こんなに人間を虫けらのように薙ぎ倒すことになんの心の痛みも感じさせないのが「戦場」ということなのでしょう。すでにご覧になった方も少なくないかも知れませんが、戦争のおぞましさを痛感させる映像なのでご紹介します。


背景と経緯をまとめておきます。この映像はアメリカ軍の武装ヘリ、アパッチに搭載された30ミリ砲の照準器から見たものを録画したビデオ(gunsight video)です。米軍の機密映像でしたが、政府の機密を暴くWikiLeaks(Wikipediaとは無関係)にリークされ、本物かどうかを調べたあとさる5日に公開されました。そして1週間足らずでここで紹介したショートバージョンだけで550万回以上も見られています。39分のフルバージョンも80万回近くに達しています。

事件は2007年7月12日、イラクのバクダッド郊外で起きました。上空を飛んでいたアパッチヘリは「銃を持っているらしい」10人ほどの男性グループを発見し、本部との交信のあと激しい銃撃を浴びせます。このグループにロイター通信バクダッド支局のカメラマン(22)と運転手兼助手(40)が含まれていました。銃撃のあと、負傷した助手が這って動いているところへバンタイプの車が近づき、負傷した助手を車に乗せようとしたところ、ヘリの乗員は「武器も一緒に回収するようだ」として、さらに銃撃を加えて掃討、結局12人を殺害し、同時に車内にいた子供2人にも重傷を負わせました。ロイター通信は米軍に事情説明を求めましたが、米軍は「誤爆」とし、ビデオの提供を拒んできたようです。

リーク映像が世界中で見られたあと、国際法の専門家や人権団体などが「救助中の人を銃撃するのは戦争犯罪にあたるのではないか」と指摘しています。ロイター通信も再調査を要請しました。しかし、軍当局は再調査を否定、ゲーツ国防長官も調査は十分されているとして、当局を支持しています。このまま幕引きになるのかどうかはわかりませんが、司令部との交信内容は当然として、戦闘の模様まで照準器直結のビデオで全て残っているわけですから、議論は続くかも知れません。もしかしたら衛星回線経由で米国内の基地で操作している無人偵察機プレデターがこの戦闘を見守っていてそのビデオも、ってのは考えすぎかな。

なお、イラク戦争で死亡したジャーナリストは2003~2009で139人に達するそうです。