Seize the future>と大書しています。米国の日刊紙Philadelphia Inquirerとタブロイド紙Philadelphia Daily Newsの共同サイトPhilly. Comにあるデジタル版有料読者募集のページです。そこにはこうもあります。<Be one of 5,000 to take advantage of this unprecedented digital offer>−−5千人限り!前例のないデジタルの特典を掴め!ってな感じですか。

随分煽ってますが、一体どういうことか。一口で言うと、1年または2年の長期契約をしてくれたら、「最新のタブレット端末を最低価格でお譲りします」というキャンペーンです。両紙を発行するPhiladelphia Media Networksの最高幹部によれば、「今までタダで提供してきたサイトにお金を払わせるのは難しいので、タブレット端末との抱き合わせでお客を惹きつけることにした」ということのようです。タブレットでは、紙面イメージそのままに見られ、もちろんズームアップなども出来ます。

9月13日から始まったこのキャンペーンに用意された端末はArchos社製のArnovaという10.1インチのもの。なんでも年末発売予定の製品で250ドルで販売されるとという触れ込みでした。これを2年契約の人には99ドル(1年契約の場合は129ドル)の格安で販売し、月額10ドル(同13ドル)の購読料を頂きますということです。用意された端末は5,000台。今回はベータテストという位置付けだそうで、順調に行けばホリデーショッピングの始まりという感謝祭(今年は11月24日)の翌日から大々的に売り出したいとか。

iPad2の価格は最低で499ドルですから、OSは違っても(アンドロイド)機能的には同じようなことが出来るタブレットが99ドルで手に入るというのは一見、魅力的です。でも、最近決まったようなArnovaの希望小売価格は200ドル、オンラインショップでは160ドルとなっています。そして今春から有料化したニューヨーク・タイムズの料金はウェブ、スマートフォン、タブレット全部込みで月35ドル、タブレットだけなら20ドルで、宅配読者はすべて無料です。また、ニューズ社が始めたiPad専用新聞The Dailyは週99セント、年40ドル。それやこれやを勘案するとそうそう楽観も出来ないように見えます。

このキャンペーンを発表した直後に、発行元のPhiladelphia Media Networksは20人の社員削減を組合に通告していたことが明らかになりました。創刊は1829年で、米国では3番目に古いという歴史があり、部数は全米8位というInquirerもご多分に漏れず経営難。昨年、破産し新たな出発をしましたが、他紙同様広告減少に苦しんでいます。しかし、その中でも流行りのタブレットに注目してアピールし、今後、ビデオやソーシャルメディアとの連携なども取り入れていくとする姿勢は前向きです。もしかしたら、勧誘、印刷、配達にコストのかかる「紙」を捨ててもいいという「未来」を見据えているのかも知れません。<Seize the future> ベータテストの結果に注目しましょう。