廃刊やレイオフが相次ぐ米国新聞業界のことですから、さもありなんとは思いましたが、昔々、同じ業界に身をおいた者としてはやっぱり残念なことです。ちょっと古いですが記録しておきます。

下のグラフは、米国のCEA(大統領経済諮問委員会)が毎年2月に出す大統領経済報告のデータ集めに協力した、ビジネスマン中心に人気のSNS大手LinkedInのScott Nicholson博士(Team Lead:Data ScientistとEconomistとあります)が、その際にLinkedInユーザー1億5千万人から集めたデータを解析した結果、得られたものとのことです。

2007年から2011年までの5年間に、米国のどの分野で産業規模が拡大し、又は減少したかをグラフ上にプロットし、同時に、雇用はどこでどの程度増大し、どこでどの程度減少したかをマークの大きさでビジュアルに表してLinkedInのブログに発表したものです。(なぜか元ブログが無くなっています。私は最近のNewspaper Death Watchで知り、Googleのキャッシュで読みました)

一目瞭然なのですが、簡単に整理します。2007−2011年の間に最も目覚ましく規模が拡大した業種は再生可能エネルギー分野(+49.2%)でした。以下、インターネット(+28.4%)、オンラインパブリッシング(+24.3%)、e-learning(+15.9%)など。反対に最も縮小したのが新聞業界で−28.4%でした。以下、小売(−15.5%)、建築資材(−14.2%)、自動車(−12.2%)などです。

一方、雇用から見ると実数で最大なのはインターネットで、病院・ヘルスケア、フィットネスなどの健康産業、石油・エネルギー、IT、再生可能エネルギーなど。職が失われた方では小売、建設、通信、金融、自動車などが最大グループでした。

新聞業界はこれらのワースト5の業界に比べて規模が小さいので、職を失った実数では上位に来ませんでしたが、それでもPaper Cutsという以前にも何回か紹介した米新聞業界のレイオフおよび早期退職者数を2007年6月から追っているサイトの数字では、現在までに合計4万1千人以上に達しています。日本の新聞協会加盟の全新聞社の従業員総数は45,964人(2011年)ですから、とんでもない数字なのです。

そんな中、米国の新聞協会(NAA)は25日にこんなお気楽に見えるプレスリリースを公表しました。ComScoreのデータを解析した結果として、「2012年第1四半期において、新聞社サイトへの月間ユニークビジター數、毎日の平均ビジター數も増加している。特に富裕層と若い層に顕著だで、歓迎すべきことだ」としているのです。

具体的に言うと、ユニークビジター(UV)数は前年比で4.4%アップの1億3千万人で、日々のビジター数も10%アップで、21-34歳グループではUVは7%アップと高めで、毎日のビジター数では17%、訪問総数では15%でした。同様、年収10万ドル以上の富裕層でもUVは6%アップ、日々の訪問者数で15%、消費時間で19%アップと出ました。

この増大はスマートフォンやタブレット端末の普及によるものと考えられますが、米新聞協会のリトルCEOが若者と富裕層でアクセスが増大していることを歓迎するのは、「若者と富裕層というのが広告主にとって価値があるから」なのです。しかし、ネットのサイトにアクセスする人や時間が増えるということはそれだけ紙の新聞離れが進むことに繋がります。事実、18−34歳のグループではデジタルでしか新聞を読まない人は48%に達しています。

デジタル広告は増えているとはいえ、デジタル展開に熱心で、新聞社サイトの先頭を切っているあのニューヨーク・タイムズでも、デジタル広告の収入は紙の新聞広告にはるかに及ばず、せいぜい10分の1程度。デジタル移行に伴って紙の新聞が減れば、収入はどんどん減り、従業員のさらなる縮小が進むのでしょう。新聞社サイトへの訪問者数が増えたことに喜んでいる場合じゃないような気もしますが、そこに期待するしかないところまで追い込まれているということでしょうか。