今朝の読売新聞国際面、「消費者の広告メール疲れ」という見出しの小さなコラムを読んだ。米国の大手小売チェーンが消費者に送りつける広告電子メール。近年、どんどん増えてきていたが、「増えすぎてお客を苛立たせているんじゃないか」という反省が芽生え、送信回数を減らし始めているという話。当方も、最近、広告メールの受信が増えて、少々ウザく思っていた矢先なので関心を持った次第。

そして、記事の最後が「多くの小売業者が消費者の購買動向を追跡し、好みに合った広告を送るようにもなった」と、ちらりと「質」の問題に触れているのが気になった。なにせ500字足らずの記事、要領よくまとめてあるが、「質」の内容までは書ききれなかった様子。そこで、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に掲載の元記事にあたってみた。

読売サイトにこのコラムは載っていないので、WSJの記事を要約しつつ紹介する。

昨年、米国で、e-コマースによる売上がトップ100に入った小売業者は、平均で177通ものメールを顧客に送っていた。オンライン売上は全小売売上の9%程度だが、その伸びは実店舗の2倍に達するから力を入れてきた。しかし、ある調査では、この種の広告メールが実際に見られる”開封率”、およびメールに掲載のリンクを辿ってのサイトへのクリックスルー率も下がって来ている。2011年上半期の数字は、開封率12.5%、クリックスルー率2.8%に過ぎない。

そこで、一つの戦略として、送信回数を減らす傾向が出てきた。例えば、女性向けファッションのニコール・ミラーは週3通から週1通に、大手スーパーのJCペニーは、昨年、CEOに就任したRon Johnsonの指示で、一日1通から週3通に減らした。ちなみにこのJohnson氏、WSJの記事には触れられていないが、アップル出身で、アップルストア成功の立役者とされる人物だ。

その結果はどうなのか。ニコール・ミラーの場合だと、開封率が15%から40%へと劇的に上がり、メールがきっかけになったオンラインセールスの割合も10%から17%に上昇したという。たまにメールが届くと、濃い内容があるのかもと期待するせいかもしれない。

で、これから先が、読売コラムではチラリとしか触れられなかった点だが、もうひとつの方向は、「洗練された内容にする」ということ。顧客の購買履歴や、サイト上での行動をクッキーを使って収集、そうしたデータを総合的に分析し、それに基づいて、顧客が気に入りそうなおすすめ情報をカスタマイズしたメールを送りつけるという方法だ。

高級デパートのニーマン・マーカスの場合、クレジットカードとリンクした実際の店内購買履歴も加えた顧客データを作成し、それに基づいてメールをどんどん送り付ける。昨年は534通も送信したが、送信停止を求める「unsubscribe」の率は上がっていないし、クリックスルー率は10%も上がって20%に達したという。

ビデオゲーム小売のGamestop社の場合は、たまに購入する一般向けと、定期的な購入者を対象にしたrewardメンバー向けと2通りのメールを送信している。勿論、reward組には、顧客データに基づく内容なので、開封率は30%以上となって、一般向けの10%以下とは大きな違いを生んでいる。

たしかに、毎回、自分の関心がある内容だらけなら、ウザいだけと思わずにとにかく開いてみようと思うだろう。だが、その裏で、断りもなく、自分のネット上での行動が集積され、分析されているのかと思うといささか怯む。

今は当該の小売サイト上だけの履歴やクッキー記録だけかもしれないが、その気になれば、データ収集範囲はいくらでも広がるだろう。そして、買わずにいられない気持ちになる最適広告メールが届く時代は遠くないのか。今は、その序章なのかもしれない。そういえば、最近、サプリメントメーカーから、やたらダイエット関連の情報がメールで届くのはなぜだろう?