2年余り前にこのブログで注目した報道写真投稿サイトDemotixが順調に成長しているようです。24日付けのプレスリリースによると、Getty imagesと並んで世界的な画像提供会社であるCorbis imagesが、Demotixに、額は明らかにしていませんが資本参加して、今春に結んだ提携関係をさらに強化することになったということです。

Corbisはマイクロソフトのビル・ゲイツ氏が1989年に個人資産で始めた会社で、現在では画像1億枚、ビデオ50万本を所蔵、報道やビジネスに必要とされる画像をネットを通じて販売します。そのCorbisが目をつけたDemotixとは、Citizen Journalism論が活発だった中から2009年初めに生まれたCGM(Cosumer Generated Media)の一種で、世界中のプロないしセミプロのフリーランス報道カメラマンのネットワークです。

現在、世界の耳目を集めているリビア情勢については25日段階で80人のカメラマンによる149本の投稿、計2120枚の画像が掲載されていて、先日の英国での暴動騒ぎ関係では55人による103本、計1084枚が掲載されました。新聞などでは限られた写真しか見られませんが、ここでは多角的な写真満載です。

欧米の新聞社は部数減少、広告収入減少で経費節減に躍起ですから、海外特派員もどんどん減っています。テレビも同様です。そこで事件事故の速報写真をバラエティ豊かに揃えてメディアに売り込もうというのがこのサイトの狙いです。収入を投稿者と折半する”良心的”なシステムのせいか、Demotixによると、現在、アクティブなメンバーは4500人で、毎月2万5千枚近くがアップロードされるそうです。この中から、ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナル、英ガーディアンなどのトップページを飾ることもしばしばだとか。

こうして実績を積んできたところで、資料写真的なライブラリーの色彩の強いCorbisは、ナマの報道写真に幅を拡げるべくDemotixに投資して関係を深める一方で、前日の23日にはAPと相互配信契約を結んでいます。これでDemotixは間接的にAPと提携したのと同じになり、投稿写真がAPの配信網を通じて世界中の大手メディアに流れる仕組みが整ったわけです。

DemotixのCEO、Turi Muntheはブログで「世界中のメディアパートナーとの関わりが深くなり、成長の新たな段階が始まる」「Corbisの経営的、財政的、販売力の支援はDemotixに最高の闘いの機会と力を与える。ニュースの場を民主化するという我々の主張を補強し、我々のコミュニティを真に世界的なものにするだろう」と述べています。

最近、相次いで公表された米国新聞業界の第2四半期決算の数字は、相変わらず悲惨で、回復の様子は伺えず、デジタル面の収入も上向いたとはいえ微々たるもの。レイオフ、経費節減傾向は変わらない、でもいい写真は欲しいとなれば、Demotixの伸びる余地は十分。読者が大手メディアの目の届かない世界中からの画像に触れる機会が増えるのは確実。Corbisは日本語サイトも持っていますので、日本のメディアへの働きかけも始まるかもしれません。