いきなり、ケネディ大統領夫人だったジャクリーンさん似の女性ですが、Arianna Huffingtonさんと言います。ギリシャ系アメリカ人で年齢は58歳。今をときめくブログ新聞Huffington Postの創業者にして編集主幹なのです。

Huffington Postって初耳の方も多いでしょうが、政治中心の集合ブログからスタートし、徐々に幅を広げている注目サイトで、ネットの視聴率を調査しているニールセンオンラインによると、今年5月、6月と連続して世界のニュースサイトトップ30に入っって話題になりました。ちなみに6月のトップはMSNBCで、以下Yahoo!News、CNN、AOL、NYTimesの順。HuffingtonのユニークオーディエンスはNYTの4分の1に近い400万人です。

でも、こういうちょっと古い話を取り上げたのはアクセス数だけでなく、記事の質がNYTと肩を並べるほどに評価されていることを”発見”したからです。どこにそのネタがあったかというと先週ご紹介したNewsTrustのサイト内です。

トップページの上の方に並んでいるボタンの2列目左から3つ目の「source」をクリックすると、「われわれがもっとも信頼する情報源」ということで、ブログ、雑誌、新聞、オンライン専門、テレビ局、ラジオ局、通信社のサイト名が並んでいて、それぞれに5段階通信簿が付いています。

これはどう評価したかと言いますと、先のポストで紹介した手間ひまかかるスコアシートによる評価を各サイト毎に集約して、平均点を出したものです。例えばNYTの記事はこれまで2562本が評価対象になり、8436人がレビューした結果、平均点は3.7と出ています。同じニューヨークのデイリーニューズやポスト、サンといったタブロイド紙が2.7から3.1に止まっていて、「なるほど」と思わせます。なおワシントンポスト、LAタイムスはともに3.6、英国のインディペンデント、ガーディアンが3.6、マードックに買収されたタイムズは3.4となっています。

そこでHuffington Postです。ここではブログでなくオンラインに分類されていますが、474件の記事が1350人によってレビューされ、平均点はNYTimesと同じ3.7なのです。474本という数字もオンライン部門では圧倒的に首位で、新聞部門で見ても4桁はNYTimesとワシントンポストだけで、3番目に多いLAタイムスの813本に次ぐ数字です。いかに良質の記事が多いかが推定できますね。

ま、マスコミ関係者はヤフーニュースの繁盛を見て、「俺たちがニュースを提供しなければ成り立たないビジネスじゃないか」と、未だに半分怨嗟も込めて思い込もうとしていますが、こういうHuffington Postの成功を見ると、そういう見方も崩れそうですね。確かに役所関係のストレートニュースは新聞社や通信社が早いでしょうが、解説や評論となると専門家ブロガーを集約したサイトの方が強くなってちっとも不思議じゃありません。その先駆けをHuffington Postは見せてくれているのだと感じます。

さて、創業者Huffingtonさん、いかにもセレブって感じですが、セレブなんですよ。wikipediaによれば、16歳でアテネから英国に渡り、ケンブリッジ大学を卒業し、後に修士も取ったという才媛。米国に渡った後、石油王ゲッティ一族のパーティでブッシュファミリーとも友達だという石油富豪Huffingtonさんと知り合って結婚、夫は共和党下院議員に当選、そして離婚・・・・・という玉の輿&波乱の人生を歩んだようですね。そこで華麗な人脈を得る一方、離婚で相当な財産もゲット、コラムニストとしてテレビ、ラジオに出演し、2003年のカリフォルニア州知事のリコール選にも名乗りを上げたことがあるようです。

インターネットとの関わりも相当に古くて1996年3月からAriannna Onlineというサイトで政治コラムを書き出しています。で、2005年5月に始めたのがHuffington Post、なんだかワシントンポストと語呂が似てる感じですが、離婚後も使ってる前夫の姓のまんまです。で、彼女自身も書きますが、書き手はこれまでの華麗な交友歴をもとにした大物ずらり。

たとえば音楽コピーで一時は利用者6000万人と言われたナプスター撲滅の先頭に立った全米レコード協会のヒラリー・ローゼン前理事長(彼女にはMSNBCの政治コメンテイターという一面もあるとか)、ブッシュ政権の影の大統領とも呼ばれる権勢を振るったカール・ローブ氏も執筆リストに入っているそうです。しかし、どんな有名人でも原稿料はなし。多くの人に見られる場所を提供しているから、という考えによるのです。これも示唆的ですね。

同サイトのabout usを見るとスタッフの数は50人を越える大所帯。編集関係だけで30人ほど。この人数で面白そうなサイトに目を光らせ、注目記事には遠慮会釈なしにどんどんリンクを張って、ワンストップショッピングならぬワンストップニュースサイトを目指してもいるようです。日本の新聞社サイトも頑張らないと。スタッフ数だけならずっと多いんだし。