米国報道界の最高栄誉とされるピュリッツァー賞が発表になりましたが、ことしは初モノが多いとのこと。

その中で特筆すべきは、やっぱりオンラインの調査報道機関、ProPublicaの連続受賞でしょう。昨年はニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載された調査報道記事でSheri Fink記者が受賞したのですが、今年は、印刷されなかった記事が国内報道部門で受賞したのです。オンラインと、タイアップしたラジオで発表されたものです。しかし、ラジオやテレビはピュリッツァー賞の対象外なので、非プリント報道では初の歴史的受賞というわけです。

内容は、世界を不況に陥れる原因になったウォール街の問題の多いやり様をシリーズ記事で暴露したものですが、その手法が「文字、ビデオ、データベース、マルチメディア、双方向プレゼンテーションなどを組み合わせて複雑な問題を読者に分り易く提示した」点が高く評価されました。デジタルツールを活用した報道について<a distinguished example:抜群の好例>としており、今後の報道のあり方として評価したことがわかります。

受賞者はJesse Eisinger 、Jake Bernsteinの両記者。Eisinger記者はウォール・ストリート・ジャーナルの記者から大手出版社Conde NastのPortfolio誌のWall Street Editorだったそうです。今はNYTimes.comにThe Tradeというコラムも書いています。Bernstein記者の前職はTexas Observerの編集長でした。この二人がコンビを組んで29本のシリーズ記事のほとんどをオンラインに書き、NPRなどのラジオ番組で全国に流れました。

昨年受賞のFink記者がスタンフォード大学で医学博士、哲学博士を取得した専門家で、今年の二人はキャリア十分のベテラン記者。このあたりは新興オンラインメディアといっても、日本のオンラインメディアとはだいぶ様相が違います。編集主幹のPaul Steigerもマードックが買収するまでのWall Street Journalの編集主幹を16年間も務めた大物。その彼が受賞についての感想をサイトに載せています。

「ProPublicaはジャーナリスティックな方法で改革を進めるために創設された。そのために”moral force:道義的な力”を伴った報道を行う。権力の乱用や国民の信を損なうようなことについてだ。それが我々の使命であり、受賞をそれを続けよという励ましだろう」

まあ、勝てば官軍。言いたい放題に聞こえなくもないですが、日本のオンラインメディアでこんなタンカを切れる人物はいないでしょう。以前、このブログで紹介したように、「NPO報道機関なのに57万ドルもの年棒を受け取るのはおかしい」と批判されても、実績を上げれば。

その他の「初」は、そのSteigerがWSJを去った2007年から初めてWSJが受賞したこと。ちなみにSteigerが編集主幹だった16年間に16回も受賞しているそうです。また、Washington PostのカメラマンCarol Guzyさんは、ハイチの地震災害の写真報道で受賞しましたが、これがなんと史上初の4度目だそうです。さらに、事件事故速報部門は初めて受賞者なしでしたが、これは昨年の事件事故が多すぎたためとか。

なお、ピュリッツァー賞でも最高とされるPublic Service部門では、カリフォルニア州の小さな貧しい市で幹部がでたらめな収入と年金を確保し、ついには逮捕された一件の口火を切ったLos Angels Timesが受賞しました。その最初のスクープ記事はこちらですが、このブログでこの経緯を昨年8月9月の2回にわたって紹介していたので、ちょっとうれしい(笑)