元新聞記者でブロガーとして名高い藤代裕之さんが、月刊誌「VOICE」に<「毎日」を踏み潰すANY>という一文を書いています。ANYというのは新聞業界では勝ち組とされる朝日、日経、読売の頭文字を取った3社連合のことで、ネット上に3社の一面記事や社説などの読み比べサイト「あらたにす」を展開していることで知られます。そのANYの本質は「3社が各地に別々に持っている印刷工場や輸送の合理化にあり、それは毎日潰しにつながっている」という趣旨です。これは1昨年秋のANYの発表時から藤代さんが見抜いていたもので、さすがです。

そこで思い出したのが、その毎日の常務で退社した河内孝さんが書いた「新聞社 破綻したビジネスモデル」でした。2007年2月に出たのですが、そこで河内さんは重要な提案をしていました。つまり毎日、産経と中日(東京)の三社で業務提携して朝日、読売に対抗する第3極を作れということでした。具体的には3社が協力して①販売網を統合する②広告、販売、印刷、輸送などで効率化を図る③題字は残し、紙面は独自なものとするーーなど。こうして無駄を省けば、結果的に収入は上がり、記者をさらに増やして良質な紙面が出来る上に、月極め定価2000円が可能になるので競争力が上がる、というものでした。

河内さんはワシントン特派員の経験があり、米国新聞事情に通じていますから米国では法的に認められているJOA(Joint Operating Agreement)のことがおそらく頭にあったのでしょう。これは前のエントリーで少しだけ触れましたが、編集以外の印刷、広告、販売、配達、総務など全ての仕事を共同で行う仕組みです。原則、同じ市内や地域で2紙が存在する場合に限られ、最近話題になった例では、廃刊になったロッキーマウンテンニューズはデンバーポストと、同じく廃刊したツゥーソンシチズンはアリゾナデイリースターと、紙の新聞から撤退しネット専業になったシアトルポストインテリジェンサーはシアトルタイムスと、宅配を大幅に縮小したデトロイトフリープレスはデトロイトニューズと、いう具合です。

ネットに転進する前のシアトルポストインテリジェンサーの場合、社員は145人でそのほとんどが編集関係。ほかの業務全てをシアトルタイムズに任せっ切りだったからです。そのうち20人が再雇用されてネットに取り組んでいるのですが、ネット用の広告を集める要員が居なかったので20人を外部から採用したそうです。

ここまで合理化しても米国の新聞は苦しい。その事情を知るからこそ河内さんは真剣に考えたのでしょうが、現実には毎日側には何の動きもなく、逆に勝ち組の3社が河内さんに刺激されたかどうかは知りませんが、先んじて連合を組んだというのは皮肉なことにも見えます。すでに読売の新聞を朝日の地方工場で、逆に朝日の新聞を読売の工場で、という動きが具体化してきました。アメリカの新聞大不況を教訓にANYがどこまで連合の質と量を高めるのか。藤代さんは毎日の次は地方紙がターゲットになると指摘していますが、そこで毎日、産経、中日では実現しなかった日本版JOAが地方紙同士で誕生するかどうかが興味深いところです。