88万ドル、日本円にすると円高の今でも7480万円。ですので月々623万円です。別にアラブの王様の年金じゃありません。アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス市近郊ベル市を辞めたばかりの55歳のお役人が受け取れる年金の推定額です。ITとは直接関係ありませんが、あんまり興味津々な話なので夏休みネタにネットでフォローしてきたことをざっと。

始まりは7月15日のロサンゼルスタイムスのスクープでした。人口3万7千人、多くがヒスパニック系で失業率17%、貧困層18%という貧しいベル市のCity Managerのサラリーが年787,637ドル、ざっと80万ドルって高すぎないかと報じたのです。同時に補佐役には約38万ドル、警察本部長には約46万ドルが払われている事実も指摘しました。オバマ大統領の年棒が40万ドル、シュワルツェネッガー州知事が17万ドル(受け取り辞退中)なのですからべらぼうな高給なのは明らか。この初報は日本のメディアの一部で報じられましたが、現地では続報が続々だったのです。

まずCity Managerというポジションは日本にはないもので分かりにくいですが、アメリカの小さな市では市長は名誉職みたいなもので、市議会が市政を牛耳っており、その執行を市議会が任命したCity Managerに委ねるということのようです。プロの行政責任者ですね。そのRobert Rizzo氏、UC  Berkleyを卒業後、CSU East Bayで行政学修士という経歴です。他の市でキャリアをスタートさせ、1993年にベル市に7万2千ドルでスカウトされ、暫定主席行政官に就きます。そして17年間、毎年,毎年サラリーを上げて、ついに80万ドル近くまで上げたのです。

実は市議会のメンバーのサラリーも、近隣の市に比べて桁外れだったそうです。多くの市では月400ドルというボランティアベース(鹿児島・阿久根市の竹原市長に聞かせてあげたい)なのに、ベル市は月8,000ドル近くで、年10万ドルほどだったとか。雇う側もおいしい汁を吸っていたわけですね。で、Rizzo氏がばりばり昇給した背景として飛び出したのが2006年当時から始まった土地買収事件。市が3千5百万ドル借金して、高速道路そばの連邦政府の土地を買う計画をRizzo氏が市議会に勧めます。この土地を鉄道会社の新線用にリースすれば毎月14万ドルあまりの収入になる、というのが謳い文句。で、公債を発行して土地を買収、整備もしますが、話はまとまらない。でも、氏はトラック輸送との複合施設プロジェクトが進んでおり、これだと月21万ドルになると説明します。

ところが環境団体が2007年に「公害を引き起こす可能性があるのに連邦法に定めた環境レビューを行っていない」として訴えます。これを翌年、ロサンゼルス郡最高裁が認め、計画はおじゃん。市には借金だけが残りました。(ちなみのこの公債は最近、ジャンクボンド並みの格付けに転落しました) その間も、サラリーは上がり続けたのですが、実はこの表の数字以外に、とんでもない額も支給されていたのです。

これは、動き出した検察当局やロサンゼルスタイムスの情報公開請求などで明らかになったのですが、Rizzo氏の実際の報酬総額が154万ドルに達していたそうです。健康保険その他の保険料、退職年金の積みまし分の補填をおこなったり、年107日に及ぶvacation dayおよび36日のsick dayの補償額が約39万ドルなど、とんでもない好条件でした。で、同じように補佐役、警察本部長も実際の報酬額はサラリーの倍に達していました。またその後の発表では市の管理部長と総務部長がそれぞれ40万ドル余りの報酬を得ており、ビジネス開発コーディネーターが30万ドル弱など5人が20万ドル台の報酬を得ていました。

よってたかってしゃぶり尽くした感じですが、こんな貧乏市でどうして可能だったのでしょうか。Rizzo氏の主導で数十人規模の職員レイオフ、警官の訓練費とかコミュニティサービスの削減で予算を浮かせていたにしても???。このほか意図的かどうか知りませんがベル市の固定資産税が違法に高く徴収されていてその額は州で2番目だったとも報じられています。ともかく、まさに役人天国。そして年金天国。Rizzo氏、補佐役、警察本部長の3人は市民の怒りを背景に辞任し、検察も動き出しましたが、手続きに不正がなければ訴追される可能性は極めて薄そうです。なお本部長殿の年金は40万ドル(月額283万円!)のほか、契約では,米国では極めて高額な医療保険の一生涯保証が家族全員に適用されることになっていたそうです。ウラヤマシ

ごく最近には、ベル氏の東に位置するIndio市のCity Managerのケースが報じられました。彼は2005年に24万ドルで雇われましたが、2007年の契約更改でおいしいものをゲットしました。30万ドルに昇給したのに加え、契約遂行時に10%のボーナスを得るほか、50万ドル相当の生命保険への加入、健康保険料、退職年金の積立金、積み増し分の肩代わりなどに加え、仕事始めに30日の休暇、別に30日間(6週間)の追加休暇があり、現金買取もあり。さらに病欠は90日までで、自動車維持費が月600ドル・・・・

調べればもっといろんなところで役人天国パーティが続いていることでしょう。それを監視すべきメディア、とりわけかっては町々に1つはあった新聞は減る一方。たまたま今回はロサンゼルスタイムスがスクープしましたが、当のタイムズも人減らしを繰り返しています。それを埋めることを期待されるネットジャーナリズムから、この問題を深堀りするような続報などはまだ見かけません。今流行のソーシャルメディアもこの分野でどんな可能性があるのか見えません。

以下追記です

いろんな話を書いていて、冒頭の88万ドルの根拠を書き忘れました。これはNBCNewsが7月23日に報じたもので、年金改革を訴えているThe Foundation for Fiscal Responsibility in Sacramentoが計算したものだそうです。計算ではRizzo氏が80歳代半ばまで生きていれば3千万ドル、日本円で25億5千万円を受け取ることになるということです。こうなると、最近話題の一部上場企業で1億円以上の報酬を受け取っているのが233人とか、高級官僚が天下りでいくつもの団体を渡り歩いて数億円の退職金という話も可愛いもんだと思えてきます。でも、もしかすると日本でもベル市並のおいしい話が内緒であるのかも。小さな話ですが、民間企業の定年は普通、60歳に達した日というのが多いですが、東京都はたしか60歳の終わる日ということらしい。60年と364日まで勤務OK。つまり事実上、丸1年定年が民間より長いつうというようなおいしい話も都民には内緒でありますからね。