ウィキリークスの創設者にして、膨大な米外交文書などをネットで公開してきたジュリアン・アサンジ(Julian Assange)氏が、ロンドンのエクアドル大使館に駆け込んだのは昨年6月19日でした。今日が365日目です。

この間、彼は大使館から一歩も外へ出ていません。周りをロンドン警視庁のお巡りさんが取り囲んでいて、即、逮捕されるからです。なぜか? このブログで何回か紹介しましたが、昨年春、英国の裁判所が、スウェーデン当局から出された「レイプ容疑での尋問のためのアサンジ氏引渡し要求」を認める命令を出したからです。

その直後にエクアドル大使館に駆け込んだアサンジ氏は亡命を申請し、2ヶ月後に認められますが、エクアドルに出国できない状態がずっと続いているわけです。

その膠着状態を打開しようと、駆け込み1年を目前にしてエクアドルのパティーノ(Patino)外相がロンドンを訪れ、英国のヘイグ(Hague)外相と17日に直談判を行いました。

これに先立って、エクアドルはつい先日に、アナ・アルバン駐英大使を更迭していました。表向きはアサンジ問題と関係ないとされていますが、エクアドルの首都キト発のBBCNewsによると、「多くの政府高官が彼女の働きぶりに繰り返し不満を表明していた」そうです。ウィキリークスが暴露したキトのアメリカ大使館発の外交文書(2007年9月17日付け)にも、彼女の環境大臣時代の働きぶりについて「弱くてムダな大臣であり続けた」とあります。

そうした評判の大使更迭で、エクアドル政府は、アサンジ問題の進展にシグナルを送ったように見えます。

また、パティーノ外相の訪英に関して英国外務省のスポークスマンは今月7日にこう言っていました。「我が国の代表はアサンジ氏に関してロンドンとキトで定期的にコンタクトしており、今回の訪問が外交的解決を見出したいという双方の思いに役立つことを期待する」。

そして丸1年目直前の日程に合わせてパティーノ外相との会談に応じる。しかも自国でのG8サミット開幕当日という慌ただしい中での会談設定。

こういう風にお膳立てが揃うと、外相会談で、なんだか新展開の予感がしないでもなかったのですが、45分間に及んだ会談のあとで公表された内容の限りでは突破口は見いだせなかった」ということのようで、パティーノ外相は本気か冗談か知りませんがアサンジ氏に5年の滞在を用意するなどと述べています。

双方がこれだけ頑ななのはそれぞれに事情があるからです。英国には、裁判所の命令を曲げてまでスウェーデンへ送還せず、エクアドルへの出国を認めるという「超法規的」措置は法治国として取れない。

一方、エクアドルにしてみれば、自国への亡命者が米国で裁判にかけられるのは必至なのが分かっていて、スウェーデンへ送還を認めるわけにいかない。米国とスウェーデンには身柄引き渡し条約があるからです。

こうした双方の基本線は今回も、少なくとも表向きは全く変わってないということです。「デッドロック状態が続く」と報じたワシントン・ポストの記事では、専門家の見方として「要は、エクアドルの顔をどう立てるか」であり、それには「アサンジ氏は米国に送還されない、というようなスウェーデンからの保証を英国がエクアドルに提示する」ようなことをあげています。

アサンジ氏自身、「米国に送還されるおそれがないなら、いつでもスウェーデンへ行く」と繰り返していますので、スウェーデンの出方にかかっているわけですが、米国からの引渡し要求を拒否できるのかどうか。元々が、アサンジ氏のスウェーデンでのレイプ容疑が、米国が仕掛けたハニートラップとの見方があるわけですから、米国が簡単にあきらめるはずもなさそうです。

ただし、今日から英国で始まったG8サミット直前に、英国がG20で参加国の電話盗聴などをしていたことや、米国NSAの極秘の情報収集などがタイミングよく次々と暴露されています。こうしたことも踏まえて、英国ーエクアドル外相会談で、表に出ないなんらかのやり取り、もしくは取引があり得たことも想像出来ないでもありません。

なお、アサンジ氏は、変わらず元気のようです。アサンジ氏の母国オーストラリアの新聞The Ageの記事によると、勤勉にフィットネスを続け、定期的にトレーナーに会って、ボクシングや体操をし、太陽光代わりにUVランプにあたるなどしていて健康面は心配無さそう。もちろん、インターネットも使っていて、ウィキリークスの活動を今もまじめに主導しているとか。英米二大国を巻き込む、稀代のトリックスターに次の手はあるのか?そのの行方から目が離せません。