NHKBS1で11日夜の放映。「世界のドキュメンタリー」と銘打ってるけど番組案内によると制作はNHK/エスビジョン(日本)とある。ロールエンドでも制作スタッフは日本人名が並んだので純国産でしょう。と、いうかエスビジョンというネットでも探せない小さなプロダクション?にNHKがほぼ丸投げしたんじゃないかと思われるレベルの作品でがっかり。これが、放送記念日特集ですか、はあ。どなたかブログで取り上げていないかをテクノラティとグーグルブログ検索両方で調べましたが、ともにヒットなし。だれも見なかったか、論評に値せず、ですかね?

ということですが、このブログでも取り上げた米・コロラド州デンバーの名門紙ロッキーマウンテンニュースをだしにしてる内容ですから、すこしだけ触れてみます。同紙は今年2月末に廃刊となりました。

おおまかな構成は、まず同紙の調査報道記者だったローラ・フランク記者が、かって地元にあり、今は更地になっている核兵器工場の放射能後遺症問題をロッキーがなくなっても継続取材している姿から入ります。社会問題に取り組む記者の存在の大事さを示すわけです。

経営上の問題はどうか。かってクラシファイド広告(三行広告)収入が年間100億円もあって経営の柱だったが、さらなる広告収入確保のために同じデンバーにあるデンバーポスト紙と部数競争となり、1990年代初めには1部50セントだった定価が90年代後半には1セントになるほどだったと報告します。値下げ競争から経営が疲弊したというのです。ネットの攻勢もあります。で、廃刊を決断したロッキーの親会社のスクリプス社の社長のメッセージが流れます。「確かなことは新聞ビジネスにはもう未来がないということです

その後、話は再び同紙の記者の動きに戻って、記者有志がネット上の新聞「INDenver Times」の創刊に動く話です。このあたりはこのブログでも紹介しましたが、月5ドルの読者を5万人獲得できればという条件付でスポンサーが付きかけたが、3000しか購読者が集まらなかったという現実の厳しさが紹介されます。さらにローラ記者は発表の場をネット上の非営利報道団体ProPublicaに求めたが(これがその実例)、個人で取材することには新聞記者時代とは比較にならない困難があるという現実も紹介します。最後に「新聞がないと社会はなんちゃら・・・・・」というモノローグで終わるのですが、説得力なく覚えてません。

ロッキー紙に代表される米国の苦しい新聞事情を全く知らなければ、なるほどで終わりかも知れませんが、当方には少々、というか不満だらけ。

些細なことかもしれないけど、ローラ記者はフォルクスワーゲンに乗り、素敵なお家に住んで自宅で仕事をしてますが、家族は一切出てこないので独身かと一般視聴者は思ったでしょう。しかし、これは今も残るロッキー紙のサイトにある廃刊までの1か月を追ったビデオを見ればすぐわかりますが、夫はアメリカンフットボールのデンバーブロンコスを担当する同紙のスポーツ記者で、結婚11年、幼い女の子と男の子がいます。(二人はロッキー紙のビデオの冒頭に出てきます) その夫は今、どうしているのか、家計はどうなっているのか、ロッキーからの給料なしでどうして取材が続けられるのか、という肝心なところがスルーされています。


vimeo >> link to Rocky

また放送番組を見る限り、ローラは継続的にProPublicaに記事を発表してるかに思わせますが、サイトを検索すると実は1本だけで、現在は元同僚とともにI-NEWS, the Rocky Mountain Investigative News Networkという調査報道のサイトを立ち上げたことがわかります。またNext Newsroom Projectというフリーの記者団体にも参加していますが、そこらも一切、取材なし。

また、「新聞ビジネスには未来がない」と切り捨てるだけで、未来を信じて取り組んでいる例などは一切なし。

さらに、有料化に失敗したINDenver Timesがいまだに存続している一方、INDenver Times創立時のリーダーが、もうそこを抜けて有志14人とともに各自が出資するという決死の思いでネット新聞Rockey Mountain Independentをさる6日から始めていますが、それももちろんスルー。まあ、時間的に作品は出来上がってたということかも知れないけど、そういう事実が分かれば追加取材をするのがジャーナリズム精神で、それが出来るのがNHKの存在理由じゃないのかな。

これまでNHKのドキュメンタリー番組は結構面白いと思ってみてきたけれど、今度ばかりはちょっと事情がわかってるせいか、がっかり。だいたい<ジャーナリズム・未来への問いかけ>なんて副題が大仰ですし、完全に看板倒れ。まあ、少なくとも上に載せているロッキー紙のスタッフによる21分のビデオの方が出来が良いのは確かです。(NHKの番組はここから大分、拝借しています)

あ、リンクを張るため調べたら7月20日午後3時10分からBS1で再放送だそうです。

追記:ロッキーのかってのライバル紙デンバーポストのサイト内にある<All Things Broncos>という14日付けのブログ記事によると、ローラの夫であるJeff Legwold氏がデンバーポスト入りし、ブロンコス担当になるとのことです。これで、ローラもある程度、経済的にも不安なく調査報道が行える環境になったと言えそうです。