EFFがT-MobileのBinge Onにイチャモン


デジタル権利保護団体のEFF(Electronic Frontier Foundation)がT-MobileのBinge Onにイチャモンを付けた。

T-MobileがBinge Onで採用しているビデオの「最適化」とは、単なる「速度制限」にすぎず、結局すべてのビデオについて速度を落としているだけだというもの。

EFFがBinge Onのテストをしたところ、データが無料になる対象サービスかどうかにかかわらず、またビデオのストリーミングかダウンロードかにかかわらず、すべてのビデオの速度が落ちているという結果が出た。

テストは同一のスマホでBinge Onを「オン」にした状態で、HTTP接続とHTTPS接続の2通りでストリーミングやダウンロードを行い、速度を計測した。

HTTP接続ではT-Mobile側でコンテンツが識別できるので、ビデオだとわかれば「Binge On」状態となる。一方、HTTPS接続ではT-Mobile側ではコンテンツが識別できないので、Binge Onが適用されない「通常」の状態となる。

テスト結果は、「通常」状態でブラウザ上でビデオストリーミングを行った場合の速度が2.2Mbpsから7.5Mbpsで平均値は4.9Mbps程度。

ビデオファイルをスマホのSDカードにダウンロードしたときは0.8Mbpsから6.1Mbps程度で平均値は3.5Mbps程度。

ビデオファイルの拡張子やHTTPヘッダを変更してビデオファイルでないように見せかけてダウンロードしたときは3Mbpsから7.5Mbpsで平均値は5.2Mbps程度となった。

それに対し、「Binge On」の状態では、上記のすべてについて1.5Mbpsの速度に落ちた。

ちなみにビデオでないファイルをダウンロードしたときは、「通常」が3.2Mbpsから7.9Mbps程度で平均値が5.6Mbps程度だったのに対し、「Binge On」では1.7Mbpsから6.8Mbpsで平均値が4.2Mbps程度。

EFFのレポートより
EFFのレポートより

結論としては、第1に、T-Mobileは「Binge On」状態では、データ無料の対象サービスかどうかにかかわらず、すべてのHTML5ビデオストリーミングの速度を1.5Mbpsに落としている。

第2に、ファイルの拡張子やHTTPヘッダでビデオでないように見せかけても、T-Mobileではビデオだと認識して速度を落としている。

第3に、T-Mobileの「最適化」とは速度を1.5Mbpsに落とすだけで、配信されるビデオ自体に変更を加えるものではない。すなわち、ビデオファイルを一旦ダウンロードしてから後で再生する場合、ダウンロードに時間がかかるだけで再生の際に質が落ちるわけでない。

EFFはT-Mobileに対して、アプリケーションの種類によって速度制限をかけるのはネット中立性の原則に違反するので、やめるべきだと進言している。

またT-Mobileが取るべき方策としては、Binge Onに参加していないサービスについては速度制限をかけないようにすべきだとしている。これによりYouTubeなどが提起している問題は解消する。

さらに、一番いいのは、Binge Onを「オプトアウト」ではなく「オプトイン」にすることだとしている。現状ではユーザは何も手続きをしなくてもBinge Onがデフォルトで「オン」になっている。これを、デフォルトで「オフ」にして、手続きをすれば「オン」にできるという方法に変更すべきとしている。

実際にT-Mobileを使っているユーザとしては、現状で特に不都合は出ていない。Binge Onが「オン」になっているが、YouTubeの動画が見づらいとか途切れるといった現象は起こっていない。

たとえ見づらかったとしても、Binge Onを「オフ」にすればいいだけの話なので、ネット中立性云々と騒ぎ立てるほどの問題ではないように思う。