返済額の比率」と定義している。すなわち、月収、価格、ローン利率の3つの要素が関係してくる。

たとえば、月収が上がり住宅価格とローンの利率が下がれば買いやすくなるのは明らかだ。月収は上がったが、住宅価格やローン利率も上がったなどというときは、それぞれの要素の上がる程度が問題になる。

同レポートによると、第1四半期は月収は上昇し、住宅価格もそれ以上に上昇しているが、住宅ローンの利率が下がったため、比較的買いやすくなったということだ。

これはまったく実感が湧かない。

まず、住宅価格の上昇があまりにも大きくて目立っている。特に近年、サンフランシスコやその周辺では不動産価格の高騰が著しく、数億円という物件がゴロゴロしていて、完全に手の届かないところへ行ってしまったという感じがする。

サンフランシスコ・ダウンタウンの売却物件(Zillowアプリより)
サンフランシスコ・ダウンタウンの売却物件(Zillowより)

次に月収が上昇しているというが、これは平均的な話で、10月13日に開催された民主党の討論会でも、Sanders候補が、賃金の上昇や増加は上位1%の人に持って行かれて、大多数の米国人はこれまで以上に低賃金で長時間の労働を強いられていると発言しているように、大多数の労働者の所得は実質的に減少している。

平均的な月収の上昇は大多数の人にとってはまったく意味がない。

住宅ローンの利率は実際には個人の収入や信用度(クレジッドスコア)によって異なる。実際に申請してみないとわからない。申請結果をみてがっかりすることが多いので、期待はできない。

結局、この住宅価格の高騰は上位数%のほんの一握りの人たちによって引き起こされているもので、買いやすくなったというのもその一握りの人たちの間での話だ。

売却物件だけでなく賃貸物件でも事情は同様だ。大多数の人にとって所得は増えないのに家賃が高騰している。サンフランシスコやその周辺のアパートの家賃は毎年10%以上値上げされている。

米国の住宅市場はやはり異常だ。