NewyorkTimesから看板記者が続々、Huffpoに移籍してるって話は今月8日にも書いたばかりですが、またもエネルギー担当のTom Zeller記者の移籍が明らかになりました。もう、珍しくもなんともないのですが、Bussiness Insiderを運営するHenry Blodgetの記事によると、Zeller記者は移籍の理由について「より自由と責任を持って、かっての同僚と働ける」という建前とともに「Huffpoの報酬はNYTに匹敵する」という”本音”を引き出しています。

実際にはNYTよりかなり高額なサラリーを提示されたのでしょう。Blodgetは別の記事で、先にHuffpoに移籍したTim O’Brien、Peter Goodman両記者のサラリーについてそれぞれ50万ドル、35万ドルという話だと伝えていますから、Zeller記者もウン十万ドルの提示を受けたのかも知れません。ちなみに、ユーザーからの情報で各企業のサラリーを公開しているGlassdoor.comによるとNYTの記者のサラリーは平均で10万ドル弱のようです。

NYT関係者は「まるで2000年のドットコムバブルの頂点みたいなもんだ」と苦り切ってるようですが、名門NYTからの相次ぐ”脱走”についてBlodgetはジャーナリズムの未来に関して5つの大きな意味があると指摘していますので、記録しておきます。

①未来のジャーナリズムは大丈夫だという証:ほんの数年前には税金で新聞を救わねばという議論があったが、もはや、いくつかの新聞が潰れようが有能な記者はより健全な会社に移ればよい。ジャーナリズムと新聞社を混同すべきではない。

②Huffpoが伝統的な報道機関と対抗出来るようになる:最高の才能を雇う十分な資金があるので、パートタイム記者でなく、70−80人の経験豊富な正社員記者を擁する体制を組める。

③新聞からデジタルへ”脱走”しやすくなった:有名記者が続々、移籍した事実は、デジタルはもはやパイオニアとかあえてリスクを取る人だけのものではなくなったことを示す。

④名門企業にとっても悪いことではない:NYTブランドと製品は1200人の記者全体によって作られている。Huffpoなどが古参記者を引き抜いても意欲ある若手記者に置き換え可能だ。それによって財政的にも助かる。

⑤この移籍トレンドは止まらない:BloombergやHuffpoなどの新興メディアは急成長しており、タレントが必要。一方で既存企業は縮小しており、今までのような人員を抱えきれない。

Blodgetは、古い経済モデルは効率的なものに置き換わり、人材も移動するものだとして、ハイテク産業の例を挙げています。つまり、かってはガリバー的な存在だったマイクロソフトやヤフーから10年前に人材がGoogleに流出し、今はGoogleの人材がFaceBookに流出していると。新聞は1世紀以上にわたって儲かっていたので動きはゆっくりだが、結局は同じことが起きると言うのです。

NPO的オンライン報道機関が続々立ち上がり、ProPublicaが先日のピュリッツァー賞を獲得するなど実績を上げている米国に比べ、日本ではまだ既存報道機関からの受け皿は乏しいのですが、動き出せばあれよあれよかも知れません。Blodgetの言うように、動きはゆっくりでも「結局は同じことが起きる」のでしょうから。