Wall Street Journal(WSJ)の最近の記事によると、YouTubeで配信されている米国の料理番組が4大テレビネットワークの一つであるABCテレビのレギュラー番組となって10月から週末の午前中にお目見えするとのことです。テレビ番組のネット配信はもはや珍しくもなんともありませんが、ウエブ番組のネットワークテレビ局への進出は極めて稀なことです。
その番組名はヘルシークッキングを売り物にする「Recipe Rehab」といいます。rehabはリハビリテーションという意味で、製作がEveryday Health社ですから、ま、健康回復レシピくらいの意味合いでしょうか。今年4月にスタートしたばかりで、テレビデビューとなったのは、番組の質の高さと、「ヘルシー」をうたうという目の付け所の良さが買われたのでしょう。
このEveryday Health社のサイトを覗くと分かりますが、本業は健康情報のオンライン提供の大手で、WSJによると社員は500人を越え、サイトへの月間ユニークビジターは3000万人に達し、売り上げ高は1億3千万ドルもあるとか。それが、なぜ、新たにYouTubeにチャンネルを設けて、レシピ番組製作に乗り出したかというと、Googleの後押しがあったからです。
実は、昨年秋から、YouTubeを運営するGoogleは、1億5千万ドル(120億円)をかけて、高品質なコンテンツを提供するチャンネル増設に動いていました。Googleが作るわけではなく、ビデオ制作会社やクリエーターなどに資金を提供して、様々なジャンルの優良コンテンツを一気に増やし、その結果がどうなるかの実験を始めていました。
狙いは、より高品質なコンテンツを提供することで視聴数を高め、それをより高い広告料金に結びつけることです。その結果はどうだったか。WSJの今年7月の記事によれば、この実験の成果は上々で、100の新規チャンネルがスタートし、そのうちの10のチャンネルは、1週間当たりの平均視聴数が100万を超えているといった好成績。一方、これらのチャンネルへの広告出稿の契約高は1億5千万ドルに達したとか。早々とモトを取ったわけです。
さて、「Recipe Rehab」はテレビデビューに向けて、30分番組に体裁を整えているところですが、Everyday Health社の重役は、ABCテレビ系列で放映されることでの収入について「数百万ドル」と推定しているそうです。また、テレビとウェブの相乗効果でさらなる集客をあてにしているようです。
繰り返しになりますが、こうした新たな動きの背景にあるのは、Googleの資金援助による高品質コンテンツの量産です。つまり、ペットの動画とか、家族ムービーとか、YouTubeが誕生した当時からの主流だったシロート動画(User Generated Video:UGV)を、Googleは切り捨てはしないでしょうが、UGVには広告を付けにくい、つけてもほとんどお金にならない。そこで、プロに資金を出して、客を呼べる高品質チャンネルを増やし、そこに高単価の広告を付けるというビジネスモデルを確立しようとしているわけです。
Googleは、今年もさらに2億ドル(160億円)を投じて、この動きを加速させる構えだそうですから、今後、Recipe Rehabのような、ウエブからテレビへの動きも、いずれ珍しくなくなるのかも知れません。
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