この国の報道機関は、映画のアカデミー賞だとこぞって取り上げ、すべての部門の受賞者リストを掲載するのに、なぜか、報道のピュリッツァー賞だと、ほとんどの新聞が「どうせアメリカの話だ」とばかり、ほとんど無視してるようです。グーグルでニュース検索しても寂しい限り

それはともかく、このブログでも何度も取り上げましたが、米国では2009年前後から、インターネットを舞台にしたNPO報道機関が次々に誕生しました。そして、その資金力やスタッフの質量で先頭に立っていたProPublicaが2010年、NPO報道機関としては初の受賞に輝いたのは私には衝撃でした。(調査報道部門)

翌2011年も、ProPublicaが「国内報道部門」で、連続受賞、昨年は、ニューヨーク・タイムズに負けないほどのアクセスを誇るHuffingtonPostが、同じく「国内報道部門」で受賞。そして15日に公表された今年のピュリッツァー賞InsideClimate NewsというNPO報道機関が、またまた「国内報道部門」で受賞したのです。なんと4年連続の快挙です。なのに、相変わらず、日本のメディアは無視。

このInsideClimate Newsというのは、初めて知りましたが、サイトを覗くとなかなかしっかりした団体のようです。専属のジャーナリスト7人と寄稿者のネットワークだそうですが、発行人、編集長ともなかなかのキャリア。特に編集長のSusan Whiteさんは、2008年にスタートしたProPublicaの最初のsenior editorで、2011年まで在籍し、2010年のピュリッツァー賞受賞作の編集者だったそうです。

受賞した記者は、Lisa Song、Elizabeth McGowan、David Hasemyerの3人ですが、この3人もプロのキャリアの持ち主です。また学歴も、LisaはMITで環境科学とサイエンスライティングを学び、フリーの科学記者を経ての参加、Elizabethはミズーリ大で、Davidはサンディエゴ州立大でそれぞれジャーナリズムを修め、日刊紙記者の経歴があります。

こうしたプロのスタッフを抱えての運営は全て6つの財団からの寄付と、「少額だけど意味のある読者からの寄付」で賄っているそうで、向こう2年でスタッフの規模を2倍にしたいのだそうです。

それというのも、「気候とエネルギー問題は現代の懸案だけれど、多くのメディアは環境の調査報道に十分なリソースを振り向けるのが難しくなってるから」で、新聞経営が年々厳しくなる中で、既存メディアがカバーできないことを取材し、社会に貢献することがますます求められるという考えからです。

こうした立場から、既存メディアに対して、多くの人の目に触れるよう、記事を無料で提供しているようで、主な<Media Partners>として、Bloomberg、新聞チェーンのMcClatchy、AP、The Guardianなどを挙げています。

今回の受賞作は、米国内の石油パイプラインの規制に欠陥があって、希釈されたタールやアスファルトの類が環境を脅かす危険性があることをシリーズで追求したものですが、具体的に大手企業名を挙げての追求姿勢は、広告と無縁のNPO報道機関ならではかも知れません。

こうした運営を可能にするアメリカの寄付文化の懐の深さに改めて感心します。そして、それに応えて毎年、ピュリッツァー賞を獲得するNPO報道機関のパワーにも。ひょっとすると、日本の新聞が取り上げないのは、こうしたパワー溢れる新たな報道スタイルがあることを知られたくないから−−−なんてのはうがちすぎだろうけど・・・・

それにしても、今月4日付けの記事で紹介した、寄付をベースに新たなジャーナリズムを目指すという元NHKアナ堀潤さんの試み、リアルタイムでサイトに表示すると言ってた寄付金額が、ずっと「22万円」のままなのはどうしてなのだろう。