もう3年近く前になりますが、このブログで「ニュースが私を見つける」という記事を書きました。2008年3月のニューヨーク・タイムズの記事で紹介されたことで有名になった“If the news is that important, it will find me“というフレーズです。

で、3年前の記事では、ソーシャルメディアの広がりで、興味や関心を同じくする人々から、自分が読むべきニュースがフィルタリングされて届くという傾向が強まっているが、まだ自分レベルでは、そんなに感じないなあ、みたいなことを書きましたが、実は、最近、実感することがありました。

ソーシャルメディア経由で知り、アクセスしたのがデザインアソシエーションというサイト内にあるdesignboom 2012 トップ10: 教育施設というページ。何の気なしにスクロールしていくと、<バングラディシュに建設されたソーラーエネルギーで浮かぶ学校>というのが4番目に出て来ました。

「ソーラーエネルギーで浮かぶ、って?」と思って読んでみると、突然、懐かしさでいっぱいになったのです。

この学校は、Shidhulai Swanirvar Sangstha(SSS:シュデライ・スワニバル・ラングッサ)というバングラデッシュのNPOが運営するボートスクールなのです。別に、ソーラーエネルギーで空中に浮いてるわけではありません。屋根に太陽光発電装置をつけて、川に浮いてるだけです。

懐かしさにとらわれたのは、2005年9月ごろに、このNPOの代表であるMohammed Rezwan氏と5往復もメール交換して詳細を聞き出し、当時担当していたコラムに<「生きる力」学ぶ機会もっと>と題して書いたことがあったからです。

なぜ、メール交換するようになったかというと、2005年9月にメリンダ&ビル・ゲイツ財団が、このSSSに100万ドル(当時のレートだと1億1千万円)という大金を贈るというニュースに接したからです。そのプレスリリースは今も残っていますが、その具体的活動内容の詳細が分からず、SSSも当時はサイトを開いていなかったので、思い切ってRezwan氏にメールで問い合わせたのです。(どうしてメルアドを見つけたのかは失念)

5往復のメールで分かったのはこういうことでした。SSSは、識字率4割というバングラデッシュでも、特に教育機会に恵まれない北部湿地地帯で、教育と生活改善に取り組んでいる団体。電気さえ無く、モンスーンの季節には学校にも行けない児童、大人を対象に、太陽光発電装置を備えた小型船にコンピュータや大量の図書を積んで巡回し、補習授業をしたり、コンピュータの基礎トレーニング、さらに携帯電話を介したネット接続環境を2002年から、無料で提供している、とのことでした。

教育、とりわけITを学ぶことで貧しさから脱却できるような「力」を付けさせるのが目的で、教育の機会が与えられないでいた女性が家族連れで参加するケースが多い、というような話も聞けました。

川を縦横に行き来するボートは、当時で計38隻。専任スタッフが150人で、ボランティアは1500人という大所帯を、資金面も含めて取り仕切るRezwan氏の手腕に感嘆したものです。

そして、最後のメールに、「この賞金で、貧しき人々がITを手にすることをもっと確かなものにする」「日本の子どもが十分に学べるのは恵まれている。もっと学び、その成果を貧しき人々に分け与えて欲しい」とあったのに感銘を受けました。

そのNPOが、いまも変わらず立派に活動を続けている!というニュースをネットはソーシャルメディア経由で私に知らせてくれたのです。嬉しくなって検索してみると、2008年からサイトを開いていました。そしてBBCnewsのサイトでは、昨年11月にアップされた、SSSの活動を伝える10枚の写真で構成したスライドショーを見つけました。YouTubeには、Reawan氏自身が活動を説明しているビデオがアップされていました。


さらに、カタールの王室が支援するカタール財団が2009年から始めたThe World Innovation Summit for Education (WISE)の昨年秋の会合では、SSSのSolar-Powered Floating Schoolsが、革新的な教育プロジェクトとして表彰を受け、2万ドルの賞金を授与されたことも知りました。

おしまいにもう一つ。SSSのサイトにある、SSSの活動を報じたメディアを紹介するShidhulain in Newsのページ中、International Newspapersの項目で、時系列で記載されたリストの一番下に

The Yomiuri Shimbun, Japan

October 11, 2005

Boat school

とありました。つまり、外国メディアでは一番早く報じたという記録です。まさに我田引水みたいですが、ちょっと嬉しかったな。こんな気分になれたのもソーシャルメディアのお陰ということでしょう。(なお、Boat schoolの記事はリンク切れです)