1933年の創刊で、ピークの1992年にはアメリカ国内だけで322万部を誇ったニュース週刊誌「Newsweek」が、またも経営不振から売りに出されています。このことが先月28日のVariety.comの特ダネで報じられて2週間近くになりますが、買おうという動きは報じられていません。

わずかに、ForbesのBercovici記者が「少なくとも1社は可能性がある」とし、それはそれは新聞チェーン大手のDigital First Media だと報じましたが、その根拠ははなはだ薄弱で、「a person with knowledge of the discussions」によれば、「NewsWeekの書籍について調べているグループの中の1社だ」というだけです。CEO のJohn Paton氏に電話したものの「調べてることについて一切コメントしない」とピシャリと言われてしまいました。

このPaton氏のことについては以前、このブログで紹介しましたが、米国の新聞サイトが雪崩をうって有料化に向かっている中で、「断固反対」の立場を取り、ニューヨーク・タイムズをけちょんけちょんにやっつけているなかなかユニークな新聞経営者です。Vercovici記者もそこあたりに目を付けているのかも知れませんが、とにかく反応はなし。どうも不人気のようです。

Newsweekの苦境については、さる3日付けPEJの記事「Newsweek By the Numbers」が詳しく伝えています。それによると、Newsweekの凋落は2007年から始まり、2009年に掛けての3年間で、スタッフを33%も減らしたのに、部数減で収入は38%も減少し、2009年に赤字が5600万ドルに膨らんだそうです。

そして、2010年、親会社のワシントン・ポスト社は、音響メーカーで財を成したSidney Harman氏に「1ドル」で売却します。もちろん、膨れ上がった負債も付けて。この年の部数は153万部で、2007年の307万部から半減していました。

2008年のリーマン・ショックを挟んでいるとはいえ、この減少幅は大きすぎます。この間、ライバル紙のTimeは22%しか部数を減らしていないのですから。なぜ、そうした劇的な違いがでたのかについて、残念ながらPEJの記事は言及していません。

また、Timeのオンラインが好調だったこともあって、それへの対抗のためか、2010年11月に、ネットコングロマリットIAC(InterActiveCorp)が所有するネットメディアDaily Beastと合併します。相互リンクを張り、相乗効果を狙ってのことだったのでしょう。

それもあってか、紙の週刊誌の部数はそれ以降、微減に留まっていました。しかし、広告ページ数の下げ止まりに歯止めがかからなくなっていたのです。2012年の広告ページ数は2002年の60%まで落ち込みました。このあたりは、ネット広告の影響を受けている紙の新聞と同様の傾向です。

そして、赤字垂れ流しを食い止めるため、2012年末で、Newsweekの本家米国版は紙の印刷を止め、いくつかの新聞と同様にDigital onlyになりました。購読料は1か月(4号分)2.99ドル、1年(52号分)24.99ドル(今現在は、それぞれに1か月分の新規加入者へのオマケがついています)。パソコンだけでなく、各社のタブレット端末からアクセス出来ます。

著名週刊誌が、1年契約なら1週50円ほどで読める。お買い得な気もしないではありませんが、2013年第一4半期の有料購読者は47万人と、2012年末の紙の読者の3分の1以下という厳しい数字になってしまいました。

Variety.comの報道を受けて、NewsweekのCEO Baba Shetty と、 編集長のTina Brown(Daily Beastの創刊者)は連名で社員向けのメモを流し、買主を探していることを確認しました。そこに、Brown女史は書いています。

「Newsweekのブランドはパワフルだ。しかし、それがDaily Beastへの関心や集約を妨げている。Daily Beastはどんどん強力になり、この厳しい環境下で30%も広告を増やしているのにだ」

要するに老舗の週刊誌Newsweekは足手まといだというのですね。新興ネットメディアの創刊者にそう宣言されてしまいました。極端な言い方をすれば、そのうちハフィントン・ポスト日本版がもし、もしですよ力を付けたら、提携先の朝日新聞のサイト「朝日新聞デジタル」が邪魔だというようなものです。首筋が寒い。

そして、昨年、大手広告代理店から転職、NewsweekのDigital onlyへの転換を主導したCEOのShetty氏は、その後、辞任したとのことです。理由は「家族と過ごす時間を持ちたい」。