昨日発表になった2010年ピューリッツァー賞、その調査報道部門で、このブログで何度も紹介した非営利報道機関ProPublicaのSheri Fink記者が選ばれました。オンラインメディアからの受賞は初めてのことです。
受賞対象になった彼女の記事については、実は昨年10月9日付けの当ブログで言及していますが(何故か嬉しい w)、簡単に言うと、カトリナ台風で大被害を受け、被災者でごったがえしたニューオーリンズの病院の格闘を1万3千語費やして詳細にレポートしたもので、ProPublicaのサイトに掲載されるとともに、ニューヨークタイムズ日曜版付録のタイムズマガジンのカバーストーリーを飾りました。ご覧のように知的な美女ですが、彼女の経歴も凄い。スタンフォード大学で医学博士と哲学博士の学位を取得、ハーバード大学などで教鞭をとったり、数々の人道援助団体で働いたり・・・。そして著名財団のフェローシップ(9か月で基本55000ドル+取材経費という厚遇!)を獲得したことが今回の受賞作に繋がったのです。
ピューリッツァー賞はコロンビア大学のジャーナリズム学部が中心になって選考していますが、同じくジャーナリズム学部に定評のある南カリフォルニア大学が2月に発表した優れた調査報道に与えられるSelden Ring AwardではFink記者の同僚であるChristian Miller記者(40)が選ばれています。海外で戦争をしている米軍のサポートにあたっている民間請負の実態を明らかにした内容だそうです。このMiller記者は2008年にProPublicaに参加する以前は11年間、ロサンゼルスタイムズで働いていたとか。ちなみにピューリッツァー賞の賞金は1万ドルなのに対し、Miller記者の賞金は3万5千ドルでした。
これだけでもProPublicaの実力は大したものだと言えますが、実はもう一つ。受賞には至りませんでしたが、ピューリッツァー賞で最も権威のあるPublic Service部門のファイナリスト3本の一つにも残っていたのです。ProPublicaをめぐっては社長兼編集主幹が57万ドルという非営利団体としては破格のサラリーを取っていることが話題になりましたが、これだけ立て続けに名を上げると、まあ、それだけのことがあるということになるのかも知れません。
なお、ピューリッツァー賞のPublic Service部門で栄誉に輝いたのはバージニア州の発行部数わずか2万9千部というローカル新聞The Bristol Herald CourierのDaniel Gilbert記者でした。フリーランス記者を経て2007年に同紙に入社したそうですが、こうした若手の有能な記者は、これからは斜陽の大手紙を目指すのではなく、ProPublicaのような有力オンライン報道機関を目指すのがかっこいいということになるのかも、という予感がしないでもないです。
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